渋谷の東急Bunkamuraミュージアムへ、「ミレイ展」を見に行った。
この展覧会は、ロンドンの「テート・ブリテン」、アムステルダムの「ゴッホ美術館」で開催されたものの巡回展。
ミレイは、英国ヴィクトリア朝を代表する画家で、Sirの称号を得ている。
ミレイの代表作は、シェークスピアのハムレットに題材をとった「オフィーリア」。
気ちがいを装った恋人のハムレットに「尼寺へ行け!」と言われ絶望。さらに父まで殺され、
気が狂ったオフェーリアは、川辺に咲いている花を摘もうとし、足を滑らせ、川に落ち、
水死してしまう。
「オフェーリア」を題材にした絵は多いが、これほど美しいのは、少ない。
手に花をもち、自らの意思で沈んでいくような、恍惚の表情。
花はあとから、書き添えられた。
ミレイの絵は、美しく、女性好みなのか、観客の8割が女性だった。
展覧会は、絵が描かれた年代順に展示されていて、わかりやすい。
ミレイは、早くから天才振りを発揮、11歳でロイヤルアカデミー付属美術学校に入学。
最初に展示されていたのは、10歳の時の石膏デッサン。陰影が見事。
これは、20歳の作品。「両親の家のキリスト」
大工仕事を手伝っていたキリストが、指に釘を刺し、血がでたところ。
「大丈夫、痛くないわよ」とマリアが慰めている。血を洗う水鉢を持っているのはヨハネ。
21歳の作品「マリアナ」。シェークスピアの「尺には尺を」という作品からヒントを得て
テニスンが書いた詩の主人公マリアナ。
モザイクがきれいに描かれた窓からの光が右下の足元をはっきり照らしている。
床に落ち葉があっても気づかないのは、マリアナが婚約者にふられ、深い絶望にいるからとのこと。
ミレイは、評論家のジョン・ラスキンと親しくしていて、一緒にスコットランドに行った。
その途中、ラスキンの妻エフィーを描いた水彩。「エフィー・ラスキン」
エフィーはアンティークレースの収集家だったので、服やヴェールのレースがみごと。
後に、エフィーは、ミレイの妻となった。(!)
長女が初めて教会へ行ったときの様子。「初めての説教」。いじらしいほどの緊張ぶりが伝わってくる。
この作品が人気だったので、続編として描かれた、「2度目の説教」(右)。2度目になると、こっくり、こっくり。
探検家「Sirウォルター・ローリーの少年時代」
船乗りが語る冒険話を夢中になってきいている。モデルはミレイの2人の息子。
パリ万博で金賞をとった作品、「姉妹」。モデルはミレイの3人の娘。
これもレースの質感がすばらしい。
若い頃のミレイの作品は、あまり大きくないが、後年は巨匠レンブラント、
ベラスケス、ティツァーノに自らを重ね合わせ、大きな絵を描くようになる。
「ハントリー公爵夫人」 かなり大きな絵。
同じ英国の肖像画家ゲインズバラを思わせる作品だが、顔と背景にミレイらしさがある。
「ベラスケスの思い出」
遠くから見て、「え?ベラスケス?」と思ってしまうほどの作品。
ミレイは、これを描く前に、ルーブルで、ベラスケスの「マルガリータ」を見ていたので、
英国人の女の子をモデルに、スペイン風の衣装を着せ、髪型もマルガリータふうで、
オレンジを手に持たせた。
英国のロイヤル・アカデミーがベラスケスの「女官たち」を購入していたので、べラスケス
の画風を研究、作品を仕上げ、ロイヤル・アカデミーのディプロマとして提出した。
最後には、ミレイの好きなスコットランドの風景画も展示してあった。
見ごたえのある展覧会だった。ミレイだけの展覧会というのは、本国英国でも少ないそうだ。
もっと読む ↓
てんとうむしさんのとっても詳しい記事があります。写真もたくさん見れます。
この記事へのコメント
み〜ちゃん
大好きです♪ 10月に行く予定なんです♪♪
美しい絵が多いので,大好きな画家の1人です。
文学や物語に絵の題材をとっているところも好きなんです。
(ラファエル前派大好き!)
「ベラスケスの思い出」という絵は知りませんでした。
ベラスケスの「マルガリータ王女」の絵もとても好きなので,
「ベラスケスの思い出」,見るのがすごく楽しみな絵になりました!
miku
Taekoさんの記事で予習できて大助かり
「初めての説教」、かわいい〜
TaekoLovesParis
▲みっちゃん、10月にご上京なんですね。
よく練られた展覧会で、駄作がないので、結構、見るのに時間が
かかりました。「マルガリータ王女」がお好きだったら、きっと、遠くから
この絵を見つけて、はっとなさいますよ。英国人とスペイン人の顔立ちの違いもわかりますね。
▲mikuさん、「初めての説教」と、「2度目の説教」が並んで展示されているので、よけい、おもしろいです。かわいいだけでなく、なにか崇高さを感じますね。
いっぷく
「両親の家のキリスト」の絵で少年が何をいれて持っているのかなにもわからなかったのですが、血を洗う水鉢を持っているヨハネだったんですね。また鑑賞が楽しみになります。
TaekoLovesParis
いつだったか私が、ミレイを好きだと書いたら、いっぷくさんがコメントで、「テート美術館でたくさん見れますよ」って答えてくださったのを覚えています。いつか、必ず!
水で洗礼をするヨハネなので、水鉢を持っているのでしょう。展覧会では、この絵の下地のデッサンも展示してあったのですが、そこでのヨハネはただ立っているだけでした。
この絵は当時、不評だったのに、ラスキンがかばってくれたので、ラスキンと親しくなったそうです。
coco030705
「オフィーリア」だけは見ました。本当に美しい絵ですね。
だれか「ハムレット」を映像化して、この絵を映像で再現してくれないかなと思います。
他の絵もすばらしいですね。関西に巡回したらぜひ見に行きたいです。
範子29
とてもわたし好みです。
匁
明後日からいよいよ G-T 3連戦ですね。3ゲーム差となり後ろに火がついてきました。見逃せない今シーズン一番の最後の?天王山ですね。楽しみです。
duke
yk2
僕もオフィーリアは以前に観ているのですが、その時は画家の作風よりも描かれているテーマと水草の緑の鮮やかさばかりに気が行ってしまって、ミレイの名前さえ覚えて来ませんでした。ま、図録も買わないとそんなモンなんですね、僕は(^^;。
てんとうむし
ミレイ展素敵でしたよねぇ・・・♡
(ため息)
この絵のほとんどはテートに帰るんだ、と思うと、私も「いつ必ず!再会」と思いました。
pistacci
BunkamuraのHPを見ていたら、来年、トレチャコフ美術館の「忘れえぬ女」(見知らぬ女、と、なっていました)が、来ますね♪
TARO
他の画家の絵が無い展示は珍しいですよね。
ゆっくり楽しめそうです。
TaekoLovesParis
▲Cocoさん、「テートギャラリー展」があったんですか。
私はこの絵、写真では見ていたけれど、実物を見るのは初めてでした。
だから、思っていたより、大きかったです。ルーブル美術館に、ドラクロワの「死せるオフェーリア」があって、これがあまり大きくないので、勝手に同じような大きさかと思っていました。オフェーリアを描いた作品は多いので、ヨーロッパの美術館で時々見かけます。でも映像になるとしたら、やはり、このオフェーリアですね。
ハムレットは、大げさなせりふが学生時代には抵抗を感じる部分もあったのですが、今では、Cocoさんが長唄に挽かれるように、私も含蓄のある言葉と受け取れます。やはり、シェークスピアは偉大。
▲範子ちゃん、ロマンチックが好きな範子ちゃんの好みだと思いますよ。
▲匁さん、<模写に挑戦>、きっと、匁さんの心に響くものがあったのでしょうね。<浮いているような沈んでいるような、眠っているような寝ているような>→まさにそのとおりなんですよね。少しづつ腰から沈んでいくさまが巧みに描かれていると思います。
いよいよ明日から天王山。最近のジャイアンツは勢いづいていますからね。勝ってほしいです。イチロー8年連続200本、軽く達成しましたね。
昨日は松坂も17勝。やはり日本人選手の活躍はうれしいですね。
TaekoLovesParis
▲dukeさん、美しい絵がたくさんあって、おすすめですよ。オフィーリアは、そんなに小さい絵ではないから、人だかりがしていてもよく見えます。子供の絵や肖像画の人物を見ていると、フランス人と英国人は顔立ちが違うって、わかります。
▲yk2さん、<オトコとしては行くべき展覧会かどうか・・・って悩むトコですね>
→大いに悩んでください(笑)
琳派とこの展覧会、両極にありますね。
私は、写真でしか見たことのなかった「オフェーリア」ですが、背景の
左上方の木の描き方が見事で、そちらにばかり目がいってしまいました。絵とはいえ、死にそうな顔をじっと眺めるのは辛いですから。
▲てんちゃん、私は、図録を買わなかったので、てんちゃんの記事で
復習をさせていただきました。こういう裏話があったのね、と感心しながら読みました。特にエフィーに関すること。なんだか図録代、得した気分よ。てんちゃんは、選んでいる絵が私と違うので、おもしろいなぁって思いました。だから、リンクをつけさせてくださいね。
TaekoLovesParis
▲pistaさん、私も展覧会場で「今後の予定」のパンフをもらって、「忘れえぬ女」の絵の写真を見て、「ペルジーノpistaくん!」って思いましたよ。「見知らぬ女」より「忘れえぬ女」の方がぴったりですよね。
「見知らぬ女」って冷たい言い方の気がします。
クラムスコイとレーピンの横に「美術界のチャイコフスキー、ラフマニノフ」って書いてあったのが、いい得て妙かな、でした。
▲TAROさん、ご登場の時間が遅かったけど、昨日は私も起きてたんですよ~。この展覧会、おすすめ。たぶん、渋谷ならTAROさんの行動範囲では?
てんとうむし
リンク有難うございました。
なんだか、こそばゆく、とても嬉しいです。
Taekoさんの選ばれた絵は、どれも私も載せたくて、うーん・・・と悩んだものばかりなのですが、Taekoさんの好みが、より洗練されていて、私はファンシーなものが好きなんだなぁと感じたりもして(笑)
エフィーはミレイの運命の女性だったようですね。
ラスキンという論客を敵にまわしてしまったことでミレイには不利なこともあったようですが、8人の愛らしい子どもにも恵まれ、幸福な結婚生活だったようですね。
Inatimy
あれ?こんな絵、あったっけ・・・と図録を読み返してみたり。
それにしても、観客の8割が女性とはビックリ。 ゴッホミュージアムでは、男性も多かったですよ。 yk2さん、がんばってください。
berry
きれい〜〜と思わず叫びそうになりました。
なんか吸い寄せられてしまう不思議な作品です。
なぜかな?濃い緑のせい?彼女の悲しそうな表情?
「初めての説教」もいいですね。
左の作品、うまく言えないけど、
壁のくすんだ濃さ?と真っ赤な色に惹き付けられました。
TaekoLovesParis
「説教」は、赤がきいていますね。この他にも服の赤がきれいな絵が
いくつかありました。イギリスのタータンチェックにも、赤がきれいなのがありますよね。
かよりん
観にいきたいと思ってます。
やっぱり「オフィーリア」は美しいですね。
そして、なんといってもお気に入りは、「初めての説教」と「二度目の説教」です!愛らしい~。
匁
連勝おめでとうございます。
谷、小笠原、ラミレス、イー・スンヨブ、高橋由伸、阿部の大砲に遣られました。第一線の勢いですかね?第二戦は完敗でしたね。岡田監督も打つ手なしの状況でした。圧倒されました。
1ゲーム差となった第3戦今日こそ「真珠の虎口」が威力発揮する火(日)
(我田引水ですが)
ますます緊迫して楽しみが増えるか?
これで今シーズンも終わりになるか?
注目しています。
TaekoLovesParis
今日は、休日半日出勤だったけど、昨晩のGiantsが打線爆発で、9連勝とがんばってるから~と、機嫌よく出かけました。帰ってみれば、匁さんからのうれしいメッセージ。(*^_^*)
勝てば首位に並ぶ今晩の試合。う~。
Giantsは勢いづいてるし、追い上げる者は強いというセオリーがあるじゃないですか。まさに虎口状態ですね。でもね、Giants勝ちますから、虎軍は次回ホームグラウンドでの横浜戦でがんばってください。
TaekoLovesParis
かよりんが小さいときも、こんなだったのでは?
TaekoLovesParis
→私のとも、てんちゃんのとも違う絵って、どれだったんだろう?
TaekoLovesParis
bonheur
私は「説教」シリーズが気になります~。ほっぺが赤くてふわふわした女の子、可愛らしくてたまらないですね。
ますます楽しみになってきました!
takumi
とても参考になりました。<初めての説教~二度目の説教>
150年前の子供も・・今の子供も表情は変わらないですね(笑)観るのが楽しみです。
katsura
TaekoLovesParis
TaekoLovesParis
子供の表情は、無心で、今も昔もかわらないですね。
ひとつひとつのことに一生懸命、それがいい表情になるのでしょう。
大人の肖像画もいい表情のがありました。
TaekoLovesParis
見たい絵がたくさんあるんですよ。発電所を再利用したテートモダンの建物も見たいし。。
<少女漫画に似た雰囲気がある>
→うふ、katsuraさんならでは、の(笑)。美少女系の少女漫画ね。
Inatimy
印象に残った絵のひとつ:
シェイクスピアのテンペスト絡みの「Ferdinand lured by Ariel」緑の妖精みたいな顔が並んでて、描かれてる植物が細かいし、お兄さんが履いてる靴の刺繍がスゴイんです。
てんとうむしさんと、いつの日か、図録を見せ合いっこしたいねぇ・・・と話してたんですよ。 Taekoさんも加わって、ワイワイお話できたら、いいなぁ♪
ムーミン
ずいぶんお休みしてしまいましたが、気にかけていただいて
コメント、嬉しかったです^^
ミレイ展の開催、新聞などで読んでましたが・・・。
Taekoさんとてんとうむしさんの記事も読ませてもらいました。
とても詳しくて、分かりやすくてよかったです。
「オフェーリア」、見てみたいですね。本当に美しいです!
aranjues
ミレーとミレイは違うんですね(^_^;)。
でも、「オフィーリア」だけは大学の教養の時の美学で
スライドを見たような気がします。大学時代に西洋美術史の
単位取ったことを今思い出しました。
全然役に立っていません(苦笑)。
TaekoLovesParis
ミレーとミレイはスペルが違うようです。フランスとイギリスだし。
<大学時代に西洋美術史の単位取ったこと>
→いい授業があったんですね~。わかりやすくて役にたちそう。(実際、役にたっている・笑)。私の大学では、「美学」。予想に反し、美術ではなくて、哲学でした。
TaekoLovesParis
<Taekoさんとてんとうむしさんの記事も読ませてもらいました。>
→同じテーマの記事を読むと、多角的に見えてわかりやすいですよね。
TaekoLovesParis
→ミレイの代表作として、私の持っている本に写真が載っている絵なので、あったら気づいたはず。なかったと思います。(目録もらわなかったので。。) Ariel(空気中にすむ妖精)を幻のように透かして表現しているのがおもしろいですよね。本物を私も見たいです。(その時は、靴の
刺繍注目して見ますから)
図録を買わなかった私は、お二人のをのぞきこむ、、あー、買わないから、って、yk2さんに言われそう。
pistacci
よろしくおねがいします~♪
りんこう
終了間近で土曜日ということもありかなり混んでいました。
会場内は「オフィーリア」のあたりまでがものすごい混みよう。
その後はいい具合にばらけていましたが。
私はラファエル前派とかこのあたりの絵画はあまり興味がなかったのです。
ロセッティの描く女性像とかが苦手だったからかもしれません。
でも、この展覧会でミレイ作品が好きになりましたよ。
それにしても、ミレイの子供たちはみな美人だったんですねぇ。
りゅう
しかもスカスカの展示室で自由気ままに好きなだけ♪(^_^)
会期末は入場規制もあったようですね。フェルメール展もそうでしたが、混雑具合・会場の雰囲気等によって作品の印象は変わってしまうので、鑑賞するタイミングってとても重要だな~とあらためて思いました。
TaekoLovesParis
私が初めてりゅうさんのブログにおじゃましたのは、Bunkamuraの「スコットランド美術館展」の記事。そこにもミレイがあって、私はとても気に入って見入りました。で、今、もう一回、りゅうさんの記事の「スコットランド、、」を見たら、あはは、、でしたよ~。
金曜日の夜は、ねらい目ですね。でも、琳派展の最後の金曜の夜は、
すごい混雑。会場で同僚にばったり会うし、駅への道では、2人連れの別の友達に会って、皆同じこと考えてるのね、と思いましたよ。
TaekoLovesParis
<ロセッティの描く女性像とかが苦手>
→ロセッティの絵はちょっと病的なところがありますよね。ロセッティの女の人は顎がとがってる場合が多いです。
この展覧会を見ると、ミレイとロセッティは違うってわかるけれど、私も
見る前は、二人は似ていると思っていました。
りんこうさんが、この時代に生きていたら、ミレイのお嬢さんにプロポーズしたかも?(笑)