国立新美術館の「モディリアーニ展」は、展示数150点、今までにない規模ときいていたが、
pistacciさんの記事で、彼特有の「長い首、アーモンドの瞳」の人物画は、原始美術の影響を
うけていると知り、さっそく出かけた。
plotさんの記事、パルミジャニーノの「長い首の聖母」とモディリアーニの類似点考察も
心に残っていたし、昨年のBunkamuraでの「ジャンヌとの物語」に焦点をあてた
「モディリアーニ展」も記憶に新しい。
モディリアーニ(以下モディとよぶ)は、1884年、イタリアに生まれる。
幼い頃、商人の父親が破産、体も弱かったため、中学校を途中でやめ、絵の学校に
はいる。人物に興味をもち、彫刻家を志す。
1906年、芸術家の多く集まるパリにイタリアから移り住む。
彫刻家ブランクーシに憧れ、紹介してもらう。
ブランクーシの当時のアトリエの再現 パリ・ポンピドーセンターに常設。(2008年3月撮影)
ブランクーシは、アフリカやオセアニア、東南アジアなどの原始美術にヒントを得て、
形態を極限までに単純化した。
右上の細長い金色の「鳥」や、卵型の「眠れるミューズ」(下の写真)が代表作。
モディの描く女の人に似ていませんか?
これはこの美術館の「パリの異邦人展」で展示されていたような。。
モディは体が弱かったため、力仕事の彫刻は断念。絵に方向転換。
原始美術への憧れから、当時の作品は、「カリアティッド」が何枚も何枚も。
カリアティッドとは、ギリシア建築の梁を支える女人柱のこと。
優美だけど、力強く簡素化された形。
紙に青鉛筆で描かれている。 1913年。
そして、「大きな赤い胸像」。大仏を思い浮かべてしまう。
横に並べたのが、初期の肖像画「ライモンド」。
20歳で夭折した詩人、レイモン・ラディゲ。(レイモンはRaymondと書く)
この2枚の絵、形が似ている!
これが、モディの人物画の原点と思えた。
この3年後、1916年「CD夫人」
この時期はまだ背景が暗い色。
次第に背景が明るくなる。
「黒いドレスの女」(左) 「珊瑚の首飾りの女」(右)
「ロジェ・デュティエール」
彼は、展覧会で彼の絵を全部買ってくれた人。モディは愛を持って描いたはず。
やさしい眼差し。スタンドカラーで首が長く見えない。
そして、後に妻となるジャンヌが登場。
3枚ジャンヌの絵が並ぶ。
パンフレットの絵は、この横向きジャンヌ。
横向きの人物画はめづらしい。
当時、風紀違反で、画廊のショーウィンドウからはずされた裸婦
ジャンヌの絵を見ていると、映画「真実の愛」のいろいろなシーンが思いおこされ切ない。
実際のモディ、ハンサムなんですよ~。そしてイタリア人の陽気さ。当然、すごくもてて。。
でも、お酒におぼれ、いつも貧乏。体をこわし35歳で亡くなる。
彼の死の2日後、身重の妻ジャンヌは飛び降り自殺。
展示されている肖像画には、ディエゴ・リベラ、スーチン、キスリング、ローランサン、
画商ズボロフスキーなどがあり、「こういう人だったのね」と、改めて見るのも楽しい。
男の人の肖像画は、どれも衣服の襟で首が目だたなかった。
6月9日まで開催。火曜日が休館。7月からは大阪国際美術館にて開催。
この記事へのコメント
Taddy
とらion
これだけ詳しく紹介していただくと
まだ開催期間もあるので見てみたいです。、
TaekoLovesParis
▲Taddyさん、たしかに初めて見るとびっくりしますよね。長い首に襟ぐりの大きく開いた服で、首の長さをさらに強調していますものね。
今回の展覧会は、彼の全作品400余のうち150点ですから、相当な規模です。個人蔵が多いので集めてくるのが大変だったと思います。
▲とらionさん、映画の中で自己紹介するとき、「モディリアーニです。モディってよんでください」と言っていて、皆から「モディ」って呼ばれてました。
それに入力するのに、モディの方が短くてラクですから。
イタリア人って底抜けに明るい人が多いじゃないですか。あのノリです。
ハンサムで楽しいからすごくもてたんだけど、お酒におぼれちゃうんです。
それで結核で35歳で亡くなってしまう。奥さんのジャンヌは2日後に後を
追って飛び降り自殺。ドラマティックなので映画化されたのです。
私はまだ行ってないけれど、六本木では、ガレ展もやっています。
pistacci
そぅ、そうだった・・と、思い出しながら読みました。ブランクーシって、こういう作品を作る方だったのね。「眠れるミューズ」なでたい衝動に駆られます。
最初に援助してくれたドクター(名前忘れちゃった!)やロジェ。男性にも女性にも、好かれたのでしょうね。
sakikop
予定に入れました!行ってみますね。
ブランクーシの写真は場所はどこなんですか?
すごいスケールですね!見てみたいです。
katsura
彼の作品は好きですね。夭折がこれほど惜しまれた人もいないでしょうね。
TaekoLovesParis
▲pistaさん、よく見たら展覧会のサブタイトルが、「モディリアーニとプリミティズム」なんですね。pistaさんの記事を読まなかったら、こんなに早く行かなかったです。5月の連休にでも、って思ってたので。ありがとう。
最初に援助してくれたのは、医師アレクサンドル。見る目があった人ですね。
▲sakikopさん、ブランクーシのアトリエは、パリのポンピドーセンター、
近代美術館の隣です。書いてないとわからないので、付け加えますね。
すごく明るいので、携帯で撮った写真でも、こんなにはっきり、です。
作品がみっしり詰まっているんですよね。
▲katsuraさん、ラディゲ、肉体の悪魔、、あ、師匠のツボかも、、って思ってました。ラディゲはコクトーに絶賛されていたでしょ。コクトーは、モディとも親しかったから、つながりますね。
いっぷく
ロンドンでは11月にやってましたよ。
高校の教科書だと思うけれどモディリアーニの女性を描いた絵が出ていて、なんで首がこんなに長いんだろう、それなのに何で教科書に載るほどの絵なんだろうと疑問に持った覚えがあります。
首が短いより長いほうが女性はきれいなのかなってこのごろは思いますが。
coco030705
いい展覧会のようですね。
去年でしたか、大阪の大丸で見ましたが、とてもよかったので、
ぜひこれも行こうと思います。
卵型の「眠れるミューズ」、モディの絵に似ていますね。
こういう人に影響を受けてたんですね。よくわかりました。
モディとジャンヌの物語は本当に悲しいですが、絵を見る限りでは
そんな暗さは感じられないと思いました。
yk2
「珊瑚の首飾りの女性」は昨年のBunkamuraでの展覧会にも出品されてましたね。この絵、僕には映画でジャンヌを演じたエルザ・ジルベルスタインにそっくりに思えて、とても印象深かったのでよ~く覚えています。
TaekoLovesParis
▲いっぷくさん、<ロンドンでは11月にやってましたよ。>
→きっと巡回ですね。昨春、オルセー美術館に行ったら、モネの絵の所に
「東京の展覧会に貸し出し中、その後、ソウルに行く」と書いてありました。
「これなら私でも書ける」、と思えるような絵でも、初めて考えるのが大変なんですよね。モディリアーニもカリアティッドの時代を経て、独自のスタイルにたどり着いたんですよね。カリアティッドの時代には、パリの東洋美術のギメ美術館に通い、アフリカやオセアニアの木彫りを見ていたそう。霊感を感じたかったとも言われてます。
首は、白くて長いのがやはり美しいのでは。。
塩野七生は、男の人のうなじに色気を感じると書いていましたが。。
▲Cocoさん、昨年大丸で展覧会があったんですか。東京の大丸は、昨年
改修工事で展覧会がありませんでした。
顔を横に置いて、眠れる、、と題をつけるのも単純化でしょうね。
モディリアーニとジャンヌの物語は、古い黒白映画もあります。
「モンパルナスの灯」というジェラール・フィリップとアヌーク・エーメの映画。
DVDで見たのですが、アヌーク・エーメ(男と女の主演)がすごくきれい
でした。
TaekoLovesParis
▲yk2さん、フィラデルフィア美術館展にあったんですか。気づきませんでした(いつものことながら。。)
ブランクーシの「接吻」は、京橋のブリジストン美術館にあります。私が行ったときは、はいってすぐの所にあったけど。
「珊瑚の、、」がBunkamura、、ってことは、あは、これも覚えてなかったです。親しみを感じたのは、2度目だったからなんですね。
エルザ・ジルベルスタインは映画で、モディと初対面の頃はあまりかわいくないんだけど、だんだん、きれいになってきますね。
miku
ごろんとして。
そういえば、以前勤めてた職場に、「モディリアニの女」って
言われてた女性がいたな。
bonheur
Taekoさんのこの記事が、画集の説明のように充実しててすごい、と思いました。ポンピドゥのアトリエ再現の写真まで・・・
モディリアーニの絵は、どこか寂しい感じを受けます。いろいろ悩んでいたのでしょうか。
TaekoLovesParis
▲mikuさん、眠れるミューズは、、サッカー好きでお茶目なmikuさんだから、ラグビーボールって言うかと思いました。ごろんって(笑)。
モディリアニの女って、首が長い人ですよね、きっと。
▲bonheurさん、ほめてくださってありがとう。ほんと、絵が多いですね。
自分で忘れないように、と思ったのと、私は説明が下手で、長く書けないんです。
私も前は寂しいと思ったのですが、今回、ようやく簡素化することで、こういう絵になったと気づきました。自分の目指すものをつかもうとする悩みは、
あったと思います。
Inatimy
どちらも、細面が多いし。
でも、美人画は、細い目に小さな口、一方こちらは、長い首。
どちらも、何が美しいのか、を強調してて、観点の違いが面白いですね。
てんとうむし
何度か読み返して反芻して納得しました。
モディリアーニの描くアーモンドの瞳の女性は不思議な魅力に満ちていますよね。
ブランクーシに影響を受けていたと知り、納得です。
昨年のフィラデルフィア美術展で何気なくとおりすぎて「ん??」と後戻りしたのが「接吻」でした。
「モディリアーニ展」に行く前に予習できてよかった!
Taekoさんのおかげでじっくり鑑賞できそうです。
pistacci
どこで見たか、覚えてませんが、モディの師匠→ブランクーシ=接吻の作者、繋がりました!すごくうれしいので、コメントしちゃいます♪
ありがとう~!
aranjues
有り難うございます。そのうち名古屋にも来るはずです。
話題が出たら、ちょっとだけ知ったかぶりするかも、、です(笑)
りゅう
Taekoさんはイケメン好きということで。ヾ( ̄ー ̄)ゞ
ブランクーシの部屋素敵ですね♪
当時のピカソもアフリカ原始美術の影響を強く受けていましたよね。
フィラデルフィア美術館展のブランクーシは、ビミョ~に違うかな~て感じで、ブリヂストン美術館のものとよく似たものです。連作というほどではないと思いますが、この作品は他にもいくつかあったと思います。
さて、モディリアーニ展、どうしよっかな~ヾ( ̄ー ̄)ゞ
TaekoLovesParis
▲Inatimyさん、おっしゃるとおり審美眼の違いですね。平安時代の美人と今の美人は違うし。西洋画には筋肉美があるけれど、日本画にはないですね。Inatimyさんは、人物画、風景画、静物画のうち、どれがお好きですか?
▲てんちゃん、ほめてくださってありがとう。
私はフィラデルフィア展の「接吻」、ぜんぜん覚えがないんですよ。きっと、
素通りしちゃったんですね。てんちゃんには作品からテレパシーがあったんですね。千葉の川村記念美術館に金色の「眠れるミューズ」があります。
▲pistaさん、四角い「接吻」、思い出してくださったのね。昨秋、上野の都美術館での「フィラデルフィア美術館展」か、ブリジストン美術館ですよ。
ブランクーシは、ルーマニア人だけどパリに帰化して、亡くなる時作品を全部近代美術館に寄付したの。パリでは誰でも知ってるような有名です。
▲aranjuesさん、そうおっしゃっていただいてうれしいです。
私は写真のアトリエにごろごろしてる白い大きな卵を見たとたん、昔見た映画、ゴジラだかラドンだかの卵を思い出してしまいました(汗)
▲りゅうさん、展覧会のはいってすぐにモディの大きな写真がかけてありました。はい、すてきだな~と思いましたよ。パリのcafe「ラ・ロトンド」でお茶してて、モディリアーニがデッサン売りにきたら、まちがいなく買ってましたね。
<ピカソもアフリカ原始美術の影響を強く受けていましたよね。>
→キュビズムの「アヴィニヨンの娘たち」が原始美術の影響をうけて描かれた作品って言われて」ますね。
そうですね、「接吻」はドイツにもあるし、いくつかバージョンがありますね。私はどこのがどうだか、はっきりわからないのですが。。
<さて、モディリアーニ展、どうしよっかな>
→今は、ヴィーナスであたまがいっぱいのりゅうさんだから(笑)
かよりん
ただいま戻って参りました!
まだ美術展に行く時間はとれないので、Taekoさんの記事で行った気分になれました。
ちょっと私の好みのタッチじゃないけど、ドラマティックな人生を駆け抜けた画家モディリアーニ堪能させて頂きました。
あっ、ちょっと横道にそれてしまいますが、先日、以前Taekoさんが紹介されてて気になってた小田急デパートのレストラン「MACHIAVELLI」でランチしてきました。素敵なお店ですね♪
TaekoLovesParis
アンカー展のほのぼのさはないけれど、そのぶんインパクトがあるのが、
モディリアーニです。でも、、疲れている時向きじゃないかも。。
マキャベリ、気に入っていただけてよかったです。パンの白いホイップバター、おいしかったでしょ?
Nicoli♪
シェリー
絵も見たことあります!
何処だろう・・・教科書かなぁ??
でもそういう人生を送った人だったんですね。
また覚えました!
TaekoLovesParis
TaekoLovesParis
Inatimy
あっという間に、数日が経ってしまいました。
振り返れば、人物画を見ても、着ている服の袖口のレースや、
手にはめている指輪だけに注目してたり、
風景画でも、風景全体ではなく、ごく一部の植物の描き方を観ていたり、
静物画でも、自分の好きな食べ物に目が行ってたり・・・と、
変な見方なので、答えに悩んでしまいました・・・ふふふ♪
TaekoLovesParis
人物画って、私は表情を見ちゃう。こわそう~とか寂しそうとか。
でも、レースに見とれるのはわかります。昔の手工芸品の質の高さは
目を見張るものがありますね。
セザンヌの果物には、あんまり惹かれないでしょ?マネの白いアスパラは
きっとInatimyさんのツボ。
Inatimy
そうそう、マネの白いアスパラにもうっとり♪ ついつい歯ごたえや味を思い出してしまいます。 他にも、ふふ、17世紀のオランダの画家、Adriaen Coorte の描くアスパラがね、リアルで、おぉ~って感じ♪ 国立ミュージアムだったかな。
TaekoLovesParis
→行ったときに買ったRIJKSのカタログが手元にあったので、見ました。
黒の背景のですね。ほんと、リアリズム、質感が出ていて、ゆでて食べたら、、って想像しちゃいますね。