ポンピドゥー・センターのキュビズム作品

  ここは20世紀の美術作品を展示しているので、「キュビズム」関連も多い。
キュビズムはピカソとブラック(GeorgeBlaque)が、考え出した。
ブラック作品2つ
(左):「ギターを持つ男」  (右):「果物鉢とカード」(邦題:クラブのエース)

pp7blaqueguitter.JPG  ppblaquecard.JPG

  スペインのホアン・グリス(JuanGris)の「ギターを持つアルルカン」1919年
ブラックの黒、白、茶という色合いと異なり、色彩の対比が印象的。
この色あいがスペイン的な気がする。
pp10JuanGris.JPG 

 
  同じくキュビズムに参加したフェルナン・レジェ(Fernand Leger)だが、
「機械と人間」をテーマにした独自の様式を確立する。
レジェは、第一次世界大戦に従軍。毒ガスを吸って入院したりもするが、
機械の威力、魅力にとらわれ、それをテーマにした絵を描いた。

「読書」 1924年
人間の形がロボットのよう。単純化された線。明るい色あいで楽しさがある。

ppLeger.JPG

これは大きな作品 「3つのコンポジション」1932年
左の3人の腕の形がロボットっぽい。右は機械の部品のように見えないこともない?

ppLeger2.JPG

 アントワーヌ・ペヴスネル(Antoine Pevsner)
ロシア生まれ、フランスで活躍したロシア構成主義(幾何学的形態に重きをおく)の彫刻家。
キュビズムの彫刻版。線、面で構成する均整のとれた造形。
ここは人気で、写真を撮る人が大勢いた。

(左):空間のコンストラクション 
(右):マスク 1923年 軽いプラスティック製。上部は透き通る素材。
ライトアップされていた。

ppPevsnet.JPG pppevsner.JPG


 これもキュビズム。ピカソ「朝の調べL'Aubade」 1942年
横たわるオダリスクと座るギター弾き。
第二次大戦中の占領下で描かれた悲劇的な風刺作品。かなり大きい絵。
戦時下の食糧難でオダリスクの豊かな髪は失われ、体が膨張。魚のようだ。
暗い色の壁と床は閉ざされた空間を表している。「戦争画は描かなかった」とピカソは
言ったが、この絵は戦争の危険さと暴力性、恐怖を想起させる。
ギター弾きが気持ち悪い形なのが気になった。

pppicassopoison.JPG

 最後は、シュールな1枚。
Victor Brauner 「ヒットラー」1934年
頭に傘をさし、顔中に釘を打たれているヒットラー。
Victor Brauner は、ルーマニア生まれのユダヤ人。パリで活躍した。
ユダヤ人なので、ナチに対する感情は想像に余りある。
弾丸がおなかを貫通しているのにびくともしない肥満度300%のはだかのおじさんの絵
もあった。

ppBrauner.JPG 

この記事へのコメント

  • ララアント

    " キュビズム "って 初めて目にした言葉ですが
    全体を通して ほんの少しだけ 解りました。
    2009年02月18日 11:27
  • TaekoLovesParis

    ララアントさん、説明不足でごめんなさい。キュビズムは、cube(立方体)からその名前がつきました。元の絵を解体して四角形で構成させる、単純化ですね、さらにそれを抽象化したものという概念です。
    実物そっくりに描くリアリズムや印象派から派生した点描画とは違う、とわかると、見る興味もわくかと思います。
    キュビズムは絵画の世界におけるひとつの試みですね。
    2009年02月18日 20:23
  • てんとうむし

    ペヴスナーの彫刻は、私も写真撮りたくなると思います。
    しっかし、ピカソはやっぱり自由ですね~寝ているのが魚で、座ってる方が女性に見えちゃうもの(笑)
    ヒトラーは前衛芸術を弾圧したそうだから・・・・クレーも≪ベルリンのまぬけ≫という風刺画のような絵を描いていました。
    2009年02月18日 22:12
  • yk2

    この中で観たことあるのは『ギターを持つアルルカン』くらいかなぁ。
    国立新美術館の開館記念がポンピドゥ所蔵作品の“異邦人たちのパリ”展で、その時観た気がします。このブラックの『ギターを持つ男』も展示されてたような気もするけど、ごちゃごちゃし過ぎて描かれている絵が記憶出来てません(苦笑)。

    レジェの絵はおっとりした(?)独特のムードがあって、いつ観ても、何がどうと云う分けでもないのに、何となく愉快な気分にさせられるんですが、この『3つのコンポジション』にはよく分からないけど不穏なムードが漂ってますね。画面右側は何を意図して描かれてるんだろう?。
    2009年02月18日 22:34
  • TaekoLovesParis

    てんちゃん、ヘヴスナーの作品って、私は初めて見たんだけど、撮影ラッシュだから有名なんだなぁって思ったの。
    ピカソ、ギターを持ってすわってるのが、イカさんに見えて(笑)
    クレーも退廃芸術って弾圧されたんでしたね。クレー展、行く予定なので、≪ベルリンのまぬけ≫見てきますね。
    2009年02月19日 01:07
  • TaekoLovesParis

    yk2さん、レジェいわく、「この作品のタイトル『コンポジション』の意味は、たくさんの要素から構成されるハーモニー。
    父、母、子の左側3人部分と、右側の部分はコントラストをなしている。右側部分は幾何学的集合体で、2本の柱は、はしごのような形(H型)。ブランクーシと同じくアフリカの原始美術の影響で柱はトーテムポールで、2本の柱の上方部についてる四角はマスク。上に行くほど細くなる左柱と下にいくほど細くなる右柱が対照。青に白い水玉があるリボン状は空。だから水玉は雲。
    2本の柱にコードが絡まっている。コードは左側、子供の頭のターバンとコントラスト。左の柱の中間にある白、赤、緑の小さな3つの円は、左側、人間の3つの乳房の円とコントラスト。
    右側部分は、レジェがニューヨークで見た絶え間なくコントラストが続く建物、白、緑、赤は信号機のイメージ。
    以上、ポンピドーのサイトで調べました。(ハイ、勉強になりました。)
    2009年02月19日 01:50
  • TaekoLovesParis

    yk2さん、追加:不穏なムード漂うのは、水玉雲の空のせい?実は最初、建物を壊す悪魔のように見えたので。。
    あとね、この背景色の黄色はロシアのイコンの金色なのだそう。
    アフリカにニューヨークにロシアにって、ほんと、いろいろ散りばめた作品ですね。
    2009年02月19日 02:18
  • やまがたん

    美術には疎いため、大変勉強になります
    2009年02月19日 06:58
  • おはようございます。
    これ全てがポンピドーセンターの収蔵品ですか?!
    さすがパリですね凄いですね。
    この中ではピカソ「魚・寝る女」が一番明解で解りやすく面白いですね。

    昔、私自身もキュービズムに感銘して模写で何点か描きました。しかし、キュービズムの生まれた背景などをよく理解せずに描いたものですから直ぐに止めてしまった思い出があります。
    2009年02月19日 07:53
  • duke

    面白くて楽しいです。どこがどうなってるのか、いつもじーーっと見ちゃうんですよね~・・・。レジェは割と好き。単純なので、わかりやすくて平和なものがどうも好きらしいです。
    社会派の絵画は、意義があると思うけど部屋に飾れないです(当たり前か・・^^)
    2009年02月20日 00:53
  • TaekoLovesParis

    nice&コメントありがとうございます
    ▲やまがたんさん、絵に興味をもっていただいてうれしいです。

    ▲匁さん、ポンピドーセンターは西洋美術館の常設の8倍の広さはあります。所蔵品が多いので、目当てのものが見れないときもしばしば。
    匁さんがキュビズムふうの絵をお描きになったこともあったとは!
    今の流麗な画風からは想像できません。

    ▲dukeちゃん、そ、私も分析したくなる派。レジェの単純明快さは、
    フランス人よりもアメリカ人に好まれるんだそうです。
    部屋に飾るのは、落ち着いたものがいいですね。マリリン・マンソンも
    NGですけど(笑)
    2009年02月20日 01:26
  • Inatimy

    クローラーミュラー・ミュージアムにもピカソやブラックがあるのですが、双方似ていて、「あ、ピカソ♪・・・ブラックか。」「今度はブラックだ・・・あれ?ピカソ・・・。」と混同。 見分け難しいです。
    2009年02月20日 07:56
  • katsura

    やはり恨みがつのると釘を打ちたくなるのは、古今東西同じなのでしょうか。
    2009年02月20日 10:50
  • TaekoLovesParis

    Inatimyさん、今、もう一度、クローラーミュラー・ミュージアム記事を見てきました。いい絵がたくさんありますね~。
    キュビズム時代のピカソとブラックは、色あいも似ているので、みわけがつかないほどですよね。
    2009年02月21日 01:50
  • TaekoLovesParis

    katsuraさん、このコメントを読んで、渋沢龍彦を思い出しました。
    2009年02月21日 01:55
  • Zunko

    ポンピドーは、外から見ると立体駐車場みたいで(大げさかな・笑)。。と言うより、私が近代美術に余り馴染んでいないので、他の美術館を優先してしまい、今まで一度も足を踏み入れていないのです。。。こうして中を見られて感動。ピカソとか置いてあったのですね。知りませんでした。前回の2008年春のも見させて戴きました♪ 屋上(と呼ぶのだろうか)、外の景色が見晴らしの良い、カフェをなかなかお洒落ですね。。今度足を踏み入れてみようと思います。
    2009年02月21日 16:32
  • TaekoLovesParis

    Zunkoさん、私の友達にも、建物の形が嫌いだから入ろうと思わなかった、という人がいます。立体駐車場ね、たしかに~。味気ない長方形であの外エスカレーターじゃ、そうかも。
    カフェは有名店の経営で、ちょっと高いけど、お料理もセンスがよくて、
    おすすめ。ひとり旅の友達にすすめて、いつも好評です。
    ウォーホールなどのアメリカンポップアートやステラ、デ・クーニング、ポラックなどのアブストラクト(抽象画)もあります。
    2009年02月21日 23:12
  • いっぷく

    レジェは色彩がいいし、おもちゃに通じるような単純化された形が大胆でいい。、鑑賞者側の好き嫌いもはっきり出そうな画家ですね。
    2009年02月23日 15:49
  • TaekoLovesParis

    いっぷくさん、レジェの描く人間の腕がロボットのアームっぽく思えます。そんな点もおもちゃに通じるんでしょうね。
    デザインが好きな人は、レジェが好きな気がします。
    2009年02月23日 22:51

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