シュテーデル美術館(フランクフルト)

ここへ行ったのは、20年以上前。カメラを持たないひとり旅だった。
だから写真はないが、パンフと買った絵葉書が、整理をしてたら出てきた。

パンフ1ページ(表紙)
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当時は、パリへの往復チケットを買うと、ヨーロッパ内へ1か所、無料で
行けたので、フランクフルトへ行くことにした。
パリでの宿のE子を誘ったら、
「フランクフルト、美術館もソーセージも興味ないわ。一人で行ってらっしゃい」

駅に近く美術館に歩いて行ける安全なホテル、インターコンチネンタルを予約した。
シュテーデル美術館は、銀行家シュテーデル氏のコレクションで、1818年に開館、
1878年にマイン川のほとりの現在の場所に堂々とした立派な建物を作った。
上のパンフにあるように、コレクションがすばらしい。


右上はボッティチェリ「若い女性の肖像」1480年

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中段は、ルノワール「昼食の後」1879年
庭で昼食を終えたばかりのくつろぎの瞬間。印象派時代の作品。

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中段:フランツ・マルク「雪の上に横たわる犬」1910年
動物が好きでたくさん描いたフランツ・マルク。カンディンスキーの影響を受けて
描いたこの犬は、輪郭が角ばっている。
私はこの色使いが好きだ。
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下段:左マックス・ベックマン「サキソフォンのある風景」1926年
ベックマンは、シュテーデル氏が画家育成のために設立した美術研究所で教えていた。
しかし、ナチから頽廃芸術として弾圧されたため、アムステルダムに逃げ、戦後、
アメリカに移住した。


パンフ2ページ

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左:キルヒナー「帽子をかぶった裸婦」1910年
キルヒナーはドイツ表現主義を代表する画家。大胆なデフォルメと色使いが特徴。
ナチにより、頽廃芸術と認定されたことから悲観し、自殺をした。

中央:レンブラント
右:フレマールの画家ロベルト・カンピン「聖ヴェロニカ」1424~30年
初期ネーデルランド絵画。15世紀の祭壇画の一部。他に「聖母子」「磔刑後のキリスト」
の2枚が並んで展示されている。ヴェロニカが、手に持っているのは、ゴルゴダの丘へと
向かうイエスが疲労で倒れた時、顔の汗と血をぬぐった聖布。イエスの顔が見える。



パンフ3ページ

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パンフに書き込みがしてあるので、誰の絵かわかる。
上段の丸い絵は、カナレット「ヴェネツィア サンマルコ寺院からの眺め」1730~40年
下段、左: マックス・ベックマン「シナゴーグ」(ユダヤ教の会堂)1919年
ドーム屋根と三日月がユダヤ教を示している。
右:ジャン・デビュッフェ

自分で書きこんでるのに、Müller  Ophelia  Hamlet und Horatio
どんな絵かわからないので、調べたら、ビクター・ミュラーという画家で、
池の畔、柳によりかかるオフェーリアの絵があった。


もう一つの書き込み「O.Müler Adam & Eva」
オットー・ミューラーの「アダムとイブ」
これは、当時の私には、衝撃だったのだと思う。現代版の男女。
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絵葉書を買ったのは、
クラーナハの「ヴィーナス」1532年。
上野の西洋美術館で2016年に「クラーナハ展」があり、これがメインだった。
「500年後の誘惑」というキャッチコピーがついていた。シュテーデルの所蔵品、
この展覧会の図録に、パンフ2ページキルヒナー「帽子をかぶった裸婦」は、
裸婦なのに、帽子、ネックレスという装飾品、ミスマッチな演出は、クラーナハ
のヴィーナスに基ずくものである。キルヒナーらドイツ表現主義のアーティストは、
ドイツ中世への民族主義もありクラーナハを崇拝していた。と書いてあった。

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ルドン「ヴィーナスの誕生」
海からあがって来るヴィーナス。ヴェールを被り天使はいない。
海の水の色がこの色とは。
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パンフ4ページ


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パンフの左下にあるのが、フェルメールの「地理学者」。海図を見ているところ。
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後ろの家具の上に地球儀が置かれている。
ルーヴルの「天文学者」と対をなすと言われてる。


中央:ティシュバイン「ローマのカンパーニャにおけるゲーテ」1787年
ドイツが誇る文豪ゲーテはフランクフルトの生まれ。これはかなり大きな絵。



右:赤い服が強烈に目立つ。ポントルモ「婦人の肖像」1532年。
宗教画の多いポントルモの肖像画は、マニエリズムの初期と言われている。




買った絵葉書の中から
モネ ”Hauser am Wasser(Zaandam)" 1871~2年

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マネ ”La partie de croquet" 1873年

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キルヒナー"Wildboden" 1924年頃

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カール・フィリップ・フォール ”Wolkenstudie” 1815年
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雲の習作。こういう雲、あるのかな?色合いが好きだったし、デザイン性が
あって面白いと思った絵。フォールは23才で川で溺れて亡くなった。



ドイツで一番歴史が長い美術館なので、所蔵作品に良いものが多い。
2時間あれば見れる規模なので、またいつか行ってみたいと思う。


美術館のサイトで、主な所蔵作品が見れますが
日本の旅行社の案内のサイトがわかりやすいです。



この記事へのコメント

  • yk2

    20年前かぁ。ここでクラナッハのヴィーナスに出会った事で、やがてtaekoねーさんがユーディトだとかゴリアテだとかの”生首絵好き”になって行ったと云うご趣味(笑)の始まりの、記念すべき美術館ってワケですね!。ふむふむ。

    特定の時代や画派に拘るタイプの人なら立ち眩みがしてしまいそう(笑)なくらいの何でもアリ感。ルネッサンスから近現代まで、とにかく幅広いですね。ちょっと吃驚しちゃうくらい(^^;。個人でフェルメールだとかボッティチェッリだとか、19世紀ヨーロッパの銀行家シュテーデルさん、どんだけ儲けてたんでしょう?。凄過ぎる。
    美術館のサイトも見ましたが、以前にバニラさんのところで覚えた写真家の名前、杉本博司さんの作品も収蔵されてるんですね。ヴァロットンの”Blonde Nude”って、初めて目にする絵も。めっちゃ興味深いです、ここ。
    2021年08月28日 15:41
  • angie17

    20年前は、携帯カメラも一般的ではなかったですよね。
    『カメラを持たずに・・』の文章で、そうだそうだ!と思いました。
    直ぐに形に残せないからこそ、楽しめたのかもですね!
    2021年08月28日 15:42
  • TaekoLovesParis

    yk2さん、もぅ何でもそっちの方向へ誘導しようとするんだから、、固定概念があって困ったもんだわ、と反論したものの、、考えてみたら、好きじゃないけど、興味を持ったのは、ここが始まりかも。この時は、初めての一人旅でびくびくしてたけど、美術館の中は安全でリラックスできるとわかり、以後、パリから一泊旅美術館巡りをするわけです。

    シュテーデル氏、お金持ちで。絵が好きで、見る眼があったんですね。ドイツで一番古い美術館で所蔵品も多い。しかも杉本博司作品のように新しいものも購入している。ヴァロットン作品も1920年のだから、美術館が開館してからの購入だし、オットー・ディクス、マックス・エルンストもある。さほど広くないところにお宝がぎっしりで。私も再訪したいです。
    2021年08月29日 01:53
  • TaekoLovesParis

    angieさん、私が初めてデジカメを買ったのは、2000年で、500万画素でした。撮ったものを消せるのは、画期的で、便利!と思ったものです。
    絵を写真に撮るなんて、当時の私は思いつかなかったです。
    2021年08月29日 02:00
  • moz

    美術館行きたいです。そして、作品たち、又日本にやって来てほしいです ^^
    予定されていた展覧会が、ほとんど中止や延期ですよね。残念でなりません。
    印象派、フェルメール見たい度 MAX 状態 ^^;;
    シュテーデル美術館、とても素晴らしい作品たちを持っている美術館なんですね。なんといってもフェルメールの地理学者がある!! 来日した時にも見ましたが、やはりその「家」に落ち着いている地理学者に会いたいです。「家」ではどんな表情なのか? 見てみたいです。
    それから、ボッティチェリのこの絵、モデルはシモネッタ・ヴェスプッチと言われている絵ですよね。辻さんの春の戴冠を読んでいるところなので(まだ2巻目なんです)、この絵も実物を見てみたいです。 ^^
    2021年08月29日 11:48
  • TaekoLovesParis

    mozさん、最近、来年の展覧会の広告を見るようになりました。昨年・今年と外国から借りて来るのが大変な状態だったから、企画展は小規模になってしまいますね。シュテーデル美術館、すばらしかったです。インターネットで情報を簡単に得れる時代でなかったので、「地理学者」があると知らず、第何室かの出口のすぐ横にあったので、「えっ、こんな所に」と意外でした。特別扱いでなかったです(笑)
    シモネッタ、当時評判だった絶世の美女です。<辻さんの春の戴冠>→ 知らなかったけれど、イタリアのルネサンスが舞台なんですね。
    2021年08月29日 14:42
  • gillman

    ここは行ってみたいなぁ。
    2021年08月29日 20:00
  • TaekoLovesParis

    gillmanさんには、ドイツですから特におすすめです。ベルリンのペルガモン博物館は、イシュタールの門や神殿など、各地から持ってきた建造物中心ですが、ここは絵画だけです。しかも古典から現代美術までと幅広いコレクションです。
    ドイツの画家の作品が多いのがいいなと思いました。
    2021年08月29日 23:37
  • Inatimy

    いろいろ書き込みされている中で、パンフ1ページの左上の丸い額の肖像画に何もなく、
    気になった絵だったので調べていたらコメント遅くなりました^^;。
    Hans Holbein (der Jüngere) ハンス・ホルバイン(子)の"Portrait of Simon George of Cornwall" 1535-1540 だったんですね。
    羽やビオラのついたベレー帽に、手にはカーネーション、襟・胸元・袖口の装飾も綺麗で服もオシャレ♪
    モネの”Hauser am Wasser(Zaandam)"はまさにオランダの風景だなぁ。
    2021年08月30日 16:20
  • TaekoLovesParis

    Inatimyさん、今までも何度もお世話になっているけれど、Inatimyさんの絵を探す能力に敬服しています。丸い額の肖像画、ボッティチェリの横にあるから、16世紀頃?これだけでは、探しようがなく、あきらめてました。ホルバインだったのですね。手に赤い花を持ち服もかなりおしゃれなので、身分の高い人だろうと想像してたけど、英国のコーンウォルの領主なんですね。ホルバインは英国でヘンリー8世を始め多くの肖像画を描いているけれど、どれも重厚な感じ。この絵はイタリア人かと想像してました。解決です。ありがとう。

    モネもZaandamという地名がわからなくて、、フランスでなくオランダだったんですね。damですものね。ザーンダムのザーン川沿いの家並み。わかってよかったです。モネはザーンダムに4か月、暮らしたんですね。
    こんなふうにわかると記事にしてよかったって思います。
    2021年08月31日 00:34
  • coco030705

    ボッティチェリ「若い女性の肖像」の美しさ、本当に惹きつけられます。髪飾りが素敵ですね。
    ルノワール「昼食の後」、寒色系の色の絵ですが、沈んだ感じはしませんね。帽子やリボン、ドレスとテーブルクロスが白で華やかだからでしょうか。
    キルヒナー、モダンでデザイン的な素敵な絵です。やっぱりヒトラーって悪ですね。
    オットー・ミューラーの「アダムとイブ」、最近描かれたといってもうなずくぐらいのモダンさ。
    クラーナハの「ヴィーナス」、大阪にも来ましたので、本物をみました。きれいですね。
    ルドン「ヴィーナスの誕生」は独特ですね。
    フェルメールの「地理学者」さすがです。
    モネとマネ、いいなぁ。
    キルヒナー"Wildboden"は好きです。キルヒナーは知らなかったのですが、いいですね。好みに合います。
    カール・フィリップ・フォール ”Wolkenstudie”、雲の習作なんですね。写真ではなく絵でなくては表せない色と形、いい作品だと思いました。
    こんないい作品がそろっている美術館がヨーロッパにはたくさんあるのでしょうね。うらやましいです。
    2021年09月03日 21:44
  • TaekoLovesParis

    cocoさん、丁寧に見て頂いてありがとうございます。
    ボッティチェリの「若い女性の肖像」にモデルは、シモネッタという名前で美しさが轟渡っていた人です。「ヴィーナスの誕生」のヴィーナスのモデルですし、同じタイトル「若い女性の肖像」で逆向きの顔があり、それは丸紅コレクションにあります。

    「昼食の後」は、cocoさんがおっしゃるように白が際立っていますね。横の女性の服は黒で対比させ、背景は、ルノワールが木々を背景に使う時の色合いですね。
    キルヒナーの絵を見ていると、色の強さから強気な感じもしますが、頽廃芸術の烙印を押されたら、強気でいられない、希望がなくなってしまいますね。
    Wildboden、土地の名前かしら?険しい山のすぐ下の一軒家だけど、手前の畑の黄色で画面全体が明るくなりますね。

    Wolkenstudie wolkenはcloudでstudieはstudyです。絵の名前がドイツ語でしか書いてないんですよ。

    フランスはもちろん、イタリア、ドイツ、スイス、スペインに中規模のいい美術館があって、まだ行ってない所もあるので、来年くらいは行けるかしら。
    2021年09月04日 19:02