ワシントン・ナショナル・ギャラリー展

 国立新美術館で開催中の「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」では、印象派を中心と
した有名画家の作品が揃っている。どれも質の高いものばかりなので、暑い中、足を
運んでも、がっかりはしないと思う。

どんな有名画家かというと、マネ、モネ、ルノアール、ゴッホ、ドガ、セザンヌ、、、。
展示は、年代順に並んでいる。

まずは、印象派が登場する少し前の時代。
コロー「うなぎを捕る人々」1865年。コローの風景画よく登場する森。
画面左側の木登りの子供、子供を遊ばせてる母親ともう一人。ウナギを捕る人は右奥。
(この小ささでは、点としか見えないですね)
Corot.jpg


クールベ「ルー川の洞窟」1864年。洞窟に吸い込まれそうになる。神秘的な洞窟。
2つの絵とも、奥に光を当てることで、奥行き感、立体感を出している。
Courbet.jpg
 

マネ:「オペラ座の仮面舞踏会」1873年。
黒い服を描くことの多いマネ。実際に絵を見ると、黒にさまざまな色調があるとわかる。
シルクタフタの材質感もすばらしいし、シルクハットで群衆を描きつくしている。
オペラ座の柱とシャンデリアは、今も変わらない華麗さ。
友達は、上に見える足が気になると言っていた。

Manet Fete en Masque.jpg   

同じくマネ:「鉄道」1873年。ちらしに使われ、この展覧会を代表する絵。
列車は見えないが、蒸気機関車の白い煙がたちこめている。
母親はこちらを向いているが、少女は後ろ向きで格子の向こうの列車を見ている。
服装もブルー系で統一され、上品。膝で眠る子犬が愛らしい。
マネの犬の絵もあった。「キング・チャールズ・スパニエル犬」1866年。

Manet Railway.jpg    Manet KingCharlesSpaniel.jpg

モネ「日傘の女性、モネ夫人(カミーユ)と息子」1875年。これもちらしに使われている絵。
オルセー美術館にあるのは、これより11年後に描かれたもので、同じような構図だが、
カミーユが亡くなったあとの後妻オシュデ夫人の娘シュザンヌがモデルといわれている。
青い空、白い雲、風の流れが伝わってくる光あふれる作品。

monet.jpg

ルノアール:「モネ夫人とその息子」1874年。
同じ2人をモデルに、モネの家に遊びに来たルノアールが描いた絵。
戸外の空気が伝わってくる幸せそうな絵。モネ夫人カミーユの手には扇。
モネの日本趣味がこんなところにも表れている。

Renoir MmeMonet et son fils.jpg

カイユボット:「スキッフ(一人乗りカヌー) 1877年。
この絵に、足を止めたのは、この春、パリで開かれていた展覧会「カイユボット兄弟」
のポスター写真に似ていたから。オールが水に反射して美しい。

Caillebot.jpg


メアリー・カサット「青いひじかけ椅子の少女」1878年。展覧会の広告に使われている絵。
「もう、疲れちゃった」という表情の女の子。英国風のタータンチェックの服がかわいい。
カサットはドガの弟子だったので、青い肘掛椅子の部分には、ドガの筆がはいってるそうだ。

Cassat BlueSofar.jpg

同じく、カサット:「浴女」1890年。版画。浮世絵のようだと思いませんか?
右: ロートレック:「アンバサドゥールの粋な人々」1893年。
ポスターが得意なロートレックは、速い筆さばきで、的確に人物を表現。
アンバサドゥールは、当時パリで評判のおしゃれなカフェ。男女とも正装で何の話を
してるのでしょう。

Casattebathings.jpg   Lautrec CafeAmbasadour.jpg

セザンヌ:「レヴェヌマンを読む画家の父」1866年。
銀行家として成功した威厳ある父親が、家でくつろぎながら新聞を読んでいる姿。
レヴェヌマンは、フランスの急進的な新聞なので、銀行家の父が読むはずがなく、
セザンヌの父へのかすかな抵抗を表している。

同じくセザンヌ:「水辺にて」1890年。
右: 薄塗りの水彩とも見える作品。ごつごつした山を描くセザンヌというイメージから
遠い作品。

Cezanne Lire journal.jpg     Cezannne Sea shore.jpg 

セザンヌ:「赤いチョッキの少年」1890年。 
少年特有のナイーヴな表情。背後のカーテンの波打ち方が抽象画への始まりを感じ
させ、面白い。チョッキの赤がアクセントになって印象に残る。

 Cezannne Veston Rouge.jpg

ゴッホ:「薔薇」1890年。
緑と白の色彩がさわやかで美しい。背景に白の風があるのが、まさにゴッホ。
風で落ちた薔薇、その瞬間をとらえてるかのようだ。

Gogh Rose Vert.jpg 

私は、この展覧会に2度、違う友達と行った。それぞれの友が、好きな作品が違い、
感想も違うのが、面白かった。

9月5日(月)まで開催中。(火曜日は休み)

☆ドガの絵もある、と書きながら、絵の紹介がないのですが、
「踊り子」の絵をイメージしたスイーツをチョコローズさんが、美術館内の
ティールームで召しあがった記事に絵の紹介も載っています。

この記事へのコメント

  • チョコローズ

    私は今日(…ってもう昨日?)行ってきました~
    絵は不得手なくせに、特別スイーツがあると知り、甘いもの狙いで。
    私でも素直に素敵だな~と思える絵がたくさんあって、行って良かったです。
    2011年08月21日 00:47
  • pistacci

    そぅだった、そぅだった、と思い出しながら記事を読みました。
    もう一回行きたいと思いつつ、夏が終わりそう。
    二回行かれたのですね。
    ほんとに見どころたくさんの素敵な展覧会でした。
    カサットの少女の絵が思っていたより大きかったのが印象的でしたが、
    子どものふとした仕種を捉えるのが上手なのでしょうか。
    最後のゴッホの絵がなんだか心に残って絵葉書買って来ました。
    ・・・と、Taekoさんに記事を促されていたのですがここでお茶を濁してます。(^_^;)
    2011年08月21日 01:58
  • バニラ

    ゴッホの白い薔薇の絵、初めて見ました。
    すごくいいですね。 さわやかなミントの風が吹き抜けるようです。
    2011年08月21日 08:29
  • 「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」2度行かれたんですか?
    本家にも行かれんですね。
    そうすると、この絵は向うで見た時は
    そして、今度は
    本家の薔薇ですね。穴が有ったら入りたいです。
    2011年08月21日 20:42
  • てんとうむし

    あぁ、やっぱり素敵ですね~♡
    今年の夏は行きたい展覧会が目白押しなのですが、暑すぎて都内に出かける元気がありませんでした。
    この雨でだいぶ涼しくなったので、来週行ってみます^^
    マネもモネもカサットもルノワールも楽しみなのですが、このゴッホの薔薇の背景のうねうねと花弁のもりもりを、ぜひ目の当たりにしてみたい!!
    2011年08月21日 21:42
  • ララアント

    こんばんは。
    Taekoさんの解説付きでそれぞれの絵画を見させていただき
    とても見やすく感じました。。
    大したことはやっていませんが それなりにサークルなど夏休みが
    終わりそうです。。
    水曜日 聖路加へ出向きますので その帰りに国立新美術館へ。
    路線検索して出かけてみます^^
    2011年08月21日 22:33
  • Inatimy

    リンクしてくださって、ありがとうございます♪ いい絵ですよね、カイユボットの。
    緑いっぱいの中を漕いで抜けるスキッフの絵、
    明るくって、水面に映った水色で空が晴れてるのも分かりますね~。
    コローの、ウナギを取ってる人は一人しかいないのに、“人々”ってタイトルついてるのって、
    なんだか他の人がサボってるみたいで可哀そうかも(笑)。
    「モネ夫人とその息子」の絵は、右のニワトリが気になるところ♪ 
    「アンバサドゥールの粋な人々」は、見どころ部分にだけ色がついてるのも、
    焦点が分かって面白いですね~。
    京都でも開催されるのに秋に一時帰国する予定もなく、観に行けず残念・・・。
    2011年08月22日 05:06
  • baby_pink

    私も先日伺いましたが、どれも優しく穏やかにそして
    時々、微笑ましく、またドキッ!とするような印象の画に
    出会ったり、とても充実した素敵な夏の事案を過ごす事が
    できました^^

    特に私は『モネ夫人とその息子』がとても印象的で
    とても強いオーラを感じました✿
    後、カサットの『青いひざかけ椅子の少女』が可愛くって
    ✿^^✿いつまでも、印象的に心に残っています。

    美術館へ行くと、心が清らかに、落ち着けるので
    大好きです。帰り際にはVOGUEcafeでシャンパーニュ
    いただいちゃいました^^
    2011年08月22日 08:02
  • TaekoLovesParis

    nice&コメントありがとうございます
    ▲チョコロさん、ちょうどお出かけになった日とは!
    しかも、特別スイーツのために^^(拍手)。だから、いつも記事がすばらしいです。
    私もあのパフェ、食べてみたかったです。。

    ▲pistaさん、<ここでお茶を濁してます>に笑ってというか、一本とられた感じ。
    国立新美に、六本木駅から行っていたときは、外を歩くので、夏に2度は、
    ありえなかったのですが、美術館直結の乃木坂駅を利用するようになってからは、
    近く感じます。カサットの青い肘掛椅子、、大きいし、青が鮮烈に目に飛び込んで
    きて、少女の表情が、あーだから、印象に残りますよね。
    最後のゴッホの薔薇、友達が「西洋美術館のゴッホの薔薇よりいい」って言って
    ました。清々しい色あいです。
    2011年08月22日 08:34
  • ララアント

    おはようございます!
    これから 渋谷へ出かける用がありますので
    その後 乃木坂へ行ってきます。。
    2011年08月22日 10:49
  • チョコローズ

    私のブログにもこちらの記事をリンクさせていただきますね。
    スイーツのために…じゃなければ行かないかも。
    あと、私も乃木坂の駅が直結って知らなくて、今回乃木坂を利用して
    あまりの便利さに感動!これならまた行けそうです。
    2011年08月22日 21:57
  • TaekoLovesParis

    nice&コメントありがとうございます。お返事逆順です。
    ▲チョコロさん、リンクありがとうございます。
    いつもチョコロさんの記事を参考にさせていただいてます。まだ行けてないのも
    あるけど、いつか!って思ってます。乃木坂駅から行く方法は便利ですよね。

    ▲ララアントさん、渋谷からは、表参道乗換えだけど、千代田線の乃木坂で降りて、、きっと満足なさったことと思います。
    サークル活動は、年齢を重ねるごとに楽しくなると聞いてます。趣味の友達は
    いいですよね。

    ▲pinkさん、ご覧になったんですね。全般に「穏やか」という言葉がぴったり、
    ですね。モネ夫人とその息子、やさしい、ふんわりとした空気が漂ってますね。
    白いドレスのせいかしら。この数年後に、モネ夫人が亡くなったと聞くと、絵へ
    のいとおしさが募りますね。
    美術館は、落ち着いて、非日常でいいですよね。さらに、帰りぎわのシャンパーニュ、すてきな締めくくりでしたね。

    ▲Inatimyさん、カイユボットのこの絵、贅沢でおしゃれな余暇の時間。
    好きなんです。Inatimyさんの記事に詳しく、兄の写真と弟の絵という絶妙コンビ
    の話が出ていたのを皆さんに読んでいただきたくて、リンクさせていただきました。
    いつも私が気付かないところに、ちゃんと気付くInatimyさん、たしかに~、
    ひとりしかいませんよね、見直したけど、邦題は、人々でした。実は、私も友達も
    洗濯してる、って思ったんですよ。
    「モネ夫人とその息子」のニワトリ、アクセントになってますね。
    アンバサドゥールの椅子が曲線でアールヌーボーしてますね。
    パリの秋は、きっと、魅力的な企画展があることでしょう。
    2011年08月23日 01:39
  • yuzukko

    わかりやすくて興味深い解説ありがとうございます^^この「青いひじかけ椅子の少女」、つい最近ジグソーパズルで作ったんです、といってもパソコンの中でですが。可愛い絵で大好きです。
    2011年08月23日 09:22
  • TaekoLovesParis

    nice&コメントありがとうございます。
    ▲バニラさん、ゴッホの白い薔薇、展覧会の展示の一番最後にありました。
    実際に見ると、もっと厚みがあって、立体的なんです。
    白は人の心を惹きつけるものがありますね。名和晃平の白の世界は、
    今まで見たことのない白の世界でよかったです。バニラさんのオススメは、
    一味違います。

    ▲匁さん、ワシントンの本家で見て覚えているのは、この中ではマネの「鉄道」
    だけなんです。だから、ゴッホの白い薔薇は、今回初めてです。
    本家の薔薇を目指してる匁さんの薔薇の絵、匁さんらしい誠実さが表れてましたよ。

    ▲てんちゃん、暑い日々が通り過ぎ、少しほっとしますね。
    ゴッホの薔薇は、緑色だけで、こんなに色調があって、それらが、バランスよく
    溶け込んでいる。だから、見飽きないです。

    ▲yuzukkoさん、「青いひじかけ椅子の少女」のジグソーパズルがあるんですか!
    椅子の部分が似た模様で、難しいでしょうね。
    2011年08月23日 21:48
  • りゅう

    とても見応えのある展覧会でしたね♪(^_^)
    カサットの「青いひじかけ椅子の少女」、大きな作品でビックリしました。
    それと同時に、かなり大胆な筆さばきにも。
    画集等で繊細なイメージがあっただけに、「えっ、こんなに大雑把で荒いの?」って。
    「浴女」、私も浮世絵を連想しました。
    カサットはモリゾを誘って一緒に浮世絵展を鑑賞しているんですよね。
    2011年08月25日 22:44
  • TaekoLovesParis

    りゅうさんも、この展覧会にいらしたんですよね。
    感想はのちほど、で、後ほどって、いつのこと?と自分で突っ込みいれて
    ました(笑)
    青い肘掛椅子、、は、実際に見ても青がきれいでしょ。
    大きな作品だけに印象に残りますね。
    カサットもいろいろなタイプの絵があって、時々、「えっ、これ、カサット?」と
    思うときがあります。研究熱心だったんでしょうね。
    個人的には子供をモデルにした作品にいいのが多いと思います。
    <カサットはモリゾを誘って一緒に浮世絵展を鑑賞しているんですよね。>
    → そうだったんですか。ドガの絵に、美術館で絵を見ているカサット姉妹の絵
    があったのは覚えてますが。。モリゾも浮世絵に関心があったんですね。
    2011年08月25日 23:26
  • にこちゃん

    Taekoさんお久しぶりですー
    モネの日傘の婦人、逆光がとても効果的に日差しの強さを表現してて
    すごく印象深い作品です。
    2011年08月26日 23:25
  • TaekoLovesParis

    にこちゃん、記事再開で、楽しく読ませていただきました。
    変種のコスモス、花弁がかわいい。初めて見ました。
    いつもきれいな手入れの行き届いたお庭で感心しています。
    さらにサイドバーのタルトやお魚料理がきれいで、おいしそうでした。

    日傘の婦人の逆光の扱い、こういう表現は、当時としては、センセーショナル
    だったでしょうねって、わかりますね。
    2011年08月27日 00:19
  • あやっぴぃ

    yやはりいい作品が揃っていますね♪
    私も昨日は久しぶりに美術館へ行ってきました(^-^)
    沖縄初の印象派展。
    2011年08月28日 07:39
  • TaekoLovesParis

    あやっぴいさん、おはよう。
    宮古島からお帰りになって、印象派展だったんですね。
    私は今年は海にも水族館にも行かなかったので、あやっぴいさんの
    海の写真で、ふんいきを味わってました。
    2011年08月28日 07:52
  • kao

    最近、美術館の前を通るとすごくたくさんの方が開館前からいらっしゃって、どなたの作品展なのかなぁ。。。って思っておりました。
    このようなすばらしい作品の数々だったのですね~。
    芸術の秋。。Taekoさんの記事で私も美術館へ行った気分です♪
    2011年08月28日 21:48
  • TaekoLovesParis

    kaoさん、美術館はMaaiくんのお散歩コースかもね。
    開館前から、そうなんですねー。展覧会は会期の終わりが混むんですよ。
    最近は夜が涼しくなってきたので、秋が近いなって感じます。
    2011年08月28日 22:34
  • hatsu

    スペインのTaekoさん、おはようございまーす^^
    『モネ夫人とその息子』、優しくて素敵ですね♪
    2011年09月03日 06:49
  • moz

    赤いチョッキの少年、見たかったんですよね・・・(>_<)
    確か、展覧会は明日まで・・・。今日は珍しく時間があるのですが、
    絵と話す心の余裕がありません。
    やはりある程度余裕がないと絵にも人にも会えないなぁ・・・。
    でも、TaekoLovesParis さんの記事を見せていただけて良かったです。
    雰囲気を十分感じられました(笑)
    スペインなんですね。
    ブログでのお話、期待してます。 ^^
    2011年09月04日 05:48

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