これがポスター。天使に導かれ、天空を飛行、神様のもとに行くのでしょう。
こういう幻想的な絵は、好きなジャンル。
詩人で画家のルイ・ジャンモ(1814-1881)は、敬虔なカトリックで、
カトリックの精神に基づいた長編詩を書き、詩をもとに描いた一連の絵
「魂の詩」34枚を40年かけて制作、1855年の万国博覧会に出品した。
作品は、ルイ・ジャンモの出身地リヨンの美術館所蔵だが、全部が公開
されるのは、今回が初めて。

1,なんて、明るくて、かわいい絵なんでしょう!
ここがスタートでないのに、この絵に魅せられた。タイトルは「春」
主人公の男の子(ピンクの服)が魂の友(白い服の女の子)に野原で出会い、
二人でこれから人生の旅をする。

2,「魂の詩」の順番としては、「春」の前に「天使と母」がくる。
赤ん坊を抱く慈愛に満ちた母の姿。横で天使が「この子の魂に神の御慈悲を」と祈る。
3.さらにその前は、主人公の誕生場面、これが群を抜いて美しい絵。「魂の道」 母に抱かれた男の子の魂が天から地へ、たくさんの守護天使たちに守られながら地上へ降りて来る。地上では、プロメテウスが岩山で鎖に繋がれ、ハゲタカに食われている。 プロメテウスの絵は、モロー美術館で見たばかり

と逆順の紹介だったが、以下、撮った絵を紹介。
4,「魂の飛行」
白い服の女性に導かれ、地上を去り、新しい国に向かう2人。
下に子供時代に慣れ親しんだ川、丘、緩やかな谷という穏やかな景色が
見える。
ポスターに使われていたのは、
「理想」2人の魂は最高点に達し、女の子が先導。
その後、女の子が亡くなり、男の子は心を病み、で、ベージュ色の紙にパステル
で暗い色を使い、「孤独」「無限」「悪霊」「大饗宴」「神の喪失」など、悩む
心のようがが描かれていた。
「亡霊」
自然の美の中で、青年は再び希望を持つ、腕を折り胸に手を当てるポーズで、
一杯空気を吸い込んでいるところ。
最後の絵は「神の御許へ」だった。
あれっ、見たことがある絵が架けてある!
アングル「オスティアのマリア」1854年
この絵は、「魂の詩」と同じ1855年のパリ万博出品作だった。
ルイジャンモは、当時ローマに滞在していたアングルに教えをこうために、
ローマに出かけるほどだった。

ルイ・ジャンモ「聖家族」1844~87年
アングルのマリアの隣に架けられていた。アングルの厳粛さ、気高さに比べると、こちらは市井の人のようなマリア。
「魂の飛行」の横の説明には、やはり見たことがあるアリ・シェフェールの絵「パオロとフランチェスカ」の縮小版の写真。空を舞うという発想は、ここから
来たのかしら、と説明を読むと、やはりそう。1835年にサロン出品の絵だから
見ているはず。アリ・シェフェールの絵はコントラストに目が行くが、ルイ・ジャンモ
は、もっと詩的、情緒的、ヴォラプチュアス(官能的)でもある。
「亡霊」の男のポーズは、ホドラーの「Regard dans l'infini 」無限の中で見つめる
からヒントを得たのだろうと縮小版の写真つきで説明があった。背景が海と
いうのも同じ。
前半(第一部)の絵だけ見ていると、色も明るく、空を舞うように飛ぶ浮遊感。
それが第二部になると、ベージュの紙にパステルと暗くなる。
「魂の詩」、そもそも私が魂について、わかっていないから、ストーリーが
ぴんと来なかった。いつかわかる日が来るのだろうか。
この記事へのコメント
yk2
それにしても、34枚を40年かけて制作とのことで、それだけ長期間だと画風や色遣いにも変化がも有りますね。ここに並んでる絵だけでもルネサンス期のイタリア風だったり、甘く柔らかな色のトーンがロココっぽかったり、『魂の道』のお母さん天使はマニエリスム的だったり。一転、『亡霊』ではモノクロになって、ホドラーの話を読む前の僕にはなんだかマグリットの様にも思えてみたり(^^。
TaekoLovesParis
ジャンモは敬虔なカソリックの家で育ち、リヨンの王立中学での仲間と熱心に聖書や哲学を学んだという宗教的素養がある点が、他の画家と違うところ。だから、ローマと言うカソリック総本山の地への旅で神の啓示を感じ「魂の詩」の構想を得たんだと思う。
こういうことを本文に書いても誰も読まないだろうから、割愛したんだけど。
絵本作家、現代ならそうですよね。聖書には詩も多いし、学びから得たもので書くことも得意だったから、叙事詩を創作し、挿絵をつけることができたんですよね。しかもレベルが高い。
第一部は、明るくて、色も綺麗なので、ストーリーを追いながら、この絵は、西洋美術館のドラクロワの「聖母の教育」みたいとか思いながら、鑑賞したのですが、第二部になったら、がくっ。暗い、絵が上手だから、暗さに引き込まれそうになる。キャンバスに油彩だった一部と違って、ベージュの紙(グワッシュ紙?)にパステル。足早に通り過ぎました。「亡霊」の海と雲は、マグリッドにありそう。終始、気になってたのは、主人公の男の子がヘアスタイルや服のせいで女の子に見えてしまうこと。
「魂の道」マニエリスムの時代、私はマンテーニャの「婚礼の間」の天井画の青空と天使を思いうかべ、ちょっとちがう、って取り下げ、でした。
長い期間の大作なだけに、絵にもいろいろな時代のスタイルが取り入れられてました。何回も描きなおしがあったのでしょうね。
おと
魂の飛行、理想どおりには行かず、たくさんの苦悩を経て、そして最後は救われるということでしょうか。やはり宗教&哲学的。
同じマリアでも雰囲気が全然違いますね~。
プロメテウスのハゲタカのシーン、この前の記事で読んだ!とわかる自分が嬉しいです(笑)
TaekoLovesParis
マリア様を描くのは難しいんですね。神々しい表現、アングルがお手本ですね。
アングルに指導を受けても、そうすぐには上手くなれないって思いながら、見ましたが、マリア様を現代的に描くと言う意図だったのかしら。
◎プロメテウスのハゲタカのシーンを覚えててくださって、嬉しいです。
Inatimy
赤とブルーをまとったマリアで思い出すのは、ラファエロの「牧場の聖母」や「美しき女庭師」(「聖母子と幼児、聖ヨハネ」)。ルイ・ジャンモの絵はそれともまた雰囲気が違ってて、<敬虔なカトリック>と記事の最初で読んだので、もっとオーラいっぱいに描かれると思いきや、なんだか印象が違い、意外でした。
moz
絵画ってそれ一枚でもストーリーがあるのだと思うのですが(自分の鑑賞はそんな感じです)、こころに詩がある画家さんなら、一枚では表しきれず、こういう形のパフォーマンスにもなっていくんだろうなぁと、そんな風に読ませて頂いて思いました。連作を全て展示してくれてってその意味ではとても素晴らしいこと。
見てみたい展覧会だなぁ ^^ と思いました。
TaekoLovesParis
アリ・シェフェールは、好きな画家なので、自分のサイトで検索したら、過去に3回、登場してました。ここで使ったアリ・シェフェールの縮小版がある説明文には、フランス語Les ombres de Francesca da Rimini et de Paolo Malatesta 、英語はざっくりFrancesca da Rimini だけ。ロダンの有名な「接吻」は、またの名が「パオロとフランチェスカ」「LE BAISSER OU PAOLO ET FRANCESCA」姓名が長いから姓を省略が多いのでしょう。
アリはオランダ出身なんですよね。同じく私が好きな画家のシャヴァンヌは、アリ・シェフェールに師事したかったけど、叶わず、弟の画家アンリ・シェフェールに師事しました。Ary とHenri だけど、アリとアンリ、日本語では名前が似すぎて混同しそう。オランダ語では、アーライと、。
私も聖母で思い出すのは、ラファエッロ。いろいろ種類があって、それぞれマリアの顔の向きや表情が違うけれど、気高さは共通。ジャンモのには気高さ、崇高さを感じられなくて、、赤い服、青いマントでも顔がだいじ。やはりラファエッロの域に達するのは難しいのかなと。
TaekoLovesParis
ふにゃいの
というか、結構ピンポイントに絵にライトを
あてているように見えます。
昔の絵は、男の子と女の子の違いが
よくわからないし、服もドレスっぽかったり
男の子の方がかわいかったりしますよねって
今時、だから何?って言われそうですが。
TaekoLovesParis
<今時、だから何?> → ですよね~(笑)