有元利夫展

 連日34度の猛暑の先週、N嬢と夕方、庭園美術館へ「有元利夫展」を見に行った。
展覧会を見終わった5時半。こんなに明るい夏の夕暮れの庭園。

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 建物の入口はこちら。展覧会のパネルが立てかけてある。

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 有元利夫は、1946年生まれ。生きていれば64歳だが、38歳で亡くなった。
だから作品数もそれほど多くない。

 有元は、東京芸大・デザイン科の学生時代にイタリア旅行で、ルネッサンス時代の
ピエロ・デラ・フランチェスカのフレスコ画と出会い、魅せられてしまう。フレスコ画と
日本の仏画に共通点を見出し、日本画で使う岩絵の具や金箔を使って、フレスコ画
ふうの独自の作品を試みた。 
[右斜め下]<参考>:ピエロ・デラ・フランチェスカの代表作「キリストの洗礼」

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 ピエロ・デラ・フランチェスカは、15世紀の画家だから、作品は宗教画と肖像画。
有元の絵の主題は人物。それも絵の中に人物が一人。単純化され、極端に頭の
小さいロングスカートの人物は、イラストっぽい感じ。デザインされた構図。

 有元は、バロック音楽が好きで、リコーダーを演奏し、簡単な作曲もした。
ヴィヴァルディの「四季」をイメージした、「春」「夏」「秋」「冬」の連作は、絵だけでなく、
銅板画にもしていた。「春」がどんな絵かは、こちらをご覧ください。

 絵のタイトルも「ガボット」「メヌエット」「ロンド」「カノン」「プレリュード」など、音楽を
イメージしたものが多い。下の左の絵「ささやかな時間」は、リコーダーを吹いている絵
だが、私が好きだったのは、「ソプラニーノ」。ソプラニーノリコーダーを吹く修道士の絵。
赤い背景で、修道士がかわいく、生き生きとしていた。
絵に描かれてるどの人物も落ち着いた温かみがあり、無心さがかわいい。


 

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 有元の絵は、静かなドラマ。聞こえてくるのは、単純なやさしいメロディ。
有元は「浮遊感」と表現していたが、ふわっとジャンプしたシーンに、シャガールの絵が
思い浮かぶ。シャガールの絵ほど高く飛んでないのは、現実逃避ではないから?
バロック音楽に合わせて、浮いてるから?白いドレスの人が、ふわっと浮いている
「花火」がそんな絵だった。
時々描かれる、空に浮かぶ雲の形は、マンテーニャの雲に似ていた。

 日中は暑いけれど、6時まで開館なので、夕方からの鑑賞は、おすすめ。
気楽にさくっと見れます。

 yk2さんの、「有元利夫展を観る前に知っていると面白いかもしれない幾つかの事柄」
という記事は、くわしく知りたい方には参考になります。


★庭園美術館の改装に伴い、表参道に移転しました。★

庭園美術館に付設して、有名な料亭「金田中」経営の和風カフェがある。
カウンターからは、地続きの美術館の緑豊かな庭園が見え、目が和む。爽快。
夜、庭園はライトアップされる。
暑い日だったので、まずは、緑のボトルのハートランドビール。
目の前の棚には、お茶碗がディスプレイされている。

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 頼んだものは、麩の味噌田楽(左)、
じゅんさいとナスの酢の物、白玉いり、じゃこと水菜のサラダ(右)
和のテイストで一つ一つがお盆にのって供された。
つくねの大葉巻きは、すでに焼いてあるので、小さな七輪であぶるだけ(下)

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 次は、ごはんを頼みましょうってことで、友達が、蒸し寿司。竹の器。
私は、牛網焼き丼。おいしいが量は少ない。

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 デザートは、友達がマンゴープリン(左) 私がわらびもち、黒蜜添え。

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 おしゃれなカフェで、おすすめ。美術館を利用しなくてもはいれます。

この記事へのコメント

  • よしあき・ギャラリー

    天才は生きている間にしっかり仕事をして逝くものなのですね。
    凡人で良かった。^^;
    2010年08月07日 19:38
  • angie17

    カフェにしては、ちゃんと和食ですね。
    さすが、金田中!
    2010年08月08日 00:32
  • yk2

    リンク入れて下さってありがとうございます~。
    でも、タイトルの最後は「事項」じゃなくって、「事柄」ね(^^。

    もっと金田中ばかりのお話だと思ってましたが、ちゃんと有元利夫展の記事じゃないですか。
    この席は通り側じゃなくって、庭園側ですね。目の前の景色が落ち着いた感じで好い雰囲気です。ハートランドのボトルもライトに照らされて綺麗。金田中のカフェだと、ビールでさえもエレガントに思えますね(笑)。
    2010年08月08日 00:52
  • TaekoLovesParis

    nice&コメントありがとうございます
    ▲よしあきさん、凡人もまたよし、ですか。よしあきさんはあまり凡人とは思えませんが。

    ▲angieさん、和風のカフェレストランなんですよ。通りに面した所は、テラス席に
    なっていますが、この日は暑くて、テラスはちょっと、、でした。蚊取線香が置いて
    あったから、蚊来る可能性あり。森のような木々のそばですものね。

    ▲yk2さん、まちがえましたね。なおしました。
    写真が金田中に集中してるから、本文はちゃんと書いたほうが、と心を入れ替えました。金田中にいらしたら、このカウンター席が一番いいですよ。
    緑のボトルが木々の緑によく映って、なかなかきれいでした。棚のお茶碗は目利きの店主が集めたものだそうです。
    2010年08月08日 01:21
  • baby_pink

    ふわっと浮いている絵、何とも可愛らしくやさしい雰囲気が好きです^^
    庭園に併設されているカフェにしては、とても立派ですね♪
    それに、庭園のお庭をゆっくり眺めながらの一品一品のお食事もまた
    品があって、美術鑑賞後、充実した時間が過ごせそうですね。
    2010年08月08日 06:02
  • ぶんじん

    おお、この美術展に行かれたんですね。私はどうしようかなと思っていたところ。やはり、なかなか魅力的な絵が多いなぁ。やっぱりいくか!
    2010年08月08日 08:41
  • TaekoLovesParis

    ぶんじんさん、ここはすいてるし、庭園も美しいですから、ぜひ、おでかけください。
    とはいえ、涼しい日がいいですね。
    2010年08月08日 08:46
  • TaekoLovesParis

    baby-pinkさん、「ふわっとやさしい」は、私にとって、pinkさんのイメージです。
    食事は、目で楽しめるし、上品でおいしかったのですが、ちょっと量が足りなかったです。
    2010年08月08日 08:49
  • 雛鳥

    画家の名前を聞いてもピンと来なかったのですが、絵を見て「ああ!」と。
    宮本輝の文庫本の装丁によく使われていましたね。
    宮本文学のどこか寂寞とした感じと、絵の静けさが妙にマッチして、
    どちらの世界観も同時に表しているなあと思っていました。
    庭園美術館は駅から少し歩くので、この暑さでは大変だったと思います。
    金田中のカフェ、ずっと行きたいと思っていましたが、やっぱりおいしそうですね~。
    器も凝っていて、おしゃれですね。
    2010年08月08日 13:27
  • katsura

    有元さんの絵は実際に見たことがないので、行ってみたいです。
    2010年08月08日 19:41
  • pistacci

    夕方の庭園はよいですね~。私は見に行ってもどんなふうにまとめていいのか、うまく記事にできませんでした。
    でも絵と建物が合っているような気がしました。
    帰りに同じく麩の味噌田楽を食べてきたので、うれしくなっちゃった。
    味はもちろんおいしかったけれど、この市松模様がおしゃれだなぁ、って蚊に刺されながら思ったのでした・・・。
    2010年08月08日 23:32
  • Inatimy

    北見隆さんの絵が好きだったので、どことなく同じ匂いのする、この有元さんの絵は、
    とっても魅力を感じます。
    音楽のタイトルがいいですね。
    灯りに照らされた緑のボトルが美しいです。 とってもいい写真♪
    牛網焼き丼でしっかり栄養補給、夏バテ知らずですね。
    この夏は酷暑のようですが、その暑さでもちゃんと肉食♪ 素晴らしい。
    私だったら蒸し寿司かなぁ・・・。
    2010年08月09日 05:09
  • てんとうむし

    有元利夫さんの装丁の絵は、書店でいつも気になっていました。
    庭園美術館は何度も行きそびれているので、今度こそ行かなくちゃ♡
    田楽とわらびもちが食べたいな~♪
    休みの予定と天気予報を照らし合わせて、紫外線の弱そうな日に決行です(笑)
    2010年08月09日 22:25
  • TaekoLovesParis

    nice&コメントありがとうございます
    ▲雛鳥さん、宮本輝の文庫本の装丁を思い出してくださるとは、読書家の雛鳥さんならでは、です。私が宮本輝を読んでいたのは80年代。その頃の本は、ハードカバーだったけど、有元さんだったのか、思い出せません。泥の河、蛍川のような初期の深刻な作品と、ドナウの旅人、花の降る午後のような軽い恋愛もの、外国が身近のしゃれた感じの作品とあまりにも違うので、<宮本文学のどこか寂寞とした感じ>
    が、どっちのことかわからず、、でも、恋愛ものといえど、寂しいから人を愛すって
    いうパターンがあるのかなと、考えてました。宮本文学には、ロマンがあるので、
    美しいものへの憧れがあるので、そして、静けさが底に流れてるので、それが、
    有元さんの絵に通じるかな、と思います。

    金田中、おすすめですよー。
    2010年08月09日 22:57
  • coco030705

    こんばんは。
    美しい美術館ですね。私も2度ほど行ったことがあります。大好きな美術館です。
    有本利夫の絵はとても不思議な雰囲気がします。洋画のようであり、日本画のようであり。それはTaekoさんが解説なさっているように、岩絵の具や金箔を使っているからなんですね。好きですね。

    このあと、お楽しみのグルメ記事が続くところが、Taekoさんのブログの魅力的なところです!
    カフェもいいですね~。今回は量が少なめでお上品な感じですね。お家に帰ったら、おなかがすいていそうな気が……。私だったら、パンか何か食べちゃうかもです。(笑)
    2010年08月10日 01:57
  • roseadagio

    有元利夫の絵、古くて新しく、魅入ってしまいました。「雲」はなにかに特徴的な形、とテレビで山田五郎氏が言及していたのを思い出しました。
    会期終了ももうすぐだから、急いでお出かけしなくては。金田中とセットで^^
    2010年08月10日 08:38
  • TaekoLovesParis

    nice&コメントありがとうございます
    ▲katsuraさん、ここ2,3日暑さも和らいでいますね。それぞれに音楽が聞こえて来そうな絵なので、katsuraさんにぴったりだと思います。

    ▲pistaさん、pistaさんは、ずっと前、小川美術館にもいらして、私よりも早くから有元作品をご存知だから、きっと、いろいろなことが頭に渦巻いてしまったのでしょう。鳥の声が聞こえる庭、宮殿ほどではなくてもバロック音楽にふさわしい建物、それらが、有元作品とマッチしていましたよね。
    お麩の味噌田楽の造形がおもしろい、碁盤のようと思いながら、眺めてました。
    蚊、やっぱり刺されちゃいましたか。

    ▲Inatimyさん、前にyk2さんへのコメントで、「北見隆さんの絵に似てる」って書いてらしたけど、私は、北見さんを知らなかったんです。イラストも好きな分野なんですけどね。で、yk2さんが、北見さんのサイトへのリンクをつけてらしたから、それを見たら、!、似てるって気付くなんて、Inatimyさん、すごーいって思いました。修道士をとりあげたり、宗教画のモチーフに近いものがあったり、有元さんのより、ストイックな感じがする人物ですね。
    緑のボトルの写真、ほめてくださってありがとう。
    Inatimyさんは、目からいっても蒸し寿司の選択でしょ。

    ▲てんちゃん、もう10年以上、私の中では忘れ去られた宮本輝でしたが、本屋さんで、目だってましたか。上で雛鳥さんへのコメントに書いたように、私は、読んでたけど、装丁は景色の絵だったと思うので、それが有元さんだったのか、わからないままでいます。文庫本になったとき、装丁が変わったのかしら。
    田楽とわらびもちのデュエットですね(笑)。紫外線の弱い日のほうが、蚊に食われなくていいと思います。
    2010年08月10日 08:57
  • aranjues

    有元利夫展については、私の言いたい事は皆さんコメントなさってますので、
    スルーして、後半に的を絞って(苦笑)。。
    金田中名前だっけしか知りませんが、その格の高さが十分想像できる
    カフェですね。料理もとても美味しそうで、私にはど真ん中的メニューです。
    つくねの大葉巻きを少しあぶってたべるなんて最高。
    其れよりこのハートランド、演出絶品ですね。もう少し、ビールが上に写ってたら
    文句ないところです(笑)。出来ればハートランドの画像のライブラリーに
    加えたいのですが、、、この画像、いただいてもいいですか?。
    2010年08月11日 03:11
  • TaekoLovesParis

    nice&コメントありがとうございます
    ▲金田中の本店は、一見さんお断りの格式の高い店です。渋谷のセルリアン東急
    ホテルには、普通にはいれるお店がありますが、友達が「あそこは、お高いから、
    やめましょ。一人4万円位するのよ。」と言ってました。aranjues財閥だったら、
    大丈夫と思いますが。
    写真は、よく見ると、ビールのグラスの下が切れてますね。こんなのでよかったら、
    どうぞお使いください。

    ▲RUKOさん、RUKOさんもお好きで、よかったです。
    2010年08月12日 00:55
  • りゅう

    マンゴープリン食べたい・・・
    2010年08月12日 02:23
  • hatsu

    静かなドラマ、本当にその通りですね^^
    心にすーっと沁みいる感じがします。

    遅くなりましたが、京都土産のお話です。
    いただいた『ええもん』は、
    GOKANというお店の抹茶のマドレーヌ。
    丹波の黒豆入りで、優しいお味でした♡
    2010年08月13日 06:17
  • TaekoLovesParis

    nice&コメントありがとうございます。
    ▲りゅうさん、夏はマンゴー、元気になりそうですね。りゅうさんちのアボガド、
    今年の生育状況はどうですか?

    ▲hatsuさん、有元さんの絵は、気軽に見れて、心和む感じでしょ。
    抹茶のマドレーヌ、丹波の黒豆入りとは、さらに、おいしそう。今月、もしかしたら、
    京都に行くので、GOKANね、覚えておきます。
    2010年08月13日 10:15

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