日本人には、なじみ深い印象派だが、外国の美術館に行くと、印象派は、ほんの
一部分なのだとわかる。グルベンキアン美術館でも、特別扱いを受けている絵画は、
前々回記事のルーベンスの「ヘレナ」と、18世紀ヴェネツィア画家グアルディ
(Francesco Guardi)の「主の昇天の祝日」。ここには、囲いがしてあり、紅白の
リボンをつけた特別コーナーになっていた。
ヴェネティアを描いて有名なカナレットより、幻想的で詩情に満ちている作風。
18世紀の絵
18世紀のイギリスの肖像画家ゲインズバラ(Thomas Gainsborough)は、
いつも貴族の女性を縦長の優雅な顔でファッショナブルに描く。
ドレスの絹や、ストールのオーガンジーの優美さを細かく再現。
想像で描いている背景の景色もドラマティック。これは等身大の大きな絵。
「Portrait of Mrs.Lowndes-Stone」
右は、この美術館のパンフにのってる絵。
モーリス・カンタン・ド・ラ・トゥール(Maurice-Quentin de La Tour) の
「Portrait of Duval de l'Epinoy」 <Inatimyさんにおしえていただきました>
19世紀の絵
19世紀イギリスの風景画家ターナー(William Turner 1775-1851)。
The shipwreck of the Minotaur(ミノタウルス号の難破)
難破船。高波。荒れ狂う海。自然の脅威。船から脱出し、ボートで逃げる人たちは、
無事生還できるのだろうか、と絵を見ながら考えてしまう。非常にドラマティック。
どの絵も写真は撮ったけど、題名を覚えてなくて。。
ターナーの生年を調べたら、そこに代表作のひとつとして「セーヌ河口のキルブッフ」。
この絵!上に同じく高い波の海の絵だが、大気や光を感じさせる独特な風景。
ターナーが、モネたち印象派に影響を与えたというのも、この絵を見ると納得がいく。
バルビゾン派のコロー(Camille Corot 1796-1875)
コローの絵は、たいてい右隅にCorotとサインがはいっている。
いかにも、バルビゾン派というフランスの牧草地の風景。
私の好きなファンタン・ラトゥール(Henri Fantin-Latour 1836-1904)
観察力に優れ、的確で鋭い描写。
人物画「Lesson」(左)は、モデルの女性が飽きないように本を読みきかせている絵。
静物画は、紫陽花の描写と果物のみずみずしさに見入ってしまう。
ルノアール(Renoir 1841-1919) 「Portrait of Mme.Claude Monet 1874」
ルノアールが描いたモネ夫人。モネ夫人カミーユは、モネが描いたものも何枚もある。
特にかわいいのは、日本の赤い着物を着た「ラ・ジャポネーズ」
これは、ルノワールの好きなアルジェリア趣味?の服。
モネの静物画は少ないが、これは、その中のひとつ。
Claude Monet(1840-1926) 「Still-Life」=静物画
マネ(Edouard Manet 1832-1883)
「しゃぼんだまを吹く少年」 有名な作品なので、売店でカードを売っていた。
前回ここで見た「さくらんぼを持つ少年」の表情が、かわいくて印象に残っているが、
今回は展示されていなかった。
カサット(Mary Cassatt 1844-1926)
パステル画 「The stocking 1891」 子供にストッキングをはかせてる母親。
カサットらしい親子の情愛。パステル画なので、ふんわりとしたやさしさが伝わってきた。
次は、エジプトの部屋。
「エジプトはもう、いいわー」と、いろいろな国へ行ったM子は言ったが、見るなり、
「こんな小さくて品のいいものばかり、上手に集めたわね。ここ、ほんと趣味いいわね」
最後は、ルネ・ラリックの部屋
グルベンキアンは、ルネ・ラリックを気に入り、50年間親交を深めた。
ラリックはグルベンキアンの古代オリエントやアジア、イスラームの美術品にインスパイア
され、次々新しい作品を生み出していった。
昨年、国立新美術館で開催された「ルネ・ラリック展」には、グルベンキアン美術館からの
作品がたくさん展示されていた。
トンボの頭が女神になっている。有名なオルセー美術館の「ケシの花のピン」と同じく、
繊細なつくり。見飽きない。いろいろな宝石が美しくキラキラ輝いていた。
ガラス器
彫刻も数は少ないけれど、美しいものがあった。
企画展「17世紀から18世紀の静物画」も見た。ヨーロッパならでは、の作品ばかりで、
なかなかよかったので、機会があったら、記事にします。
この記事へのコメント
pistacci
時期によるのでしょうが、ずいぶんイメージが違うのですね。
ポンッと飛行機に乗って、2~3日ここでのんびりと絵をみながら過ごしたいなぁ、
なんて、思いました。
Inatimy
「Portrait of Mrs.Lowndes-Stone(ラウンズ・ストーン夫人の肖像)」、
その右の青の背景のおじさまは、ローレンスではなく、
Maurice-Quentin de La Tour モーリス・カンタン・ド・ラ・トゥールの
「Portrait of Duval de l'Epinoy」(邦題分からず・・・)、
ターナーの難破船は「The shipwreck of the Minotaur(ミノタウルス号の難破)」・・・かな。
・・・調べないと、yk2さんからプレッシャーきそうで(笑)。
ターナーって、モネなど印象派の人に影響を与えた人なんですね~。
なるほど。
だからかな、こちらの本屋さんにターナーの画集が目立つ所によく置いてあるんですよね。
エジプトの部屋の右の写真は、ドアの取っ手にしたら、かわいいかも♪
ぶんじん
なるほど、日本人とはまた違った趣味をもっているんだな、とこれまた納得です。
てんとうむし
エジプトの部屋に限らず、すべてにわたって趣味のよいコレクションですね。
ルノワールの青いソファにもたれる女性、モネの静物画、カサットの親子、ラリックの青い彫刻、すごーく素敵♡
いつか私も行ってみたくなりました。
匁
は特に面白く拝見させていただきました。
工芸?作品?と言えるかどうかわかかりませんが
応用してみようと思います。
できるのを楽しみにしていてください。
現在 眼科 にて治療中のためここにお邪魔できるのも時々になるかと思いますが
ご容赦願います。
バニラ
今回はちゃんと入りますように。
ラトゥールの絵、わたしも好きです。
ラリックのトンボ、どうも昆虫系が苦手なので、目をそらしてしまう~…
yk2
観てない展覧会なんですが、お勉強用に買った2001年東京美術館開催の「アール・ヌーヴォー展」の図録がこのグルベンキアン蔵のラリックの胸元飾り『蜻蛉の精』のアップなんですよ~。確かに『罌粟の花のピン』に負けず劣らず、ですね。でも、罌粟のピンより遙かに着ける人を厳しく選びそうですねぇ(^^;。どんな人がどんなドレスで身に着けたら似合うんだろう。
名だたる大巨匠たちに混じって、カサットのパステルがあるのが、な~んか分けもなく嬉しかったりして^^。
ファンタン・ラトゥール、taekoさんのblogには随分久し振りの登場ですね。相も変わらず真面目で堅物そーな画風だこと(笑)。
TaekoLovesParis
さっそく、タイトルをいれました。写真を撮るときにタイトルも撮っておけばよかったと、
あとから気付きました。でも、絵を見てると、お料理の写真と同じく、写真撮るのを
忘れちゃうんです。
それにしても、Inatimyさんの検索能力はすごいです。感心しきり。
エジプトの右のでしょ、大昔から、こんなかわいい動物の顔の人形があったんですねー。ドアノブ、楽しいかもね。
TaekoLovesParis
▲バニラさん、コメントがはいらなかった理由は、わからないけど、ごめんなさいね。
前記事は、バニラさんが好きそうな家具だったから、コメントくださったんでしょ。
ファンタン・ラトゥールの絵では、肖像画はマジメな表情が好きなんです。静物では、花の描写が上手だから、「花のラトゥール」って呼ばれてるんですって。
トンボとかカエルは苦手な人、いますよね。
私がバニラさんの記事にコメントしなかったのは、はいらなかったんじゃなくて、
トマトだったから。みんなが、おいしそうって言ってるのに、水をさしちゃ悪いし~、
って、トマトラーメンの写真を見ながら逡巡してました。
▲匁さん、ずっと記事がお休みなので、お体の具合がよくないのかしらと思ってました。以前も目の治療の時がありましたね。お大事になさってくださいね。
トンボの頭が女神を匁さん流にどうアレンジなさるのか、楽しみにしてます。
TaekoLovesParis
仕事が忙しいと、現実逃避したくなりますねー。ポンと乗って、サッと美術館へ。
美術館自体が癒し空間。ところがね、この間、ミュシャ展を見に行ったんだけど、
そこは、ビルの5F。4Fが食堂街。においが上がってくる。それも私が嫌いなにおいで。。。ここまで電車に乗って、わざわざ来たんだし、、と、足早に見て帰りました。
グルベンキアンのぜいたくにさせてくれる雰囲気は、稀有なものかも。
TaekoLovesParis
▲ぶんじんさん、ターナーは男性に好まれる絵ってききました。なるほど~って
思います。迫力があって、自然が織り成すドラマを一枚の画面に封じ込めて、
感動しますね。
ヨーロッパの美術館は宗教画が多いのも特徴ですね。
▲てんちゃん、パリからはそんなに遠くないので、ぜひ。ポルトガルはゆったり旅に
おすすめです。空がきれいなので、写真にもいいと思います。てんちゃんだったら、ちょっとマニアックなすてきな場所を発見するかもねー。
いっぷく
ここのターナーコレクションを初めて見た時の印象は黄色系のもやもやした
ぼんやりと霞がかかったような渋い絵ばかりで、よくわからなかったのですが
そこにターナーの良さがあるんだと思うようになりました。
TaekoLovesParis
<何故かいなちゃんはヘンなトコ、、>→ 何故か、じゃなくて、ちゃんと理由ありでしょ。「Taekoさんはわからないところは、『Inatimyさん頼むーっ調べて!』って丸投げしてるって、前々の記事でコメントに書いたから、ですよ。 (って、ほんとは、調べてもらって助かったんだけどね。ちょっと言ってみた)
ラリックのトンボは、『蜻蛉の精』って名前なんですね。期せずしてyk2さんにも調べていただいて(笑)。胸元ピン、どんなドレスがいいんでしょう。トンボだから、夏に使う?
カサットは、yk2さん、記事を書いてらしたから、続きを書いてくださいと思い出してもらうためにのせました。この美術館の展示は時代順なので、印象派の油絵に混じってのパステル画で、和みます。「おやっ」と、足を止めて、ほっこり、顔がゆるみましたよー。
ファンタン・ラトゥールの人物画は、いつも<真面目で堅物そー>→ はい、私の憧れです。真逆はフランツ・ハルス。この人にだけは描いてもらいたくない。
ファンタン・ラトゥールの本がオルセーの売店で、バーゲンで5ユーロだったの。もちろん買ったけど、山と積んであったので、人気ないのかなぁって、心配しちゃいました。
TaekoLovesParis
3月にパリで、大がかりな「ターナー展」をやっていて、私もチケットを時間予約して
行きました。予約なしだと2時間待ちという人気ぶりでした。
ターナーは黄色~オレンジで夕日を描いてることが多いですね。7~8年前に
パリで見た「ターナーとモネ展」の「戦争」というタイトルの黄色の夕日を浴びて
負けたナポレオンが呆然としている絵が、とても印象に残ってます。
TARO
やはり海外の美術館は見応えがあっていいですね!
他のレポートも楽しみにしてます^^
coco030705
>外国の美術館に行くと、印象派は、ほんの一部分なのだとわかる。
そうなんですか!日本人は印象派が好きなんですね。
いい絵がたくさんありますね。ターナーが素敵です。ロンドンのテートギャラリーに
ターナーのコレクションがありますね?(ずいぶん昔のことなので、変わってるかしら。) コローもいいですね。そういえば、’08に東京で「コロー展」を見ました。すばらしかったです。
ルネ・ラリックのコレクションも美しいですね。このトンボのデザインのようなブローチを
母が持っていました。
素敵なレポートをありがとうございました。
あやっぴぃ
私は自宅にあった実術全集を見てた小さい頃からコローが好きでした。
嵐の海、ターナーと言えばこれですよね。
ターナーは、学生時代に「ぼっちゃん」を読んでいて、
何度も出てきたので、図鑑で探した思い出があります~^^
duke
夫人はキュートな方だったのかなー、と想像^^
マネの、少年は、なんかリアルですね。
静物画は、うちのモモが育ってるところなので(いまは見た目梅状態)
なんだかウキっとしました^^
ラリック、楽しみにしてましたー。
なぬっ!トンボの頭が女神・・ホントだーー。美しいけどちょっとこわい。
アールヌーボーってこういう所が面白い^^