出光美術館で、開催されている「琳派芸術」展に行った。
梅の季節に合わせ、第一期で「光琳」の「紅白梅図屏風」、第二期で「抱一」の
「紅白梅図屏風」が展示されている。(第一期の記事は、こちら)
銀の世界
第二期は、「転生する美の世界」という御題。
江戸時代の中期以降、銀屏風が登場し、人気になった。
銀は、東洋絵画では古くから「月光」を表す素材であり、静かな輝きを持っている。
酒井抱一は、特に銀を好み、金地屏風の裏に、銀地に胡粉で光琳風の波を描く
試みをした。『波濤図屏風』(Fig.1)
尊敬する光琳の「風神雷神図屏風」の裏に、雷の雨に打たれた秋草を銀地屏風
に描いた「夏秋草図屏風」は、重要文化財で、国立博物館にある。
Fig.1
抱一の「銀好み」は、弟子の其一に受け継がれ、『秋草図屏風』がある。
銀地が、年月の経過で、黒く変色し、輝きはないが、当時は白い萩の花、朝顔の青
、葛の花の紫、緑の葉が浮き立っていたことだろう。右上には万葉集の山上憶良の
秋の歌の色紙が置かれている。ひとつひとつの花の写実がみごと。
今回の展覧会は、ほとんどが出光美術館の所蔵品だが、これは、千葉市美術館のもの。
『芒野図屏風』
銀地に、画面いっぱいのススキの野原。デザインされたかのような配置。
風に揺らいでいるものがあることや、色合いから、晩秋であるとわかる。
目玉は、もちろん、抱一の「紅白梅図屏風」 昨年と違って、明るい照明だったので、
紅梅が美しく見えたが、白梅の幽玄さは望めなかった。
銀作品の次は、「抱一の美」と題された抱一コーナー。
『八橋図屏風』(六曲一双)
左右並べて見ると、橋がつながって見え、さらに折った時は、橋のジグザグが立体的に見える
という見事に計算された構図。
この構図は、元々は、光琳が生み出したものだが、抱一は、花の形を清楚にし、根元を揃え、金の輝きが増すよう、絹本に金箔を貼り、金泥を塗っている。(高価ですね!)
抱一は、姫路城主、酒井雅楽頭家の次男。
「お金持ちだから、超高級品の画材を使っていた」と、抱一に詳しいyk2さんが教えて
くれた。絵の注文主も、徳川将軍家だったりしたそうだ。
これも金をふんだんに使った贅沢な屏風。絵も上質な絵の具なので色あせていない。
『12ヶ月花鳥図貼付屏風』 から3枚。(実際には12枚展示されている)
花もすばらしいが、鳥がかわいい。
抱一の弟子、鈴木其一のコーナー。
其一は、師匠ゆずりの描写力は言うに及ばず、さらに色彩と構図が明快。
今でも全く古さを感じさせない。
『野菜群虫図』
好きな絵。一番上にスズメ、その下がトンボ、蜂、シジミ蝶。
こんな菜園が実際にある? かわいらしい一コマ。
右下の葉が、病気で黄色くなっている写実は、伊藤若冲の影響、と解説にあった。
『四季花木図屏風』
豪華絢爛。紅白梅の根元には、牡丹。たんぽぽ。白いすみれ、かきつばた。
牡丹が中央で主役。ひときわ大きく咲いている。
工芸品もあった。
原羊遊斎の『草花蒔絵四方盆』 4枚。下絵を抱一が描くこともあった。
抱一が描いた下絵。左に「蓋」と書いてあるから、お椀の蓋の絵だろうか。
この記事へのコメント
roseadagio
よしあき・ギャラリー
ため息ものですね。眼が洗われます。
pistacci
ちょっとイメージが違うような気がしていたのでした。
今回は豪華な『四季花木図屏風』が印象に残りました。
『八橋図屏風』の金箔もすごいなぁって考えていたところだったので、なるほど後ろ楯があったとは。
やはり琳派は人気ありますね。平日でも混雑でした。
TaekoLovesParis
▲roseadagioさん、21日(祝日)まで、です。
出光は、お濠や皇居を見下ろしながら、飲める無料お茶があって、うれしい
サーヴィスです。
▲よしあきさん、この展覧会は、お宝揃いですものね。琳派ははっきりしていて、
わかりやすいので、好きです。
▲pistaさん、昨年もご覧になった「紅白梅図屏風」でしたね。展示場所が違う
から、照明が違うんだと思います。昨年の展示場所には、「八橋図屏風」が
ありました。
私も、遠くから見ても目立つ『四季花木図屏風』の色とりどりの豪華さに、
目を奪われましたよー。実際には、一双だから、もう一枚、秋の紅葉と草花
のがあるんですものね。
時間がなかったので、伊勢物語とか源氏物語絵巻は、あんまり見てないんです。
お殿様の絵より、花の方が良くて。実生活は、殿<花<食べ物(笑)
hatsu
自然て素晴らしいですね。
ぎーこ
どこかへ出かけたくなります。
匁
チョット手が届きません。
考え?いや、思いもつきません。
たぶん、展覧会場に入っても気分が舞いあがって落ち着くことができないと思います。
『芒野図屏風』が私にとってなんとか
ついて行けるかな?そんな感じです!渡良瀬遊水地でおなじみの風景ですから
Z型の構図今度試みて見たいです。
okayu
高級な画材を使っているから色あせない…
確かにとても美しいですよね。
私は小鳥好きなので、小鳥が一羽小さく描かれていたりすると、とても嬉しくなってしまいます。
aZU
coco030705
琳派、素敵ですね。
金も美しいのですが、私は銀が好きで、「秋草図屏風」はとても
すばらしいと思います。ただ銀が黒く変色しているのが残念です。
もし当時のままの色彩をみることができたら、どんなに美しいことでしょう。
Taekoさんのお好きな絵もいいですね。すずめや虫たちが、野菜に混じって
描かれているのが珍しいですね。
duke
やっぱり日本の芸術はいいな。
・・・・結構派手ですよね^^
TaekoLovesParis
▲hatsuさん、絵をみながら、知ってる虫を探すのが楽しいです。
ホタルに似た小さいのが、葉にとまってたんだけど、ホタルって緑色
じゃないわよね、なんてしばらく考えてました。
▲ぎーこさん、お疲れ様でした。
いつお邪魔しても「コメント欄は閉じております」だったので、お忙しいのね、
と思っていました。温かくなって、お花もきれいな季節になりますね。
春はうきうきする季節です。
▲匁さん、金ぴかは、目に良くないかもしれません(笑)。
『芒野図屏風』は、絵で見せていただいていた渡良瀬遊水地を思い出す
ものなんですね。白い部分が風の流れのようにも見えますね。
匁さんの制作のヒントになってうれしいです。
ルビー
銀屏風素敵ですねえ。シックというかモダンな感じがまた琳派なんですかしらん。
遅ればせながら、今週は名古屋で開催中ゴッホ展に行くつもりです。
TaekoLovesParis
▲okayuさん、鳩サブレというより、小鳥がお好きなんですね。
抱一の小鳥は、どれも上品でかわいいんですよ。見とれてしまいます。
やはり、高級な絵の具は、それだけの価値がありますね。
▲aZuさん、私は特に「芒野図屏風」の白の部分に惹かれました。
間のとりかたは、余白の美に通じるものがありますね。
てんとうむし
梅のお花見に行ったときも「琳派いきたいな~」って思ってました。
21日までなんですね、時間つくれるかしら。
TaekoLovesParis
▲cocoさん、今回、私も「銀」に惹かれました。制作時の輝きを想像すると、
ぞくっとします。妖しげな光かもしれません。和服の銀の帯も素敵ですね。
琳派は粋です。
「野菜群虫図」、今見ても、みずみずしい感性ですね。時代を超えてて、
感心します。
▲dukeちゃん、江戸琳派は、粋で派手です。伝統的な「やまと絵」に
反発してるから、ロック魂じゃない?派手なとこも共通してるでしょ。
▲ルビーさん、銀屏風は、大人の魅力です。落ち着いた輝きですもの。
当時は、とてもモダンで、見た人たちは、あっと驚いたのかもしれませんね。
ゴッホ展、名古屋なんですね。いい芸術品に出会うことは、ルビーさんの
制作のヒントになるでしょうね。
▲てんちゃん、良い展覧会でした。暗めの会場なので、照明効果がいきて
います。
Inatimy
切り取られた世界に趣があって素敵♪
『12ヶ月花鳥図』の右にあるのは、ヒマワリと朝顔かしら。
このヒマワリの葉っぱも傷んでるのかな。
最後の蓋の絵、CDやDVDみたいで今でも使えそう♪
baby_pink
インフルとちょこっと戦っていましたぁ^^:
でも もう元気復活、毎日甘いものおいしく頂いています✿
Taekoさんの優しい言葉とっても心癒されましたぁ^^
改めて・・・自然の偉大さ・・日本の四季の素晴らしさを実感
させられますね。。どれも落ち着きがあって魅力満載で
惹きつけられそうです。。。
chicory
抱一ファンとしては眼福です。着ものをあつらえたくなりました。
シェリー
これと似たような展示を見に行ったことあります^^
屏風は実物を見ると迫力ありますよね。
藤岡マサヤ
大井川鉄道は情緒があります。是非お出掛け下さい。そして、終着駅「千頭」からはトロッコで井川へどうぞ。南アルプスが招いてくれます。
TaekoLovesParis
▲Inatimyさん、実際の梅の木よりも、絵の中の梅の木のほうが枝ぶりが、
みごとなフォルムですよね。見とれてしまうこともしばしば。
<『12ヶ月花鳥図』の右にあるのは、ヒマワリと朝顔>→そう、代表的な夏の
花ですね。だから、7月か8月。ヒマワリの葉は、桜の幹と同じく、「たらしこみ」
という滲ませる墨絵の技法。「たらしこみ」は、宗達、抱一の桜や梅の木には、
いつも使われてます。私も、知らなかった時は、木の幹にこんな斑点が、、って
思ったんですよ。
蓋、思わず、「ん?CD」って、思っちゃいますよね。CDはお椀の蓋より身近。
TaekoLovesParis
▲Inatimyさん、実際の梅の木よりも、絵の中の梅の木のほうが枝ぶりが、
みごとなフォルムですよね。見とれてしまうこともしばしば。
<『12ヶ月花鳥図』の右にあるのは、ヒマワリと朝顔>→そう、代表的な夏の
花ですね。だから、7月か8月。ヒマワリの葉は、桜の幹と同じく、「たらしこみ」
という滲ませる墨絵の技法。「たらしこみ」は、宗達、抱一の桜や梅の木には、
いつも使われてます。私も、知らなかった時は、木の幹にこんな斑点が、、って
思ったんですよ。
蓋、思わず、「ん?CD」って、思っちゃいますよね。CDはお椀の蓋より身近。
▲baby-pinkさん、お元気になってよかったです。元気じゃないと、何もできない、
って、病気になると気付きますね。
12ヶ月図を見ると、花で、何月とわかる、って、日本は、四季の移ろいが、
はっきりしていて、いいなと改めて思います。自然を楽しみ、花を愛で、風流に
過ごしたいです、と言いながらも、まだ、花よりダンゴかも。。
▲chicoyさん、抱一ファンでいらしたんですね!別冊「太陽」酒井抱一という本
が写真がきれいで、解説も、まぁ、くわしくて、今、気に入ってます。
どんな柄のお着物がご希望ですか?桜の柄の着物は、私も持ってるけど、梅の柄
って、あまり見ないような。。杜若も粋でしょうね。
▲シェリーさん、門司にも出光美術館があることは、ずっと前のシェリーさんの
記事で知りました。北九州市立美術館がユニークな建物というのも紹介して
くださってましたね。いつか行きたいです。
▲藤岡マサヤさん、大井川鉄道は、魅力的ですね。TVでとりあげられてる
ことも多いです。トロッコ、こわそうだけど、体験したいです。
bee-15
moz
でも、銀の世界はあまり見たことありませんでした、屏風というと金ぴかのものばかり、銀色も、そうか、つきの色なんですね。なかなか、渋くて素敵です。
芒野図屏風もいいなぁ~。風の通り道みたいですね。
とても素敵な展覧会のようです。 ^^
今、かなり興味をひかれる展覧会が目白押しで、フェルメールの次はどっちに行こうか悩んでいます。
本当は、花粉がひどいので外に出たくないのですが、レンブラントもよさそうだし、シュルレアリスムも行きたい気がするし・・・(笑)
TaekoLovesParis
▲bee-15さん、「はじめまして」ではないですよ。「うちのキノコ」シリーズは、
前にも見せていただきました。bee-15さんのユニークなオリジナル記事、
がんばって続けてくださいね。
▲mozさん、私も、2008年の国立博物館の「大琳派展」で、初めて、抱一の
秋草図銀屏風を見たんです。でも、今回のようにいくつも銀地作品があると、
銀の静かで豪華な魅力がわかります。
たくさん見たい展覧会に、東慶寺も桜の花の季節、花粉症が少しでも軽くなる
といいですね。
aranjues
実際にみないとその魅力はわからないでしょうけど。
記事読んで一番感心したことは、yk2さんの博識さ。
芸術全般に精通されてるんですね。
TaekoLovesParis
きっと、さ、さっとお読みになることでしょう。さらに鑑賞という楽しみが
ありますね。私は、いつも、ひらがなの崩し方くらい覚えておきたい、と
思うのに、帰ると、忘れちゃって。。
日本画を見ていると、歴史を感じます。
yk2さんは、広く浅くではなく、抱一、其一、有元利夫に関して、ものすごく
お詳しいです。あ、青カバにもね(笑)
nagapenang
TaekoLovesParis
私の周りは、被害なしです。でも、揺れが長く続いて怖かったですね。
津波、原発、被害がこれ以上大きくならないことを祈ります。
aZU
見方を変えれば、アブストラクトの情感では・・・ってと思います。
りゅう
チラシのサンズイが梅になっているところとか、
細かいところへのこだわり、結構好きです♪(^_^)
Taekoさんもご無事でなりよりです。
テレビの壮絶な映像を見ているだけで、気が滅入ってしまいます。。。
こういうときこそ、ホッとできる場所、気分転換・息抜きの場が必要なんですよね。
(被災地域の方には申し訳ないのですが。。。)
観に行きたいのですがスギ花粉が酷いので、
展覧会は4月までおあずけになりそうです。。。
てんとうむし
TaekoLovesParis
地震のこと、この先、どうなるのかという不安があります。
今、積極的に何かできるわけではないので、心痛むばかりです。
私も、きょうは友達との約束を断って、家にいました。
昨日は、どうしても行かなければの用事があって、山の手線が動いてない
ので、タクシーに乗ったら、運転手さんが、「やぁ、昨日はまいりましたよ。
横浜まで行って帰ってくるのに7時間、かかったんですよ」って。
りゅうさんのお宅付近は、さっそく計画停電エリア?がんばりましょうね。
TaekoLovesParis