小雪が舞う寒い昨晩、新国立劇場へオペラ「サロメ」を見に行った。
一幕一場なので、7時半に始まり、9時10分に終わる。休憩なし。
紀元前30年頃のエルサレムが舞台。
サロメは、時の王ヘロデの娘、王女である。
しかし、王は実の父ではなく、母の再婚相手。
ヘロデ王は、美しく成長したサロメを寵愛しているが、サロメは王を嫌っている。
月夜の晩、サロメは庭の古井戸から聞こえる男の声に興味を持ち、井戸を開け、
男を連れて来るよう命じる。男は預言者ヨハナーン。サロメは美しい男に一目惚れ。
「こんな白い肌の男は見たことない、こんなに黒い髪、こんなに赤いくちびる」と、
讃え「キスをして」と言うが、ヨハナーンはサロメを無視して、古井戸に戻ってしまう。
腹立たしい気持ちでいるサロメ。
そんな折、王が、「踊れば何でもほうびをつかわす」とサロメに踊りを求める。
サロメは「七つのベールの踊り」を踊る。ベールを順に剥いで最後には裸身になる
官能的な踊り。そして「ヨハナーンの首を褒美に!」と要求した。
王は預言者を殺すと不吉なことが、、と、ためらうものの、サロメの強い申し出を
断れず、兵にヨハナーンを殺すよう命じた。
緊張の数分。兵が銀の盆に首を載せて現れる。
↓ヨハナーンの首を持ち上げ、キスをするサロメ
(オスカー・ワイルドの原作本にビアズリーが描いた挿絵)
ビアズリーは英国の世紀末を代表する画家。黒白のペン画で多くの挿絵作品がある。
ヨハナーンはヘブライ語よみ。聖書では、預言者ヨハネ。
でも、聖書には「サロメ」という名前でなく、「ヘロディアの娘」と書いてあり、
ヘロデ王の妻であるヘロディアが、娘に「ヨハネの首」をもらうよう命じる。
悪女は、母ヘロディアであり、サロメは当惑しながら母の命令をきく従順な娘である。
カラバッジョ、ティツィアーノという古い時代、すなわちオスカー・ワイルド以前の絵では、
首がのった盆を持つサロメの表情に困惑が見てとれる。
(ここはyk2さんのコメントで気づいて後から追加)
ヨハネに恋するオペラの「サロメ」は、19世紀に英国のオスカー・ワイルドが
創作した戯曲なのだ。
当時も、ヨハネの美貌は伝説的だったらしい。
↓この絵は、ダ・ヴィンチの「預言者ヨハネ」。かなりの美青年ですね。
これと「モナリザ」は、ダ・ヴィンチが死ぬまで手元に置いていた作品。
この美青年があまりにも魅力的なので、ダ・ヴィンチの恋人だったのでは、と言われている。
オペラ「サロメ」は、ソプラノがアラビア風のダンスも舞う非常に難しい役。
ナターリア・ウシャコワがこの大役をみごとに果たした。若さがほとばしっていた。
ヨハナーンは、ジョン・ヴェーグナー。
演出:アウグスト・エファーディング
この日の舞台のようすは、「つるりんこ」さんの記事をご参照ください。
この記事へのコメント
aranjues
2時間10分、1幕1場のオペラ、演出も演者もよほど
洗練されていないと疲れそうですね。
coco030705
サロメといえばすぐに思い浮かぶのが、モローの有名な絵です。
でもどういうストーリーなのかはきちんと知りませんでした。
なるほど興味深い話ですね。ビアズリーの絵はきれいですが、
よく見ると少し気味が悪いです。
それにしても、オペラ歌手というのは歌が素晴らしいだけでなく、
役者としてもその役をこなさなければならないのですね。大変なんだなということがよくわかりました。
ダ・ヴィンチの絵、ほんとに美しいです。恋人だったかもというお話は、さもありなんという感じです。
yk2
てっきり聖書がモチーフになっているものとばかり思ってました。
聖ヨハネとサロメと云えば、僕もやっぱり絵の方。パッと作品が頭に浮かぶのは、去年ヴェネツィア展で観たティツィアーノかな。でも、誰が描いてもあんまり好きな題材ではないですね。大抵、必ずそこには生首の乗った銀の皿だもん・・・^^;。
miku
ダヴィンチのヨハネ、目が..!
pace
ヨハネやダヴィンチやはり全てにヘテロな匂いはしないですね
TaekoLovesParis
▲aranjuesさん、<演出も演者もよほど洗練されていないと疲れそうですね>
→そういえば、そうですね。でも「サロメ」は、官能的な踊りがはいるし、
生首は出てくるしで、ドラマティックだから、あんまり飽きないですね。
一幕だから一場だから、遅刻すると、入れずじまいで外でずっとテレビ画面を見るようになるみたいです。
▲Cocoさん、モローの「サロメ」を私は知らなかったので、さっき調べて、見ました(インターネットは便利)。6枚もあるんですね。
「サロメ」の踊りの部分は、昔はダンサーが受け持っていたんだそうですが、違和感が出るので最近では、ソプラノが踊ります。一般にソプラノはふくよかな人が多いから、ダンスをするのは大変ですよね。しかも
一瞬ですが、最後はビキニ姿ですから。日本人で出来る人はいない
でしょうね。
このヨハネは、十字架を持っているのに、誘ってる表情(笑)
▲yk2さん、ヨハネ伝は聖書にあるけれど、そこに「サロメ」という名前はなくて、「ヘロデ王の妻ヘロディアの娘」と書いてあるだけ。
(ちょっと書き方が悪いからなおしておきますね)
私もティツィアーノのその絵覚えてます。赤い衣装の、、でも、思わず
顔をそむけてしまう絵でした。ティツィアーノの時代に、もう、サロメの話は有名だったんですね。
▲好くん、このほほえみの口元は「モナリザ」に似ていますね。
オペラはきっとそのうち好くん、好きになりますよ。
▲mikuさん、この目、誘ってる目つきですよね。
バニラ
サロメって知ってるつもりいたけど、Taekoさんの解説であらためて、すごく面白そう~!って思いました。
Inatimy
シェリー
(ワインは覚えてないんですが。。。汗)
『これはサロメだー』みたいな(笑)説明してたのを
ミョーに覚えてて思い出しました。
そんなワインあまり飲んでみたい気にならないなぁ。。。
と思った気がします(笑)
ワインはともかく、オペラは迫力ありそで観てみたいです♪
つるりんこ
同じ日に観てましたね、
詳しい解説ありがとうございました。
TaekoLovesParis
つるりんこさんは、ちゃんと専門的な視点で書いていらっしゃるから、
そちらにリンクをつけさせてくださいね。
2002年のを見に行った友達が、ヨハネが日本人で太っていたので、
雰囲気でなかったと言っていましたが、今回のヨハネ役はなかなか
ハンサムでしたね。
ウシャコワは最後の舞台挨拶のとき、両手で皆を引っ張って前に出して、元気よくって、かわいかったですね。
また機会があったら見たい演目でした。
TaekoLovesParis
1巻でしょ。「サロメだー」で、血のにおいがする官能って、、ぞっとしますよね。そういえばジョニー・ディップの「スゥイニートッド」見ましたか?
TaekoLovesParis
かなり大げさに描いているから、まんがっぽいですよね。
原画には、"J'ai baise ta bouche Jokanaan"(おまえの口にキスをしたわよ、ヨハナーン)って、せりふがはいってるから、まさにマンガですね。
TaekoLovesParis
なかったけど、この記事を書いたので、ようやくわかりました。
声に惹かれ、姿形に惹かれ、でも相手は神の言葉にしか興味がなくて
、どんなお世辞にものってこない。美しいサロメが自尊心を傷つけられ、
不機嫌になるのもわかりますよね。
匁
どんな感じになるか描いてみたいですね。
写真からもキレイな画面で
ただ、オボンの首はごめんです。
ムーミン
詳しく書いてくれているので、とてもよく分かりました。
実際に見たら、迫力でしょうね。
noriko
この本の中のサロメは妖艶な悪女ではなく、理知的な王女が国を救うためにヨハネの首を所望する、というかたちで王に処刑をうながしたという筋書きになっています。
興味深い解釈ですが、オペラには官能的な悪女のほうがサマになりますね(笑)
TaekoLovesParis
だぶってきました(笑)。てんびん座さんは時々透ける衣装だから、
サロメの踊りの衣装に通じるところがあります。そういえば野球選手
じゃない男の人は登場しませんでしたね。美形の男の子が今年は
お目見えするのでしょうか?
TaekoLovesParis
官能的な踊りは、おじさま好みかと思ったのですが、違いました。
TaekoLovesParis
(もしや、、知らなかったのは私だけ? 苦笑)
塩野七生にそういう本があるんですか。おもしろそうですね。
塩野さんが題材に取り上げるのだから、きっと歴史的な裏づけが
あるんでしょうね。
そう、オペラはドラマティックじゃないと、ね!
TaekoLovesParis
Krauseさん、mikosukeさん、きぃ*さん、tommy-miyabiさん、
takagakiさん、winoさん、ぶんじんさん、寡蓮さん、
niceをありがとうございました!
TaekoLovesParis
一番遅くなりました。背徳の香り、、時々あこがれます。
美少年の絵はすごく魅かれます♪
りゅう
私もサロメというとギュスターヴ・モローが真っ先に・・・
オルセー美術館やモロー美術館の《出現》、国立西洋美術館の《牢獄のサロメ》の印象がとても強いです♪(^_^)/
nicolas
オスカーワイルドのサロメ、私はこっちが代表的な話でした。
でも、考えてみたら創作って創作であって、個人的な見解も多分に
加味されちゃうんですよね。
ダヴィンチのその話、知りませんでした。
天才の人間くさい(?)面がまた浮き彫りになっちゃったなぁー
TaekoLovesParis
わかりました。ブログは勉強になります。
この美少年は十字架を持って、指は天を指しているのに、目がこっちを、世俗を向いていますよね。
TaekoLovesParis
パリの自宅跡のモロー美術館も行ったけれど、あまりにもたくさん絵が
あって、どれも聖書に題材をとったものだから、見たのかもしれないけど、「出現」に印象がないのです。。でも、今はおかげさまで覚えました。
TaekoLovesParis
していただけるし。
Zunko
TaekoLovesParis
アメリカ在のZunkoさんだから、中指たててる?って気になっちゃいますね。高校生でサロメ、早熟でしたね~。違う?宗教的な劇だった?