お正月休み、オルセー美術館で開催されていた「モーリス・ドニ展」に、行きました。
これが、ポスターやカタログの表紙に使われていた絵、「緑の木々」。
普通、木の幹は茶色、それを緑にしているのが、ドニ風。見たままよりも心に映ったように描く
のです。だから象徴主義とも呼ばれます。雲間の青空も緑の木を明るく立体的に見せていますね。
私の以前の記事で、「モーリス・ドニ」を紹介しています。
http://blog.so-net.ne.jp/taekoParis/2006-12-18
展覧会場はかなり広く、絵の年代順の展示でした。
1、ナビ派の時代
ナビとは、ヘブライ語で預言者の意味。印象派の後、ゴーギャンの影響で、ナビ派は結成され
ました。ドニは、家族や身近な風景をアールヌーボー風に描いています。
↑「ミューズたち」
色の使い方が上手です。抑えたトーン、茶系で構成する深い色使い。草むらや衣装での
アラベスク模様がミューズたちという詩的な主題を際立たせ、ゆったりとした動きが
伝わってくるようです。
絵画とは「ある秩序のもとに集められた色彩で覆われた平らな面である」、ドニの主張です。
2、古典主義
イタリアに旅したドニは、アンドレ・ジイドに出会い刺激を受けます。
イタリアではラファエロやニコラ・プッサンの古典に触れ、宗教的なものに
絵の主題が移行していきます。
従来の宗教画とは異なり、ドニのは美しい透き通るような絵やメルヘンふうの絵です。
3、「セザンヌ礼賛」
一見してすぐセザンヌとわかるりんごの絵が中央にあります。
絵を中心に集まっているのは、左から順に、ルドン、ヴュイヤール、メルリオ、画商ヴォラール、
ドニ、セリジュ、ランソン、ラッセル、ボナール、ドニ婦人(画商ヴォラールのアトリエにて)
このセザンヌの静物画は、ゴーギャンが所蔵していたもの。ゴーギャンも「ある婦人の
肖像画」を描く時に、やはりこのセザンヌの絵を書き込んだそうです。
もう亡くなっていたけれど、セザンヌが尊敬されていたことがよくわかりますね。
そしてこの絵で、皆の視線が、ルドンに集まっていることから、この中ではルドンが一目おかれていたようです。
4、壁画
狩猟の神様「聖ユベールの伝説」が主題。昔の狩の様子が順を追って描かれています。
出発の儀式、森へ向かって進み、獲物を見つけ、ラッパで知らせる。
走って、走って、走って、狩猟です。
最後の部屋は、やはり神話に題材をとった「プシケの物語」(右の写真)。圧巻でした。
![](https://taekoparis.up.seesaa.net/_commonjssmiley/hearts.gif)
ドニの豊かな色彩のメルヘンの世界に満たされて帰りました。
<補足1>
昨年、友達の職場に、ドニ美術館の人が来て、「日本人にもっと来館してほしいので、宣伝
してください」との申し出があったそうです。「あ~サンジェルマン・アンレイの美術館ですね。
年末に行ったんですよ。どこにも休館と書いてないのに閉まっていて」と友達が不満を述べると
「クリスマスは休みです。」と、きっぱり。日本でお正月が休みなのと同じですね。
友達が「あなたにつきあって行ったから、サンジェルマン・アン・レイの、って調子よく返事できてよかったわ。」
たまには役にたつことも。。。
<補足2>
Inatimyさんが、ドニ美術館にいらした記事にも、ここにある絵が紹介されています。
この記事へのコメント
バニラ
ドニの色使い、いいですよねぇ。光の感じも柔らかくて優しくて
観ていて穏やかな心持ちになります。
ここに揚げられた作品はどれも好きですけど
やはり「プシケの物語」が一番心惹かれました。
pistacci
『緑の~』は、彼の後期の絵なのですか?
あ”~~これは、上野にいかなくっちゃ!
TaekoLovesParis
▲バニラさんへ
NHKの番組でドニをやっていたのですか。見損ねてます(涙)
この展覧会には、この前のブログで、バニラさんに気に入っていただいた
「妻と食事をする自画像」もありましたよ。
「プシケの物語」はストーリーに沿って繰り広げられ、10枚以上の絵で
構成されていました。ストーリーを読みながら、こういう場面なのね、と
納得しながら絵を見たので、プシケ部屋の滞在時間は長かったです。
▲pistacciさんへ
「緑の~」、いいですよね。清々しくて。
これは、前期、ナビ派の時代です。下の「ミューズたち」と同じ1893年。
<あ”~~これは、上野にいかなくっちゃ!>
→うふ、、これね、パリのオルセーでの展覧会なの。
匁
オルセー美術館 前回は初めて行ったので ドキ ドキ してよく観えなかったのですが、今回は二日目なので落ち着いて鑑賞することができました。
モーリス・ドニのナビ派、古典主義はよく理解できませんが、壁画の狩の絵はなんとなくわかりそうな気がします。《ぐるりと絵に囲まれるので》って楽しい雰囲気で落ち着いて見れそうですね。
と言うことは壁画ですから、ここは常設展になっているんですか?。
それにしても《友達の職場に、ドニ美術館の人が来て》ってすごいですよね。こちらは保険の勧誘くらいしか来ませんよ?!
TaekoLovesParis
壁画といっても、古代のではないから、はずして移動できるんでしょうね。
それぞれの壁画鑑賞用の部屋を作ってありました。プシケの部屋は長方形
でしたが、狩の部屋は円形。特に狩はラッパの音が聞こえてきそうでした。
部屋には誰もいなかったので、感情移入できました。
これは企画展なので、1ヶ月くらいだけの開催。
<こちらは保険の勧誘くらいしか来ませんよ?!>
→これには大笑い。
オルセーやルーブルなどパリの美術館は、大勢日本人が行くけど、
ドニは日本での知名度が低くて、美術館はパリ郊外だから、来館客が
少ないらしいです。
miku
教えていただいて良かった!
「緑の木々」、緑の幹が、動き出しそう。
雲間の青空もいいですねー。
「ミューズたち」も好きです。
yk2
「セザンヌ礼賛」はファンタン=ラトゥールの「バティニョールのアトリエ」が下敷きって感じしません?。あっちはマネ礼賛(?)って絵ですが。
TaekoLovesParis
雛鳥
ドニの作品の持つ、不思議な魅力を堪能できました。
色彩や描き方は柔らかめなのに、どことなくリアリティがあるというか…、
上手い表現が見つからないのですが、とても独自性が強いと思いました。
ナビ派についても不勉強です…今年のテーマとなりそうです…。
ドニの女性が座っている絵を見ますと(ご紹介の中では「ミューズたち」)、
何故か夢二の「黒船屋」を思い出します…。
構図が似ているからでしょうが…(←単純…)。
TaekoLovesParis
アルベール・ベナールのフィリップくんにも会えませんでした(涙)
現場まで行って、度忘れするといけないから、ちゃんとメモ帳持って行ったんですけどね。。廊下に立っている人は学芸員でなくて警備員なんですって。きいたら、絵のことはわからないから、図書室で調べるようにと言われちゃった。同じメモ帳持って、今度は入り口の受付で「この絵が見たいけど
今、展示してありますか」ってきいてみますね。
フィリップくんの顔はyk2さんに紹介してもらってわかってるけど、メルリオ家の人たち、面割れしてないから、興味しんしん。プロフのアイコンがそう?
ファンタン・ラトゥールの、それ、知りませんでした。でもドニ展での解説
によると、その時代、「○○礼賛」と、自分の絵の中に、巨匠○○の絵
を取り込むのがはやったそうです。ゴーギャン作品にもセザンヌの絵を
とりこんだ「ある婦人の肖像」があるそうです。
マネ礼賛、どこかで見れるといいな。
TaekoLovesParis
今のオルセー美術館の館長さんが、就任した時の挨拶で、「オルセーは
印象派に偏りすぎているから、ナビ派などにも光を当てたい。個人的に
好きな画家は、ピュイス・シャバンヌ」と言ったそうで、その後すぐ、オルセーのチケットの絵が、シャバンヌになっていました。
TaekoLovesParis
書き忘れてました。
「セザンヌ礼賛」の説明を書くために、展覧会の冊子を見ながら、左から、
順に名前を書いていったとき、Mellerioの名前に気づいて、「お~!」
仲良しだったからモデルにして、”La Famille Mellerio”ね、と推測したのですが、そうですか? 「セザンヌ礼賛」でシルクハットの人Mr.Mellerioは、”La Famille Mellerio”の絵に登場しますか?
いっぷく
ゴーギャンは印象派の作品のコレクターだったそうでピサロの紹介でセザンヌと知り合ったとのこと、このセザンヌの絵を特別大事にしたようです。
モーリス・ドニはあまり知らなかったですが素敵な絵を残していますね、
豊かな色彩のメルヘンの世界という形容がぴったりですね。
TaekoLovesParis
です。作家と画家、創作への携わり方の違う2人がお互いに友の契りを
交わすことで、刺激しあったんでしょうね。
<ゴーギャンは印象派の作品のコレクターだったそうで>
→これは意外でした。自分の画風とは違うものに惹かれるのでしょうか。
いつもいっぷくさんには、いろいろ教えていただいて、うれしいです。
yk2
「メルリオ家の人々」の絵は行く前にご覧になりたいでしょうから、なんとかしてみますね。ちなみに僕のプロフィールの絵は上の絵でルドンとメルリオに挟まれてるヴュイヤールでーす。
それとね、ラトゥールの「バティニョールのアトリエ」は今、上野に来てるハズですよ(^^。
TaekoLovesParis
noriko
会社から見ようかしら。。。。
>、「○○礼賛」と、自分の絵の中に、巨匠○○の絵
を取り込むのがはやったそうです。
↑上野では、『芸術家の生活』というテーマで11点ありました♪
「すみれのブーケをつけたベルト・モリゾ」の展示室です(^^)
berry
「モーリス・ドニ」初めて聞く名前です。
「緑の木々」は何とも不思議な絵ですね。何か気になる . . .
第一印象は、色がきれい〜!
「心に映ったように描く」ことの意味をわかりやすく伝えているような、そんな暖かい絵です。
狩の絵の壁画も色がきれいですね。
TaekoLovesParis
まだオルセー展行ってないので、メモ。
TaekoLovesParis
でも、すっかり、その世界に魅せられています。
TaekoLovesParis
trestelle
予習をして本番に備えようと思っております。
興味を持ちました。
ちょっと勉強してみます!
独特な色や視点、面白いですね。
aia
各部屋ごとに、代表的な作品を紹介してあってスバラシイ!
こんな絵もあったよな~と懐かしく思い出しました(カタログは、一時帰国したときに、母にプレゼントしてしまいました)。
サンジェルマン=アン・レーの美術館にも行ってみたいと思いました。日本人にはこういう画風は受け入れやすいと思うんですけどね。なんであまり有名じゃないんでしょう?不思議です。
りんこう
ドニは「1.ナビ派の時代」の作品の印象が強いですが、
それだけではないのですね。勉強になります。
yk2さんが仰ったように、「セザンヌ礼賛」はF=ラトゥールを想い起こしました。
かよりん
「ミューズたち」を始め、古典主義のところで見せて頂いたメルヘンチックな作品が好きです。
ますます本場パリでの美術館巡りしたくなっちゃいます!
りゅう
モーリス・ドニ《天国》は見応えありましたよ。ちょっと小さめですが。
優しい色彩の柔らかい作品です。(^_^)/
この素晴らしい作品をよく日本に貸し出してくれたよな~という感じです!
しかも、モーリス・ドニ展開催中にもかかわらず。。。v(≧∇≦)v イェェ~イ♪
シェリー
モーリス・ドニさん。以前のTaekoさんの記事で始めて知りましたが
Taekoさんの『白の静けさ』という表現がとても印象的で覚えてました!
今回の他の絵もどことなく白が印象的に感じますね。
「見たままよりも心に映ったように描く」ってそういうのも素敵ですね。
nicolas
モーリス・ドニ・・・計算された感じの構図ですねー
あんまりよく存じ上げないかたでしたが、知的な配色に惹かれます。。。
でも、Taekoさんの絵の見方は繊細で愛情溢れていますね。
あまりよく知らなくても、一気にその中に入れるような温かさがいつも
感じられますねースゴイ素敵な事です♡
TaekoLovesParis
▲trestelleさんへ
パリにお出かけになる前に、ブログをつくって、調べたことを書いておくのは
いい方法ですね。私はいつも予習不十分で、しまった!の連続なので。
あと3週間後、楽しみですね。
▲TAROさんへ
ドニは特徴があるので、覚えやすいですね。
覚えてもらえてうれしいです。
▲aiaさんへ
知られるようになるには、やはり広告が必要ですね。それと、サンジェルマン・アンレイがパリ市内からちょっと遠くて不便というのもありますね。
時間の限られている旅だと、きついかもしれません。
「緑の木々」を飾っていらしたお母様にカタログをプレゼント、とても喜ばれ
たことでしょう。
▲りんこうさんへ
オルセー展に、「セザンヌ礼賛」に似た絵があるそうなので、今度行く時、
チェックしてみますね。
coco030705
素晴らしい絵ですね。この色使いが好きです。モーリス・ドニの絵は、
なにかの美術展で2,3点見たことがあります。それと、Taekoさんのブログで、「白の静けさ」が美しい絵がありましたね。今回載せていらっしゃる絵のなかでは、古典主義の絵が好きです。こうしてご紹介いただくと、パリに行かなくても展覧会が楽しめるので、嬉しく思います。
ドニ展が日本で開催されるといいなと思います。
katsura
見るなと言うのに、なぜ見た!って古今東西あるものですね。
ドニは上野の西洋美術館の常設コーナーに行くと、会えますよ。