イリス ・ヴァン・ヘルペン展

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3月末、パリ滞在中に装飾美術館で開催されていた「イリス ・ヴァン・ヘルペン展」へ行った。
装飾美術館は、ルーブル美術館の隣で、昔の王宮の建物。
イリス ・ヴァン・ヘルペンは、1984 年生まれのオランダの若手デザイナー。
幼い頃からクラシックダンスを学び、アレキサンダー・マックイーンや
オランダのテキスタイルデザイナーClaudy Jongstraの下で経験を積み、
2007年、アムステルダムに自分のブランドの店を設立した。
イリスは自然界の動きを洋服で再現。服は着るものという概念を超えた作品
に驚きが集まった。

会場に入るなり見えるのは、このドレス。しなやかで美しい。凍った滝という
名前のドレス。日本の「小紋工房」のオーガンジーを使用。
Robe Frozen Falls & headdress 2018                   *Robe=フランス語で服の意味
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墨汁を水に垂らした時にできる模様をイメージしたドレス「墨流し」
Robe Suminagashi, Hypnosis(催眠)コレクション2019
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「凍った滝」「墨流し」、イリスは、自然界の水に注目。
水が飛んだり跳ねたり、さらに凍るときに見られる結晶構造に着目した。
Robe Crystallization(結晶化)2010年
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暗くて見えにくいけれど、黒人のマネキンが着用しているスカートが滝を表現。
アクリルガラスを工具を使って、一本一本、手作業で曲げ落ちる水を表した。
上着(ケープ)は、石灰が堆積し貝殻が生成されていく様子を3Dプリントで作成。
背景に貝殻、サンゴが配置されている。

イリスの関心は深海へと向かう。舞台は海底を表しているような背景。
海草のようなふわふわ、ひらひら感があるドレス。
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Robe Gaia  Route of Rebirth コレクション 2021
Gaiaは現代の地球と生態系を表す言葉。

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舞台の大道具に使われているRogan Brown制作の紙の彫刻。貝を表現。
レースのように見えるヒトデとかイソギンチャク。海の生物。

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名前不明。クラゲのような、、イソギンチャクにも時々ある毛羽立ち?

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全部が海底でユラユラ揺れる海草に見えてくる。

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回顧展なので、昔からの代表的な作品がそろっている。
イリスは、2008年、カラスの動きを服に置き換えた「ケミカル・クロウ」を
発表し、注目された。
カラスを金色に変えた。羽根を表現するために子供用の傘の骨を扇型に配置、
工業用の糸で留め、動きを表現するために層状の構造にし、磁石も用いた。
職人技の伝統的な手仕事でしか作れないもので、デザインと言う範疇を超え、
芸術作品と認められ、作品はオランダの★フローニンゲン美術館に収めらている。
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Robe Tansegrity Magnetic Motionコレクション2014
形はシンプルfだが、マグネットを使った金属素材の服。立体的。
奥のは一見パイプに見えるが、金属素材でフリルまで表現している。

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建築家でマルチアーティストのPhillip Beesleyとのコラボ作品
Robe Hypnosis,  Hypnosis(催眠)コレクション2019 
サテン、チュールといった従来の素材の他にマイラー(ポリエステルフィルム)を
使っている。きらきらするのは、マイラーの効果?

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アーティストとのコラボ作品も多い。
左は日本の鎧兜。右はイギリス人彫刻家ケイト・マグワイアーのまゆのような作品。
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中央は、Narcissus(ナーシサス) MetaMorphism(変貌) コレクション2022
右手はKimono Data Dust、 Ludi Naturaeコレクション 2018
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Kimono Data Decrypt、 Ludi Naturaeコレクション 2018
右の舌を出しているお面は、日本関連?
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最後は、宇宙を意識して華やかに舞う。天井から宙づりになっているマネキンも。
音楽も流れ、宇宙旅行。
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今までみたことがない服ばかり。ただただ感心して見つめてた。
イリスの実験的精神での創造は、次に何を生み出してくれるのだろう。


 


★オランダのフローニンゲン美術館は、Inatimyさんが紹介してくださってます。




この記事へのコメント

  • angie17

    大御所のデザイナーが長く君臨するなか、
    1984年生まれのこの方は、若いですよね~。
    街中で着る服でないかもしれませんが、アーティステックで素敵ですね。
    2024年06月27日 23:09
  • おと

    この曲線の多い流れるような服、着るとどうなるのかな、と思ったんですが、ひとつ前のInatimyさんコメント欄のマキシマ王妃の写真をみて、こんなに綺麗に肌にフィットするのかと驚きました。美しいですね~^^
    2024年06月28日 05:22
  • ふにゃいの

    着るのは無理と思いつつもシルエットは決して奇抜ではないですね。
    誰かに着てもらって動くところがみたいです。より水や海を感じられそう。
    レースに見えるのは、きれいだけど苦手なフジツボを連想しちゃいました(^_^;)
    2024年06月28日 08:51
  • ぼんぼちぼちぼち

    お洒落大好き人間なので、目の保養になりやした!
    2024年06月28日 14:58
  • yk2

    もうすぐ東京ステーションギャラリーでフォロン展が開催されるので、待ちきれなくて最近よく古本屋さんで手に入れた昔の展覧会の図録(1985年、於・新宿小田急グランドギャラリー)を眺めているんですが、今回のエントリ下から2番目の写真左、全身から矢印が出てるみたいな衣装が、フォロン作品にもこんなの有ったなぁ~と思ったら、それは1971年12月からパリの装飾美術館で行われたフォロン展のポスターの絵でした。会場、taekoねーさんが行ったこの同じ場所じゃん!(^^。
    2024年06月29日 22:50
  • coco030705

    こんばんは。
    すばらしいデザインの数々、海の生き物のをモチーフにしたドレスがとても斬新で美しいです。デザイナーであり、アーティストなんですね、イリスは。
    私が着てみたいのは、「クラゲのようなイソギンチャクのようなドレス」です。この展覧会を観ていると、日本人の服やドレスに関する感覚は、保守的に思えます。
    2024年06月30日 23:31
  • Inatimy

    ダイナミックなデザインだけど、よく見ると繊細さの集まりなんですよね^^。
    ドレス「墨流し」、いいなぁ。
    見逃しそうな物事の中に美しさを見出して服で表現する巧みさ、素晴らしいですよね。
    フローニンゲンの記事へのリンク、お知らせありがとうございました。もちろんリンク大歓迎です。
    2024年07月01日 17:30
  • TaekoLovesParis

    nice&コメントありがとうございます。
    ▲angieさん、絵や彫刻などアートの世界が変化していくのだから、ファッションが変わるのも当たり前なんでしょうね。最初は斬新さに戸惑いましたが、慣れてくると楽しくなってきて、終盤では会場を去るのが名残惜しいほどでした。元ルーブル宮という歴史ある会場で新しい展覧会、マッチングがすてきです。

    ▲おとさん、ファッションショーでは、こんなのどう?と提案をするし、他のデザイナーを凌駕したい思う気持ちもあるでしょうから、斬新なものが多くなりますが、ちゃんとロイヤルファミリーが着る品格を感じさせる洋服もデザインできるのねと思いました。

    ▲ふにゃいのさん、フジツボは溶岩かと思ったら、動物なので食べられるんですってね。ちょっと気持ち悪いです。透けているドレスも肌見せという感じではなく、海草が揺れてるように自然界に溶け込んでいるものになってます。所々にBGMもあり舞台演出が相当考えられているので、感心しました。

    ▲ぼんぼちさん、喜んでいただけてよかったです。ぼんぼちさんのファッションのヒントになるものが見つかったかしら。
    2024年07月05日 17:58
  • TaekoLovesParis

    nice&コメントありがとうございます。
    ▲yk2さん、装飾美術館サイトで、Folon展を検索したのですが、1971年は古すぎて見つかりませんでした。ベルギーにはフォロン財団があって、作品が常設されてるようですね。フォロンの定番オジサンが、旅行鞄に見立てた矢印→を持って歩いてる絵もありましたが、下から2番目の写真の服は、5大陸のイメージで、矢を放つアメリカインディアンに見立てて、隣が砂漠色のアフリカだったかと。(記憶があやしい)
    フォロンの絵は着想が楽しくてかわいいだけでなく、色合いが穏やかで美しく、いいですね。
    2024年07月05日 18:36
  • TaekoLovesParis

    nice&コメントありがとうございます
    ▲cocoさん、何かに見立てて服を作るという発想がすばらしいです。飛んでるカラスを服にしようなんて誰も思いつかないです。「クラゲのようなイソギンチャクのようなドレス」は、エレガントで露出も少ないから着れますね。中央前見ごろはレースや刺繍のようでした。どれも細部まで凝ってます。
    前の記事でInatimyさんがご紹介くださってるマキシマ王妃のファッション、たくさん写真がありますが、イリスの白いレースのドレス着用が素敵です。

    ▲Inatimyさん、自然現象を服で表現するという着想がすばらしいです。イリスの出身地が有名な錬金術師を輩出したところなので、イリスの発想の豊かさは錬金術、とどこかで読みました。マキシマ王妃のたくさんのドどれもどれもすてきだけど、イリスデザインのがエレガントさでは一番でした。最初の赤のケープドレスはイリスと思ったとけど、デザイナー名が書いてないので、?
    2024年07月07日 00:16