アーティゾン美術館の印象派

アーティゾン美術館は、旧名称が「ブリヂストン美術館」で、このブログでも
旧名称時代の展覧会記事がいくつかある。
  「アンフォルメルとは何か」展  ここには常設の絵が多く載せてある。
ブリヂストン美術館という名の通り、ブリヂストンタイヤの創業者石橋正二郎
のコレクションであり、東京駅に近い京橋の本社ビルの中に美術館があった。
ビル老朽化のため2015年から新築工事にかかり、2020年に再オープンした。


石橋は、初めは日本の近代絵画の収集をしていたが、戦後、美術館の開館にあたり、
国内の西洋画を買い集めた。そのため日本に馴染みのある印象派の作品が多い。
作品は撮影可なので、スマホで撮ったが、今回は印象派の作品を並べてみた。

1,クールベ「雪の中を駆ける鹿」1856~57年
印象派より前の時代だが、入ってすぐの所にある私には印象深い絵。
雪の中を駆け抜ける鹿。右上のどんより雲。荒々しい雪の面はパレットナイフで
ひっかいている。
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2,モネ「雨のベリール」1888年。ベリールは「美しい島」という意味で、
荒々しいブルターニュの海に浮かぶ島。モネはこの地に3か月滞在中し、
40点の作品を描いた。モネ46歳、筆が冴える年齢。

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3,モネ「黄昏 ヴェネツィア」1908年
燃えるような逆光の夕暮れ。サンマルコ広場の対岸にあるサン・ジョルジョ・マッジョーレ
教会のシルエットだけが浮かぶ。水面は横向きのタッチで空はうねるようなタッチと
使いわけている。60歳の作品。
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4,モネ「スイレンの池」1907年
モネは、ほぼ同じ場所で、時間の変化で変わる光のようすを作品にした。
この作品は、ピンク色がかった水面が日没に近いことを表している。
水に映る柳の葉とスイレンの葉が交錯するのが面白い。
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5,シスレー「サン=マメス 6月の朝」1884年
サン=マメスは、パリの東南部、ロワン川の流域の町。
この絵の左側はポプラ並木で、その向こうはセーヌ川。
影を従来の黒でなく青で表現したのが印象派らしい所。
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6,マネ「自画像」1878年~79年
46~7歳の自画像。画壇で認められ始めた頃。
鏡を見て描いたので、ジャケットの打ち合わせが逆になっている。
背景の暗い無地はスペイン風。顔は丁寧に描かれているが服のタッチは粗い。

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6,ルノワール「モーリス・ドニ夫人の肖像」1904年
ドニは奥さんモデルにした絵を何枚も描いているが、ルノワールが描いた
作品は初めて見た。ドニが頼んだ?それともルノワールが自発的に?
ヌード画に多く使っている緑にオレンジ色が入った背景は肌の色を
引き立たせるのだろう。
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7,ピサロ「菜園」1878年
ピサロは畑を描くことが多い。パリの北西部ポントワーズで描いた
作品は300点。この絵もキャベツ畑。アーチを作るかのような
木々の形が面白い。光あふれる絵。
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8_セザンヌ「サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール」1904年
印象派は光と影を捉えることに夢中になり、線がおろそかになったと感じた
セザンヌは、「モネは単なる目に過ぎない」、ありのままを捉えてるだけ
と酷評した。セザンヌは自然を円筒、球、円錐で表す分析的研究を行った。
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9,メアリー・カサット「日光浴(浴後)」1901年
カサットはアメリカ出身の女性画家。第4回印象派展から参加。
明るい色彩で、温かみのある母子像や生き生きとした子供を描いた。
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10,ベルト・モリゾ「バルコニーの女と子ども」1872年
こんな素敵な服装なのに、女と子ども、って言うタイトルは、、女性として
ほしいです。これはモリゾの家で、モデルの女性は姉2人のどちらかなので、
親子または叔母と姪。遠くに金色ドームのアンヴァリッドが見える。
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次回は、20世紀の絵をのせます。

★1階にあるカフェは床から天井まで一面大型ガラスで明るく、黒白グレーと
モノトーンのインテリアがおしゃれ。一人だったので簡単なランチを頼んだ。
パン、バターがおいしくて、チコリの上に何かのったお料理もよかった。
コーヒーとデザートがついて2000円だったけれど、2022年のことなので、
今は値上がりしてるのでは。。
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この記事へのコメント

  • TaekoLovesParis

    やはり、何回もいらしたのですね。西洋美術館ほど広くなく、コンパクトに名品揃いなので、気軽に見れますね。お好きな絵もいくつかあったことでしょう。
    2024年06月02日 09:35
  • おと

    描かれた場所がわかるのって、とても楽しいです。
    ベリール島、どこかなぁと、調べました^^
    モネのヴェネツィア、素敵だな。美しいところだけれど、こんなに幻想的な絵になるというのが、すごいです。
    2024年06月03日 00:09
  • Inatimy

    ベルト・モリゾ「バルコニーの女と子ども」、後ろからの見た様子がいいですね。
    モリゾは16区のパッシーに住んでアトリエもあったみたいだから、そこのバルコニーかな。
    エッフェル塔があってもいいのにと思ったら、1872年・・・エッフェル塔が着工する15年前だった^^;。
    2024年06月03日 20:25
  • TaekoLovesParis

    おとさん、ベリール島は、フランス北西部、ブルターニュ地方の海岸からちょっと行った所です。英国に近いですね。ここで夏にオペラの音楽祭があるので、行ってみたいなと20年前から思っているけど、実現するかどうか。。
    ヴェネツィア、燃えるような夕陽という言葉があるけど、まさにそれ。オレンジとブルー、補色関係の色使いは目立つけれど、教会の姿がシルエットで尖塔の影が長く伸び、幻想的になってますね。好きな絵です。
    2024年06月03日 22:59
  • TaekoLovesParis

    Inatimyさん、自邸は、シャイヨー宮の近く、パンジャマン・フランクリン通りと書いてあったけど、通りがわからない。検索するとパン屋さんばかり出てきてしまいました。見えるのがシャンドマルス公園、アンバリッドだから、16区ですよね。いい所の気づいてますね。さすがInatimyさん、シャンドマルスなのに、エッフェル塔がない。私は気づかなかった。。
    2024年06月03日 23:09
  • ふにゃいの

    モネのこの絵は好きなんですよね~。
    おっしゃるように実際の葉と水に映る葉の交差が
    面白い構図とかピンクな色合いも。
    2024年06月04日 10:24
  • Inatimy

    Rue Benjamin-Franklin なら、メトロのパッシー駅の北北西にある円形交差点から北北東へ伸びてトロカデロ庭園の端っこ(南翼側)に接してる通りですね。フランスの政治家のジョルジュ・クレマンソーのMusée Clemenceauクレマンソー記念館もある通り。
    私の中では、すっかりパリ=エッフェル塔。yk2さんが「エッフェル塔三十六景」の課題を出したから・・・^^;。
    2024年06月04日 13:51
  • yk2

    ふふ、今日偶々長谷川潔の作品集のポストカードを眺めていて、アレクサンドル3世橋の向こうにエッフェル塔と飛行船って光景で、ああ、いなちゃんがこんな風景と同じ様な殻の写真を課題提出(笑)してたな~と思い出してました(^^。

    その話題の元となったモリゾの絵ですが、確かに『バルコニーの女と子ども』は少々ぶっきらぼうな具合に感じますね。taekoさまのお怒りもごもっとも。日本語に訳したブリヂストンの学芸員がセンスが無い?(笑)。まあ、画商が付けただけのタイトルかもしれませんし(^^。

    でも、モリゾって意外とサバサバとした性格だったとも云われてて、女性ならではの甘く優美なムードだとか感傷性は極力自分の絵に持ち込みたくなかった・・・なんてエピソードも目にした記憶が有るので、タイトルなんて本人が付けてたとしてもさほど重要視してなくて、案外素っ気ないものになっていたかも知れませんよ。せいぜい『バルコニーの姉と姪』だとか(^^;。
    2024年06月05日 23:43
  • TaekoLovesParis

    ふにゃいのさん、好きな絵って、私は見るたびに、親しい友達に会ったような気がして。モネのこの絵、じっと見てると、計算された構図って、わかってきて、ピンクも面白いし、これが抽象画につながっていくんだろうなと思ったりします。
    2024年06月06日 01:07
  • TaekoLovesParis

    Inatimyさん、パンジャマン・フランクリン通りって、Benjamin-Franklin 、
    えっ?ともう一度、アーティゾンのコレクション解説を見たら、パンじゃなくて、バン、バンジャマン。目が悪くて、パとバを読み間違えました。
    でも、Benjaminは、ベンジャミンと読むでしょ。あの有名な避雷針を発明した
    ベンジャミン・フランクリン。外交官でもあったから、フランスとの外交で活躍。だから通りの名前にしてもらったのね。アメリカ人だからフィラデルフィアで住んでいた家が今は記念館。私が1か月滞在した家のすぐそばでした。
    クレマンソーは、シャンゼリゼ=クレマンソーにある銅像、オルセーのマネ画の肖像画が浮かぶけど、記念館もあるのね。パッシー地区はお散歩にいいし、今度、行ってみます。
    2024年06月06日 01:30