ノルマンディ地方は、フランスの北西部で、英仏海峡に面している。
海と緑にあふれ、風光明媚なので、多くの風景画がこの場所で描かれてきた。
この展覧会は、19世紀から20世紀はじめまで、ノルマンディを描いた作品を集めた
もの。
長年、英国とフランスの間で、争いの場となったノルマンディだが、1815年に
ナポレオン戦争が終わり、英国の画家たちが自由にフランスを訪れるようになった。
英国の有名な画家ターナーは何度もノルマンディを訪れ、絵で人々にノルマンディの
素晴らしさを伝えた。英国の画家の影響を受け、フランスでも風景画に対する関心が
高まり、画家たちがノルマンディに集まり、絵を描いた。
ウジェーヌ・イザベイ「浜に上げられた船」 1865~70年頃
ギュスターヴ・クールベ「海景、凪(なぎ)」1865~67年
雲に特徴がある作品。凪の時は、こんな雲なのだろうか?
クールベの「波」(オルレアン美術館蔵)は、激しい波で岩に打ちあげられた一艘の舟
が中央に置かれている絵。遠くに小さく見えるのは帆船だろうか。
西洋美術館にあるクールベの「波」も、ノルマンディなのだろう。
セーヌ川河口の港町ル・アーヴルは、マルセイユに次ぐ大きな港町として栄えた。
上の2つの絵から20年後、ル・アーヴルで育ったブーダンは、太陽の光、雲の動きを
捉えた海の景色を描きたいと屋外で絵を描いた。それまでの風景画は、屋外では
スケッチをするだけだった。
チラシに使われてる絵は、ブーダンの「ル・アーヴル、ウール停泊地」1885年。
同じくブーダンの「トゥルーヴィルの海岸にて」1880年~5年
オルセーにあるブーダンの「トゥルーヴィルの海岸」も浜辺で大勢の人々が椅子に
すわって海を見ていたけれど、この絵では、画面いっぱいに人が密集してるのに驚く。
空の部分が少ないからでしょうね。
パリに生まれたが、ル・アーヴルで育ったモネは、10代でブーダンの弟子となり、
屋外で描く方法を教わった。
モネ「サン・タドレスの断崖」1867年。27歳でこんなに上手い。
19世紀後半になると、見たままの風景画ではなく、色や形にこだわった新しい
画風がでてきた。
フェリックス・ヴァロットン「オンフルールの眺め、夏の朝」1912年
ヴァロットンらしい、と思って見ていたら、友達が、「わぁ、面白い。明るいし、
木の形が、これ、あり得ないでしょ」と、笑いながら言ってきた。
これは丘の上、遠くにきちんとオンフルールの町が描きこまれてる。
夏らしい影の長さ。
デュフィの作品が思いがけず、たくさんあった。
ラウル・デュフィ「海の祭り、ル・アーヴルへの公式訪問」1925年頃
デュフィらしい青。デュフィもル・アーヴルの生まれで、晩年をここで過ごした。
晩年の代表作「黒の貨物船」の連作、大きな絵もあり、印象に残った。
アルベール・マルケ「ル・アーヴルの外港」1934年
海を描くことが多いマルケらしいグレーや緑の色彩の絵。マルケはフォーヴと言われて
るけど、強烈でなく、淡々とした静けさがあるので好きだ。
アンリ・ド・サンデリ「オンフルールの市場」制作年不詳
初めてきく名前の画家。 アンリ・ルソー的な素朴さ+フォーヴっぽい色合い。
ノルマンディに行ったことがない同行の友達は、作者不詳の↓ の絵
「ジュミエージュ修道院の眺め」1830年頃、を見て、行きたくなったと言っていた。
7世紀に建てられた修道院で、戦争や革命で壊され、そのままの姿で残っている。
フランスでもっとも美しい廃墟と言われてるそうだ。
さくっと見れて、ノルマンディはこんな所とわかる展覧会です。11月9日まで。
損保ジャパン東郷青児美術館にて。
この記事へのコメント
よしあき・ギャラリー
良さそうですね。
教えていただき、ありがとうございました。
ぶんじん
チョコローズ
あの島と長く続く牧草地しか印象にありません。
素敵な街並みや風景もあったんですね。あっ、バスの中で爆睡してから見過ごしたかも。
もったいない。
Inatimy
アンリ・ド・サンデリ「オンフルールの市場」の絵、気に入りました。
中央の建物も面白い形だし、市場があるというのも。同じ角度で撮ってみたくなりますね。
オンフルールにはウジェーヌ・ブーダン美術館もあるようだし。
チラシのブーダンの絵も空の温かみのあるブルーが美しくていい感じです。
匁
「ノルマンディー大作戦」
で知っています。遠浅の海岸と覚えています。
風光明媚な海辺なんですね。
空、海、砂浜
いいですね。
moz
展覧会、年末のここにきて? 色々面白そうなのが多くなってきて、うれしい悲鳴を上げそうです 笑
どれも傑作揃いですが、やはりモネの一枚良いな。オルセーで見直したって言うとえらそうになってしまいますが、また一段と好きになったモネの「サン・タドレスの断崖」いいですね。
それに、ヴァロットンもやはり只者ではない感じ。
この2枚だけ見るのでも行きたい展覧会ですけど、会期が迫っているんですね。^^;
yk2
「印象派のふるさと」ねぇ・・・。
云いたいことは解るけど、何でもかんでも印象派って言葉に結びつけて動員を図ろうという主催者側の魂胆が見え見えですね~(苦笑)。実際、taekoねーさんがここに選んだ絵に、モネの作品でさえ1867年ってコトで、いわゆる印象派の絵が1枚も無いし(笑)。印象派=外光派ってイメージの押し売りに、ドガ好きの僕としてはちょいとヒネくれたことが云いたくなってしまいますわん(^^ゞ。
TaekoLovesParis
▲よしあきさん、新宿西口で便利な場所です。こういうふうにある特定の地域に焦点をあてた展覧会も面白いですね。
▲ぶんじんさん、やはり見てみたいですか。7世紀のものが、破壊されても残ってるのは、すごいですね。ローマの遺跡よりは新しいけれど。
▲チョコロさん、ノルマンディといえば、モンサンミッシェルが浮かぶけど、この展覧会にモンサンミッシェルの絵はありませんでした。バスは風光明媚なノルマンディを通ったと思いますよ。もったいなかったですねー(笑)。私が通った時は、リンゴの木がたくさんあって田園風景が素敵でした。ノルマンディはシードル(りんご酒)の産地なんですよ。
▲Inatimyさん、オンフルールの港は、私が行ったときも絵で見ていたとおり、ヨットがたくさん停泊して、帆が風になびき、はるか向こうが水平線。雰囲気がありました。港には、レストランがたくさん並んでるんですよ。町はかわいらしい感じ。お店のウィンドウを眺めながら散歩をしましたが、アンリ・ド・サンデリの絵にある建物、教会があったかどうか、、記憶になしです。Inatimyさんが、オンフルールの町を歩いたら、どんな写真をお撮りになるんでしょう?教会は外せないですよね。
オンフルールから車で少し行ったところに、モネやクールベの絵で有名な奇岩のあるエトルタがあります。
展示されていた絵は、ブーダン美術館からのものが何枚もありました。
▲匁さん、「史上最大の作戦」ですよね。私も見ました。遠浅の海岸だから、
海の中をびしゃびしゃ水しぶきをあげて走りぬけ、上陸するんですよね。音楽(
Many men♪のコーラス)もよかったですね。
今日のタイガーズ、史上最大の作戦ほどの元気がなかったですね。
▲mozさん、この秋は私も行きたい展覧会がたくさんあります。行ったのは、ウフィツィ展、ホドラー展、東山御物展、追々記事にします。
モネの対角線構図、潔くていいですね。
ヴァロットン、その通り、タダモノではありませんよー。私はとっても好きです。現代に通じるデザイン性があると思ってます。
▲yk2さん、ノルマンディのブルターニュは酪農で有名ですものね。塩キャラメルは、アンリ・ルルーのおかげで広まった?って思ってます。少し高いけど、おいしいですねー。
私も見終わったとたん、どれが印象派だった?って疑問に思いましたよ。一番たくさんあったのはデュフィ。ドガは一枚もないし、ルノアール、シスレー、ピサロもない。マネもね。コローがあったけど、印象派より前だし。印象派と書けば集客できるってことでしょう。ノルマンディに焦点を絞ると風景画になる、風景の中でも外光派がたくさんあったかというと、そうでもなく、、、でも、面白い展覧会でしたよ。yk2さん向きじゃないけど。
カエル
ヴァロットンの木の形かわいいですね。
廃墟と市場行きたいな。。。
フランスも広いですね。