ルーヴル美術館(19世紀フランス絵画)

 絵は何色の壁面に、どの絵のそばに置くかで、だいぶ印象が変わる。
ルーヴルは、ドイツ絵画を少ししか持っていないので、
デューラーの若い時代の自画像は、自慢の品。 空間を多くとって特別扱い。
壁面もおちついた青緑。
                   鮮明なデューラーの自画像はここをご覧ください

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 いつも気になる絵 「海辺にすわる裸の少年」 作者はHippolite Flandrin
高い位置にかけてある。ここの壁面はピンク。右端のドアの枠はブルー。
下の位置には、シャセリオーの絵。
中央:アンドロメダ  右:王との謁見のために化粧をするエステル

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 同じシャセリオーでも、初期の作品「海のヴィーナス」は、アングルの作品と並んで
こんなパステルカラーの壁面に。下:アング「トルコ風呂」

ChasseriauVinus.JPG 

Ingrer.JPG 

  テオドール・シャセリオー(1819~1856)は、フランスの植民地ドミニカ生まれ。
両親とともにパリに戻り、11歳でアングルに弟子入り。とても可愛がられていたのだが、
アングルが政府の命令でローマに数年滞在している間に、ドラクロワに傾倒してしまった。
当時、ドラクロワとアングルは色彩の使い方で相容れず、画壇もドラクロワ派、
アングル派と分かれていたほど。

  ドラクロワ「モロッコの婚礼」
フランス政府の外交使節に随行する記録画家としてモロッコを訪問した時の作品。
多くの色合いを使って、人物をひきたたせるのがドラクロワの手法。
ドラマティックであるが、アングルの絵の優雅さはない。

DercroixMorroco.JPG

  ドラクロワ「狂えるメディア」
夫イアーソンの浮気を知ったメディアが怒って、イアーソンとの子供2人を
殺そうとする場面。 この絵を初めて見たのは中学生の時、夫が心変わりを
したからと夫を殺す話はあるけれど、子供を殺すなんて、、と衝撃的だった。
ライトアップされ、さらに迫力があった。

DercroixMedia.JPG

  シャセリオが、アングル+ドラクロワの手法で描いたのが、上から2番目の写真、下段右。
「王との謁見のために化粧をするエステル」
アングルふうのエステルの体の美しさをひきたたせているのが、背後のドラクロワ的色彩。

ChasseriauEstelS.JPG

シャセリオーは、私の好きなシャヴァンヌに大きな影響を与えた画家。

★このあたりのことは、yk2さんが、くわしく記事になさっています。

[台風] [台風] [台風]    

 アングル、コローの絵は、オルセー美術館にもある。
人物画はあまり多くないコローだが、このモデル「エマ」をとても気に入っていた。
しかし、エマはこの時、死の間際、程なくして亡くなった。
「泉に立つギリシア風衣装の少女」

Corot.JPG

 今回は全部、人物画だったので、最後に風景画を。
ミレーとほぼ同時代、バルビゾン派のテオドール・ルソーの「フォンテンブローの樫の木」

ThedoreRusseau.JPG


  ルーヴルから出たのは6時。外はもう、こんなに暗くなっていた。

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 [右斜め下] 凱旋門、その横に青く見えるのは、ライトアップされたエッフェル塔。

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この記事へのコメント

  • いっぷく

    絵画の展示における壁面の色は美術館側でも、そうとう研究しているのでしょうね、壁面の色を思い出せないほどの名わき役でいて欲しいですね。それと額も鑑賞の価値ありですね。
    2009年02月11日 10:12
  • yk2

    リンク、ありがとうございます。
    シャヴァンヌとシャセリオーの影響関係に興味の有る僕は、今回の記事で初めて見た『海のヴィーナス』に目が釘付け!になってます。シャヴァンヌの『海辺の娘たち』は、この絵のポーズをさせたモデルを真後ろから見て着想した様にも思えますね。それもシャセリオーの初期作品なので当然アングルの影響下にある頃だし。

    僕はたった3時間くらいしかルーヴルに居られなかったし、青いカバ探しに多くの時間を割いてしまった(笑)から、絵はあまり多く観られませんでした。ですから、この辺をまさにピンポイントで取り上げて下さるtaekoさんにはホント感謝です。
    2009年02月11日 11:03
  • またまたルーブル紹介していただいてありがとう。
    壁面の色も工夫されているんですね。絵の背景の色とライトの当て方も難しいです。毎回blogをUPするときに困っています。同系統の色か補色の淡い色をだいたい採用しています。今まで満足したことはなく、とりあえずの感じです。
    今回は人物画のそれも動きが有る絵が多く好きです。
    「海辺にすわる裸の少年」と「王との謁見のために化粧をするエステル」
    は雑誌のコマーシャル写真でこのポーズを見かけた事あります。
    何気なく見ていますが、こんなところからヒントを得て制作しているんですね。
    また描いてみたいです。
    2009年02月11日 13:00
  • 好(ハオ)くん

    ライトアップされたピラミッドは幻想的で素敵ですね。
    美術館巡りに行きたいのですが、仏語が苦手だとリベンジParis行きがどんどん遠くなります。
    2009年02月11日 20:03
  • 範子29

    Taekoさま

    いつもブログを見ていただき、誠にありがとうございます。
    実は、2月いっぱいをもちましてブログを休止することになりました。
    最近はあまりコメントも書かず、申し訳ありませんでした。
    どうぞお元気でお過ごしください。m(--)m
    Taekoさんの記事で自分の味わえない夢のような世界をのぞくことができ、とても楽しかったし、勉強にもなりました。
    ありがとうございました。
    2009年02月11日 20:16
  • katsura

    デューラー、好きです。あの硬質さがたまりません。
    2009年02月11日 20:30
  • TaekoLovesParis

    nice&コメントありがとうございます
    ▲いっぷくさん、そうですね、壁の色だけでなく、壁紙の質感、そして額縁と、美術館の担当のかたは展示にご苦労なさるのでしょうね。絵だけでなく、そういう周辺のことも併せても見ると、さらにおもしろさが広がりますね。

    ▲yk2さん、たしかに!「海のヴィーナス」を回転させると、「海辺の娘たち」の人に近づきますね。この青の色あいと聖なる静けさがシャバンヌと共通していると思いました。アングルの「トルコ風呂」だと、私は話し声が聞こえてきそうな感じがして。。(横向きの彼女は別ね)

    ルーヴルのように広い美術館だと、どうしても見残しができちゃいますね。青カバのエジプトコーナー2階とフランス絵画3階は近いかどうか?

    シャセリオー→シャバンヌに関しては、yk2さんの記事があったから、
    タテルヨシノ記事に同じく、「2番手はらくです」(苦笑)

    ▲匁さん、<絵の背景の色とライトの当て方も難しいです>
    →なるほど~、絵をお描きになる匁さんならではのご苦労ですね。
    私はモディリアーニ展に行ったとき、人物そのものの描き方は年代的に変わっていないのに背景色が変わるのがおもしろいな、と思って見ていました。始めは暗い色が多いのにだんだん明るくなっていく、服の色との濃淡だったり、目の色と合わせたり。
    匁さんの作品づくり、いつもいろいろなアプローチがあって楽しいです。

    ドラクロワの「アルジェの女たち」は、写真がうまく撮れていなかったので、「モロッコの婚礼」にしてしまいました。

    ▲好くん、英語が得意な好くんだから、よけいフランス語圏はもどかしく感じられるのでしょう。そういえば絵の名前がフランス語で書いてありますね。
    2009年02月11日 21:42
  • TaekoLovesParis

    範子ちゃん、とっても素直でかわいい範子ちゃんとブログでおつきあいさせていただいて楽しかったです。かよりんに続き、範子ちゃんもお休みで寂しいけれど、お元気でお過ごしくださいね。
    川崎大師やもっふるパーティなど、かよりんとふたりのをあわせて読むのがとっても面白かったです。私とは年の差のある範子ちゃんやかよりんの生活が身近に感じ、仕事の上でも役に立ちました。こちらこそ、ありがとう。
    2009年02月11日 21:50
  • てんとうむし

    アングルは好きな画家なので、横浜でルーブル展が開催された際に「トルコ風呂」目当てに行きましたが、想像していたより小さな作品だったので驚きました。
    「王との謁見のために化粧をするエステル」もステキですね♡
    "アングルふうのエステルの体の美しさをひきたたせているのが、背後のドラクロワ的色彩"に納得です^^
    ぜひ実物を観てみたいな~♡
    「狂えるメディア」は・・・・こわい(--;
    2009年02月11日 22:11
  • TaekoLovesParis

    てんちゃん、横浜美での「トルコ風呂」、話題でしたね。
    エステルはその美貌でペルシア王の寵愛を受けていたの。この日、きれいにお化粧をして、王に謁見し、自分がユダヤ人であることを告白し、ユダヤ人解放を願い出、きいてもらえたという聖書の話をもとにした絵。だから、エステルの表情は、大仕事への決意を秘めてきりっとしているって、私には思える。お化粧を手伝う侍女たちが白人でないから、よけい、エステルの白さがひきたっていると思う。
    トルコ風呂より小さいけど、いい作品です。
    狂えるメディア、、怖いよね。
    2009年02月11日 22:50
  • ララアント

    コメントが入らず こんな時間になってしまいました。
    "鮮明なデューラーの自画像はここをご覧下さい"で
    2007年の6~8月を楽しんできました。
    その中に 伊豆高原での「池田20世紀美術館」のことが・・・
    伊豆高原には友人が居るので 過去によく行っていたのですが
    ここは知りませんでした。
    それと 若かりし頃の会社の取引先が日本瀝青で それにも
    驚いています。
    次回 伊豆高原を訪ねて時は 是非に行ってみたいと
    思っています。
    2009年02月11日 23:17
  • TaekoLovesParis

    ララアントさん、過去記事を読んでいただき、それぞれにniceをありがとうございます。
    伊豆高原によくいらっしゃっていたのですか。私もよく行きました。
    「花吹雪」、懐石など、お料理のおいしい店、ララアントさんもきっと
    ご存知ですよね。
    一碧湖のすぐそばが、「池田20世紀美術館」です。日本瀝青とご縁があったのでしたら、きっと、昔のことなど思い出しながら、普通の人
    以上に楽しめると思います。
    2009年02月12日 00:58
  • Inatimy

    「トルコ風呂」って、こういう額に入っていたんですねぇ。
    なんだか、壁の穴からのぞき見してる気分です♪
    2009年02月12日 07:22
  • mwainfo

    ご訪問、ナイスコメント有難うございます。
    2009年02月12日 16:02
  • Luna

    ご訪問、ありがとうございました^^。
    私も、数年前にルーブル美術館に足を運んだことがありますが...。
    新鮮な気がします^^;。ステキですね♪。
    2009年02月12日 16:06
  • duke

    こんにちは!さすが、Taekoさん奥がふか~いですね^^狂えるメディア、激しいですね。
    日が暮れるの、早かったですね。だんだん昔になってきて、さみしいです。
    2009年02月12日 16:27
  • berry

    壁に色があるんですね。パステルカラーとは!? 驚きました。
    ライトアップも工夫されているのかぁ〜。
    絵の手法のことはよくわからないけど、絵の物語は楽しいですね。
    「狂えるメディア」は衝撃的です。
    2009年02月13日 10:00
  • TaekoLovesParis

    nice&コメントありがとうございます
    ▲Inatimyさん、お見通しでいらっしゃいますね~。
    この絵は、「よき時代のハーレムを」と当時権力のあった公爵からの依頼。アングルは英国夫人のトルコ紀行に「下品さはなく、大勢が憩う場所。」とあったのにインスピレーションを受け、各自がゆったりと裸で過ごすトルコ風呂を描いたんです。ところが完成作品を見て、公爵夫人が、「下品な作品」とお怒り。そこで円く切り取って、裸婦の印象を和らげたのだそうです。
    たしかに円いと、のぞき見感覚がありますね(笑)

    ▲mwainfoさん、こちらこそ~、です。

    ▲Lunaさん、ルーヴル美術館は日本にない規模なので、印象に残りますね。

    ▲dukeちゃん、私もどんどん忘れちゃうので、今、あわてて記事にしています。珍しく写真を撮ったっていうのもあって。
    中学のとき、鬼のような人を形容するのに、「メディア~!」って、はやったんですよ。

    ▲berryさん、インテリアをなおして、なおして、何百年も使っているんですよね。昔は宮殿だから、絵はなくて、花柄の壁紙だったかも、、って
    想像したりしています。
    私は、背景にある物語を知ると、その絵にいっそう興味がわくんですよ。
    2009年02月13日 22:17
  • yk2

    >公爵夫人が、「下品な作品」とお怒り

    あはは、アングルの絵を切っちゃうんだからすごいですよね(^^;。

    でもこの注文主さん、これくらいではあんまり懲りなかったみたいですね。クールベの“あの絵”もこの方のオーダーだそうですから(笑)。
    2009年02月13日 23:53
  • TaekoLovesParis

    yk2さん、そうだったんですか。注文されたのではなく、研究熱心なクールベィが自発的に描いた絵かと思っていました。
    2009年02月14日 01:03
  • Zunko

    ルーブルの夜の姿、凱旋門とその向こうに見えるエッフェル塔の夜景、綺麗に取れていますね。エッフェル塔が青くなっているのは初めて見ました。それにしてもTaekoさんの芸術を楽しまれる横幅の広さに、奥の深さ、さすがです。。私などは、好きな絵に偏りがあるので。なかなか知識が広がらないです。ここでご紹介された絵で、知ってるのは、ドラクロワくらい。。ドイツはてんで駄目ですし。今度、ルーブルに行ったら、少しは知ってる絵が増えそうで嬉しい♪
    2009年02月14日 15:35
  • miku

    コローの「エマ」、死の間際だと思うと、
    儚げな姿に見えます。
    「狂えるメディア」は恐ろしい〜
    2009年02月14日 16:21
  • TaekoLovesParis

    Zunkoさん、エッフェル塔は、昨夏、フランスがEU理事会議長国になったのを記念して青くなっているんです。期間限定とのことなので、いつまで続くのかはわからないけど、きれいです。
    <今度、ルーブルに行ったら、少しは知ってる絵が増えそうで嬉しい♪ >→こんなふうにおっしゃっていただけるのが、一番うれしいです。
    東京は、海外の美術館との提携企画展覧会が多いので、それらに足を運ぶうちに知っている絵がふえてくるんです。昔は招待券をいただくことが多かったので。
    2009年02月15日 01:49
  • TaekoLovesParis

    mikuさん、そう、私もコローのこの絵の解説を読んで(ルーヴルには日本語の解説プレートが置いてあるんです)、はかなげなようすに打たれました。衣装も白でさみしそうですよね。
    2009年02月15日 01:52

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