物、ものを呼ぶ 伴大納言絵巻から若冲へ 出光美術館

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「若冲の象の絵を見たいから一緒に行って」と友達に誘われたが、仕事が忙しく、
出かける余裕がなかったので、「若冲の象は2回見たからいいわ」と断ったら、
数日前に再度のお誘い。「出光は工事でしばらく閉館になるから、お宝、全部、
見せますのすごい展覧会。象以外にも名品ぞろい」。それでは、と出かけたら、
すばらしかった!20日(日曜)まで。



ふたつの国宝「伴大納言絵巻」と「古筆手鑑「見努世友(みぬよのとも)」が披露され、
さらに、新たに購入したプライス・コレクションの江戸絵画から、若冲の象「鳥獣花木図屛風」
同じく伊藤若冲「群鶴図」、酒井抱一の「風神雷神図屏風」「十二カ月花鳥図」、
鈴木其一「蔬菜群虫図」が展示されていた。右を見ても左を見ても、好きな名品ばかり、
ありえないような展示。


さらに仙厓「双鶴画」、「指月布袋画賛」、そして書の名品も並ぶ。
NHKの大河ドラマ「光る君へ」を見ているので、藤原公任の書に目が行った。
模様入りの美しい料紙に流れるような文字の「石山切 伊勢集」。
文字の美しさで定評がありと「光る君へ」でも言われていた藤原行成の
「久松切倭漢朗詠抄」の書もあった。

「西行物語絵巻」、俵屋宗達が絵を描き、烏丸光広が詞書。
絵巻なので、順に見ていくのだが話が面白い。奥州への旅に出るのだが、
途中、富士山を見て雲の上に山があると感動。武蔵の国には見るべきものが
何もなし、(昔はそうだったでしょう)と思ったり。宗達の絵がかわいいので
絵本のようだった。

一段低い場所で、座ってゆっくり鑑賞する椅子席コーナーには、
抱一「十二カ月花鳥図」12枚の絵、軸装が並べられ、部屋の反対側、振り返ると
見える場所には、押絵貼の屏風装、つまり2種類のものが並んでいた。
なんという贅沢。

軸装「十二カ月花鳥図」の九月(菊)、十月(柿にカラス)
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こちらは、貼り付け屏風の九月(菊)、十月(柿に小鳥) 

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やまと絵では、国宝の「伴大納言絵巻」がメインビジュアルに使われている。
一番上の写真がメインビジュアルで、チラシもこの体裁。
2016年にこれを見る展覧会があって盛況だった。火事の迫力、逃げ惑う人々が
速い筆致で滑稽に描かれ、見ているだけでストーリーがわかり面白かった。
以来、今回までお披露目されていなかったそうだ。


橘直幹申文絵巻(部分)鎌倉時代
勇ましさと滑稽さが入り混じる。疾走する馬の表現がみごと。

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江戸名所図屏風(右隻) 重要文化財
日本橋と思われる。一体何人人がいるのか。。

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英一蝶「四季日待図巻(部分)
春、夏、秋、冬ごとに徹夜をして日の出を待つという行事が「四季日待」
遊郭吉原は、徹夜で飲み明かす人たちで大賑わいだった。その様子を吉原で
太鼓持ちをつとめることもあった人気者の英一蝶が描いた作品。

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丸山応挙「虎図」
穏やかな顔つきだが、すごみがある。威圧感たっぷり。

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「物、ものを呼ぶ」という謎めいたピンと来ないタイトルは、板谷波山が出光美術館
の創設者に語った言葉で、「なんらかの理由で別れ別れになっている作品でも、
そのうちのひとつに愛情を注いでいれば、残りはおのずと集まってくる」という蒐集家が
持つべき心得なのだそう。
今回、プライスコレクションを出光美術館が購入することになったのは、プライス氏が
91才と高齢のため、「日本美術を日本に返そう、そのためには、コレクションの大切な
部分190点をまるごと引き受け、学術利用もできるように管理できる美術館」ということで、
出光美術館にクリスティーズを通して話が来たのだそう。これも「おのずと集まってくる」
の現れなのだろうと見終わって感じた。

この記事へのコメント

  • TaekoLovesParis

    よしあきさん、まさに名品ぞろい。質の高いすばらしい展覧会でした。全部出光の所贓品なので、それぞれは、これからも見る機会がありますね。絵を描かれるよしあきさんには参考になると思います。
    2024年10月19日 10:12
  • ナツパパ

    お宝全部見せ...これはすごいです。
    記事の中に見たかったものが複数。
    20日までですかあ...明日までだなあ、悩む。
    2024年10月19日 11:43
  • angie17

    絵画に疎い私でも、お宝ばかりだと分かりました。
    これは凄いですね!!
    2024年10月19日 12:09
  • yk2

    プライスさんは本当に日本と日本の芸術を愛して下さっていますね。「日本美術を日本に返そう」だなんて、本当に涙が出そう。クリスティーズでオークションに掛けてしまうことも当然出来て、そうされていれば天文学的な値が付いたでしょうに。現在の我が国の経済状況を踏まえれば、きっとその多くが日本以外のどこかのコレクションになってしまっていたでしょうね。手に入れてくれた出光美術館にも感謝ですね(^^。
    2024年10月19日 23:16
  • おと

    「日本美術を日本に返そう」って、ほんと素敵。「物、ものを呼ぶ」その通りですね。素晴らしい作品の数々、またいつか公開されるでしょうかね。いつの日か見に行ければと思います。
    2024年10月20日 04:43
  • ふにゃいの

    ブライスコレクションが日本に戻ってくるというニュースの時は
    盛り上がりましたよね。
    バラバラに個人へとならなくてほんとよかったです。
    亡くなってからとかだと絶対そうはいかないからなぁ。
    俵屋宗達の絵はホントカワイイ。
    2024年10月20日 10:20
  • Inatimy

    今回の記事の中で気になったのは、丸山応挙「虎図」。威圧感というより、色っぽさの方が上回ってる感じ^^。というのも目がすごく女性って感じ。目尻のアイラインの跳ね上げがシュッとしてて♪
    虎って画家によって可愛さが色々ですよね。長沢芦雪はマズルが白いのがチャームポイントだし、伊藤若冲のは縞々のラインがくっきり。へたうまっぽくって愛嬌があるのは尾形光琳の「竹虎図」の虎かな。
    2024年10月20日 23:19
  • TaekoLovesParis

    nice&コメントありがとうございます。
    ▲ナツパパさん、全部、出光の所蔵品なので、来年からの改装工事が終わる数年後には、また見る機会がありますよ。出光のロビーからの眺めは、皇居が眼下、市ヶ谷の自衛隊のタワーが見え、その奥が新宿、見晴らしが良くて解放感たっぷりで、良いですよ。

    ▲angieさん、出光美術館は、有楽町駅から近い帝劇の手前なので、場所柄、行くのに便利かと思います。改装後にぜひ。

    ▲yk2さん、「プライスコレクションが日本にやってくる、2度とない機会」
    ということで、国立博物館にかなり並んで大混雑の中で遠巻きに見たのは2006年のこと。その後2016年にも「若冲展」があり、これも大混雑。混雑ぶりが話題になるほどでした。でも、これからはゆっくり見れますね。クリスティーズには、プライベート・オークションというのがあって、ふさわしい受け入れ先と交渉し、価格提示をするそうです。それで候補に挙がった出光、プライス夫妻の希望条件にぴったり合ってほっとしましたね。通常のオークションにかかったら、あっというまに世界中に散逸してしまいますものね。プライスさんの日本への愛、嬉しいです。

    ▲おとさん、出光の改装後に、ぜひ、ご覧になってください。以前、熱狂的なブームをよんだ伊藤若冲の大きな白い象、色鮮やかな画面に描かれたまわりの動物たちもかわいいので、じっくり見ると、また面白いです。

    ▲ふにゃいのさん、「日本美術を日本に返そう」というプライスさんの英断、うれしいですね。日本人の奥様エツコさんの貢献度も高いと思います。亡くなってからでは、遺言に書半歩穴井いていても、円滑に実行されるまで、日月がかかりますものね。宗達は、絵も書もと、それが今でも古びず、天才ぶりが
    半端ないですね。

    ▲Inatimyさん、虎図への観察力がすごい、と感心しながら、文と絵を見比べていて、気づきました。トラチちゃんも、はっきり大きな釣り目でしたね。
    ついつい、どれくらい似てるかなと気になり、昔の写真を見たら、2008年9月の「そっとのぞいてみる」記事のトラチちゃんの豊かな表情。こういうのを捉えるInatimyさんのカメラワークもすごい。だから、いろいろな画家の虎図を克明に覚えていらっしゃるんですね。
    2024年10月24日 10:34