まだ暑かった夏の水曜日、「フェルメール展」に行った。
9時半に着いたのだが、もうすでに列が出来ていて、20分くらい待って入った。
「水曜日は65歳以上無料」なので、特に午前中、混むそうだ。
会場内も、いつもと違う人の流れだったが、美術愛好家がふえるのはいいことでしょう。
まずは、宗教画から。
「マルタとマリアの家のキリスト」 かなり大きい絵。
キリストが家にいらしてくださった時、マリアはイエス・キリストの話に熱心に耳を傾け、
マルタは料理をしてもてなしたという聖書の話に基づいて描かれている。
「パンいかがですか?」と差し出すマルタの表情は、「おいしいと言ってもらえるかしら」
と不安げ。
フェルメールが画家としてスタートした頃は、宗教画が絵の本道だったが、
市民社会の成熟と共に、日常生活を描いた風俗画に人気がでてきた。
「ヴァージナルを弾く少女」という小品は、少女がヴァージナル(ピアノのような楽器)を
弾く手を止めて、こちらを向いたところ。少女のほほえみが何か語りかけてきそうな雰囲気。
この絵は、個人蔵で、本物かどうかはっきりしていなかったのが、最近の科学的鑑定技術
で審議の結果、本物と認定されたという。
前記事「フェルメールを見るなら」へのコメントで、いっぷくさんが
<「20世紀最大の贋作事件」と副題のついた「私はフェルメール」という本は
興味があればお勧めです。> と書いてくださった。そのときは本屋さんに
なかったのだが、最近、見つけたので読んでみた。以下に少しご紹介。
第二次大戦が終わった後、連合軍は、ナチによって戦時中に略奪されたものを
元に戻す作業をしていた。ドイツのヒットラーに次ぐ実力者、ゲーリング元帥の館から
国宝級のフェルメールの宗教画が数枚発見された、との連絡がオランダにはいった。
それらは、フェルメール作品の目録にないが、ロッテルダムのボイマンス美術館に
展示されている「エマオの食事」と驚くほどの類似点があるので、フェルメール作に
まちがいない絵と認定された。ボイスマン美術館が、「エマオの食事」(下の写真)を
莫大な金額で購入したのは、オランダでは有名な話だったから。
発見された絵の入手経路を調べると、ファン・メーヘレンという画商が浮かび上がり、
国宝級の絵を敵国に売却した罪で逮捕された。
監獄で6週間を過ごしたファン・メーヘレンは、「あの絵は私が描いた贋作です」と告白した。
さらに「『エマオの食事』も私が描きました」と言った。
しかし、売国奴としての罪を逃れるための嘘に違いないと、信じてもらえず、結局、
皆の見ている前で絵を描いてみせることで、ファン・メーヘレン作品と認定され、
「贋作罪」での処罰になった。
ファン・メーヘレンは、フェルメールの色をまねるため絵の具を研究し、肌の影の
部分、皿の輝き、ワイングラスの光沢、飛び散る光の粒などの表現をまねた。
「エマオの食事」は、6ヶ月間、アトリエに引きこもって作成したカラバッジョ構図の
フェルメール手法のメーヘレンの作品なのだった。
本には、もっといろいろな謎解きがあって、おもしろかった。
☆フェルメール展に関しては、りゅうさんの記事がすばらしいです。
写真もクリックすると大きくなるので、充実度200%
この記事へのコメント
pace
前回のホテルはメトロポリタン・オペラハウスからだったら
歩いて帰りましょうよ(笑)
匁
こんなスリラー小説みたいな話もあるんですか?!
そんなことを知った上で見るとああこの絵がそうなんだ。
と面白くなります。
混んでいてやっと入れても頭越しに観るような状態と聞いているので
まだ行っていません。
この本読んでから観てみます。
昨夜,GIANTSは難さが目立ちましたね。BayStarsの選手のリラックスぶりと比較すると対象的でした。今日は胴上げがあるか?それとも明日に持ち越しか?またまた大切な一戦になりそうです。
楽しみにシテイマス。
TaekoLovesParis
▲paceさん、10年後のpaceさんは、アウトドア+アートの旅で、マフラーなびかせてバイクで「欧州フェルメールの旅」をなさっていらっしゃる気がします。行く先々でちゃんと珈琲を味わいながら。
▲匁さん、この話には美術評論家もからんできて、なるほど~と思う点もたくさんありました。フェルメールは使っている色数が少ないから、マネしやすいんだそうです。
昨日は、ちょっとG軍もお疲れでしたね。
クライマックスシリーズ、劇的にならないでほしいです。
aranjues
フェルメールを好きだという女性はよく知っておりますが、
フェメールは名前だけ知ってるだけです(^_^;)。
贋作の登場が大家の証明のようなものですね。
にこちゃん
真似ているうちに自分の境地が開く。。。
開かないまんまの贋作で一生を終えちゃった人も沢山居られるんでしょうねぇ。
しかし、フェルメールの光の世界って、魅力的。
翠川与志木
ターナー、印象派までの光、空気の捉え方が
時代を超え同じ線上に感じられましたね。
ムーミン
なかったとがっかりしてました。
考えてみると、有名な絵しかしらなくて・・・。
こうやって教えてもらうと、なるほどって思う事が多いですね。
TARO
ミーハーって事でしょうか^^;
そんなにも人を魅了してしまう絵画って、一体どういう存在なのだろうって
答えの無い事を考えたりします。
TaekoLovesParis
原監督、東海大相模時代から好きなので、ことのほかうれしいです。
じっと忍耐で、若手を育てたのが実って、監督冥利に尽きるでしょうね。
TaekoLovesParis
▲aranjuesさん、フェルメールは絵がわかりやすいことと、作品が少ないから騒がれるんですよ。ピカソなんてすごーーく作品が多いから、
ピカソの全作品を見る旅、なんてありえないですものね。
<贋作の登場が大家の証明のようなものですね。>
→そのとおりですね!
▲にこちゃん、いつもにこちゃんは、含蓄あるコメントで、専門に勉強した人はチガウ!って感心しています。
「まねて覚える」という言葉がありましたね。偉大な研究も前人の達した所まで追いかけて理解して、その先を創りだしていくわけですものね。
<フェルメールの光の世界って、魅力的。 >
→ほんと、同感!
▲翠川与志木さま、詩的なメッセージ、ありがとうございます。
技法が脈々と伝わっていくのでしょうか。
光と空気の捉え方で、絵の輝きが変わってきますね。
TaekoLovesParis
▲ムーミンさん、映画「真珠の耳飾りの少女」のもとになった「青いターバンの女」は、フェルメールの代表作。オランダのマウリッツハイス美術館にあるけれど、2000年の「フェルメール展」のとき、日本に来ました。
知ってる絵が多くなると、絵画鑑賞が楽しくなりますよ。
▲TAROさん、<絵画にまつわるお話をって面白い、と、思うのは
ミーハーって事でしょうか>
→ 描かれた状況やその他いろいろ、をわかって絵を見ると、急に
親しみがわいたり、、そういうことありませんか?親しみのある絵が
たくさんあると、無言のおともだちがたくさんいるようなもんで、心豊かになる気がするんですよ~。
うふ、答えのないこと、考えるの、TAROさんの得意技?だから、TARO
さん、おもしろいんだけど、ね。
TaekoLovesParis
ありがとうございます。
duke
いっぷく
ファン・メーヘレンは贋作のために画布も古い当時のものを探してきてその上に描くなど、徹底しているんですよね。
犯罪ではあるんですが彼にに惹かれる部分がありました。
私もたまに模写をするんですが、描き手の気持ちに少しだけ近づけるような気もします。
匁
セントラルリーグ制覇おめでとうございます。
勝負はここからですね。振り返れば昨年もここまでは来たんですね。
ラミネス、グライシンガー、クルーンはそのための補強ですから。
どんな戦いになるか、楽しみにシテイマス。
coco030705
おもしろいお話ですね。フェルメールの贋作を描いた画家は、
技術の才能はあるけど、創造性がなかったということなんですね。
でもよくできた贋作って、なかなかわかりにくいそうですね。
この本、ちょっと興味を持ちました。
pistacci
私も平日閉館前一時間でしたが、混んでました。
追記で、Taekoさんの記事をリンクさせていただきました~よろしくお願いします。_(._.)_
かよりん
見応えありましたね。
「私はフェルメール」Taekoさんが分かりやすく要約して下さっていたので理解しやすく、大変興味深かったです。
こんなエピソードを知っているとまた絵の見方も変わってきますね。
TaekoLovesParis
▲dukeさん、映画「レンブラント」(夜警でなく昔のぶん)とか、モディリアーニの「モンパルナスの灯」、ロートレックの「葡萄酒色の人生」など、画家の伝記映画もおもしろいです。でも、今、公開中の「宮廷画家ゴヤは見た」は、ゴヤが肖像画を描いた神父の異端審問にまつわる話みたいなので、見ようかどうしようか迷っています。
▲いっぷくさん、薦めていただいて、とってもよかったです。
<画布も古い当時のものを探してきてその上に描く>
→ そう、だから、「X線写真を撮ってみれば、下にはこういう構図の絵があるはず」と言うんですよね。キャンバスに古い色を出して、さらに亀裂を走らせて、、、そういう作業もうまくいくと恍惚感があるんでしょうね。模写で、作家に近づく体験をなさったいっぷくさんは、この本を私よりも、もっと深く理解なさったことでしょう。
TaekoLovesParis
今年は違いますよ。まだ燃えています!
<ラミネス、グライシンガー、クルーン>、、
昨年のリーグの最多勝投手と押さえの切り札、ヤクルトから2人も、、ちょっとやりすぎ、って感もありましたが、結局、活躍してくれましたね。
私は、山口鉄也を応援しています。
阪神は充電中といったところでしょうか。爆発したら恐いチームですが。。
hideKING666
一点一点にいろいろなエピソードがあるんですね。
勉強になります!
Inatimy
これだけの絵が描けるのは、
ある意味才能があるってことですよね・・・。
TaekoLovesParis
▲Cocoさん、著者はジャ-ナリストなので、報道記事のようにテンポも速く問題解決型ですすみます。絵描きという人はたくさんいるけれど、生計をたてられる人はそう多くないから、やっぱり、メーヘレンもお金に目がくらみ、転向してしまうんですね。「皆気づかない」っていう優越感もあったようです。ちょっとわかる気しますけど、ね。
▲pistaさん、リンクつけてくださってありがとう。
閉館前でも混んでいたんですね。。。
フェルメールの若い頃は、まだ絵=宗教画の時代だったんですね。
だから、フェルメールも宗教画から描き始めるけれど、オランダは、
ハプスブルグ家の支配から独立し、カソリックから離れプロテスタントに改宗。プロテスタントは教会に絵を飾らないし、王侯貴族の力も弱まったので、宗教画の需要が急激に減って、代わりに、裕福な市民が絵を注文しはじめたので、風景画や日常生活の絵が主流になっていくんです。絵描きは注文があってこそ、ですものね。
私だって、「エマオ、、」が並んでいたら、だまされちゃいます。
美術館に飾ってあればホンモノと思う思考回路なので。
▲かよりん、もうご覧になったんですね。コローとどっちがよかった?
って比べるのが無理かも。
コローも贋作が多いってきいていますが、ホンモノでも力を抜いて描いたようなのもあるし、、どれもが傑作なわけじゃないから、う~ん、難しいですね。昨日、おいしいバウムクーヘンを食べたので次回、ご紹介しますね。
TaekoLovesParis
▲hideKINGさん、ほめていただいてありがとうございます。
私もブログをはじめてから、絵をていねいに見るようになったんですよ。
そうしたら、もっとおもしろくなりました。
▲Inatimyさん、才能があるのに報われない、評論家から認めてもらえない、お金もはいらない、絵の具も買わなくちゃいけない、、こういう要素がかさなりあって、恵まれた才能も違うほうに使われてしまうんですね。修復師という仕事はその頃、なかったんでしょうか。
市民社会が台頭して、経済的にも豊かで、アジアに植民地を持ったオランダの栄光の名残がInatimyさんのブログの写真から、時々、じかに伝わってきます。
てんとうむし
「ヴァージナルを弾く少女」は贋作という鑑定がくつがえり、国宝級といわれていた「エマオの食事」は贋作だったんですね。
ファン・メーヘレンは才能と努力の方向性を間違えてしまった哀しい秀才のようですが、すっぱり断罪できないような複雑な気持ち。
「私はフェルメール」読んでみようかな。
yk2
ルノワールが若かった頃、夏にはいつもフォンテーヌブローに家を借りて絵を描いていたそうです。そこで彼が描いていたのは、バルビゾン派の大家テオドール・ルソー風の絵。多い日には1日に8枚もそんな絵を描いていたそうなのですが、一緒に住んでいた友人ディアッツ・デ・ラ・ペーニャと云う人物がそれを売り捌いていたんだそうな。で、それらの絵の多くは、その後、なんと本物のルソーの作品として通って売買されてしまっていたそうで、この世にはルノワールが描いたルソーが相当数存在するかも知れないんですって。こんなルソーの贋作だったら、むしろ喜ぶ持ち主が居るくらいかも(?)。
りゅう
おぉ~先を越されちゃいましたね~(=^^=) ニョホホホ
フェルメール展の鑑賞前と鑑賞後にこの本を読み、記事作成中でした。
フェルメールが住んでいた家の名前もメーヘレン。
本人が贋作と認めているにもかかわらず、批評家が保身のために本物だと言い張っていたり、とても興味深い内容で面白かったです。
やはり、アノの作品はオークション会社が頑張って「改善」しちゃったというところでしょうか。オークションの際の注意書きが露骨に物語っているように感じました。ヾ( ̄ー ̄)ゞ
berry
絵画のことをよくわからなくても読みたくなりますね。
そ〜ゆうことだったのですね。
もっといろいろな謎解きがある、と言われたら、
ますます興味深々。
TaekoLovesParis
▲てんちゃん、「ヴァージナルを弾く少女」は、2004年にフェルメール作品としてザザビーズで2700万ドルで落札された時は、贋物説があったんですよね。本物と鑑定されたのは最近と書いてありましたね。小さい作品だから、金色の縁取りの大きい額にはいって目立たせてあったのが印象的でした。
▲yk2さん、オハナシありがとう。興味深く読みました。でも、テオドール・ルソーの絵が思い浮かばなくて、ネットで調べました。後のルノーアル自身の絵とは、ぱっと見、共通点がみられないけれど、筆使いなどに学ぶ点が多かったのでしょうね。私もルノアール作のルソーを見てみたいです、って、特定されてなくて謎なんですよね。
▲りゅうさん、りゅうさんもこの本をお買いになったことは、読んだけれど、記事作成中だったんですか。。ニョホホ に ゴメン とアヤマル
でも、私が先でよかったです。だって、りゅうさんの緻密で正確な記事を読んだら、私は記事を出せないですよ。
私の文章力では、記事で多くを語れなかったのですが、評論家という存在の大きさが本を読んでいるとわかりますね。あと、おもしろいと思ったのは、息子が「エマオ、、」を見たときの感想。
アノ作品のこと、数年で急に鑑定技術がすすんだということでしょ、ちょいムリがありますよね。落札価格が価格ですからね。
▲berryさん、推理小説の感じで読める本です。贋作って、誰にも、家族にも、見つからないように描かなくちゃという制約があって大変なんだ、って本を読んでわかりました。
TaekoLovesParis
mikosukeさん、そらまめさん、範子ちゃん、Rebeccaさん、xml-xslさん、
Krauseさん、niceをありがとうございました。
yamagatn
とっても羨ましいであります
これだけの絵画が集まることって
そうそうないことなんですよね・・・・・
芸術って素晴らしいと思います!
時がいかほどたとうとも、人々に感動を
与え続ける事が出来るのですから・・・・・
TaekoLovesParis
私は、いつか山形に文翔館(旧山形県庁)の建物を見に行きたいと思ってるんですよ。新幹線の新車両も走るようになるし。
<時がいかほどたとうとも、人々に感動を与え続ける>
フェルメールは、400年近く前に生まれたのですから、すごいですね。
katsura
バニラ
国立博物館の琳派展の方も観たいんだけど、
二つは疲れそう~
TaekoLovesParis
TaekoLovesParis
miku
今回は気合い入れてウィークデイに9時半ころ入館しました
比較的楽に観ることができて大満足でした
TaekoLovesParis
人々の頭越しに絵を見るのと、ちゃんと向き合って見るのでは、見たあとの印象がだいぶ違いますもの。
りんこう
この何年かは毎年のようにフェルメールがやってきますね。
来年も来るようですし。
日本にいるだけで30数点全部観られるかもしれませんね。
そりゃないか…。
TaekoLovesParis
たしかにフェルメール人気はすごいですね。
今までは、昨年の国立新美での「牛乳を注ぐ女」のように1枚の作品で集客をしていたわけですから、今回のようにたくさんのフェルメール作品を見れるのは、またとないチャンスですね。
過去10年間に何作品、来日したんでしょう?
美術館の絵画貸し出しビジネスも、今回の為替相場の変動であおりを受けているところがあるとか。保険料が莫大なようです。